IT企業のAPMツール導入で起こりうる懸念
IT企業では、使用する言語やフレームワークが多様で、APMツールが対応していないと十分に機能しない場合があります。確認したい点を見ていきます。
対応言語とバージョンの確認
APMツールは、対応する言語やバージョンが製品ごとに決まっています。使用しているバージョンが対象外だと、計測が一部しかできなかったり、エージェントが動作しなかったりする場合があります。
導入前に、公式の対応一覧と自社の開発環境を照らし合わせましょう。対応状況は更新されることがあるため、最新の情報を確認してください。バージョンアップの予定がある場合は、更新後の対応状況も確認が必要です。
独自のフレームワークや新しい技術への対応
自社で開発した独自のフレームワークや、登場して間もない技術を使っている場合は、標準の計測機能で処理を追えないことがあります。その場合は、計測のためのコードを追加する対応が必要になる可能性があります。
追加の開発にかかる工数や期間も、導入の判断材料に含めてください。追加の対応が難しい場合は、ベンダーの技術支援を受けられるかどうかも相談してみましょう。
対応外だった場合の代替手段
一部のシステムが対応外であっても、OpenTelemetryのような共通規格を使って計測データを送れる場合があります。製品がこうした規格を受け取れるかは、確認しておきたい点です。
対応外の部分は別の監視手段で補うなど、全体の監視方針を整理しておくと運用が安定します。担当する範囲を明確にしておくと、障害時の切り分けも進めやすくなります。
EC事業者がAPMツール導入で失敗しないための確認
ECサイトは、セールなどで急にアクセスが集中するため、性能の問題が売上に影響しやすい業種です。導入時につまずきやすい点を整理します。
アクセス集中時の負荷と計測の影響
計測の仕組みをアプリケーションに組み込むと、処理にわずかな負荷がかかる場合があります。アクセスが集中する時期に負荷が重なると、サイトの応答に影響する可能性があります。
事前に負荷試験を行い、計測の有無による差を確認しておくと安心です。収集するデータを絞る設定の有無も、あわせて確認しましょう。
決済や外部サービス連携の監視範囲
ECサイトでは、決済や在庫管理、配送など、外部のサービスとの連携が多く発生します。外部サービスの遅延が購入手続きの停滞につながる場合もあるため、呼び出しの所要時間を追跡できるかが重要です。
外部サービス側の処理は、自社のツールでは見えない範囲もあります。見える範囲と見えない範囲を整理しておきましょう。見えない部分は、委託先への問い合わせ手順を決めておくと安心です。
繁忙期前の導入計画と検証
繁忙期の直前に導入すると、設定の調整や運用の習熟が間に合わないおそれがあります。余裕をもって導入し、通常時のデータを蓄積しておくと、繁忙期の異常に気づきやすくなります。
アラートの基準も、繁忙期前に見直しておくとよいでしょう。通常時と繁忙期では、応答時間の基準が異なる場合があるためです。
金融業でAPMツールを運用する際の懸念点
金融業では、システムの安定性に加えて、情報管理や規制への対応が求められます。運用でトラブルを避けるための確認点を紹介します。
取引データなど機密情報の取り扱い
APMツールは、リクエストの内容やエラーの詳細を収集します。そのため、口座情報や個人情報が計測データに含まれてしまうと、情報管理上の問題になる可能性があります。
特定の項目を収集の対象から除外したり、マスキングしたりできるかを確認しましょう。データの保管場所についても、社内の規程と照らして整理が必要です。
監査や規制への対応記録
障害の記録や設定変更の履歴は、監査への対応で求められる場合があります。ログを一定期間保存できるか、改ざんを防ぐ仕組みがあるかなど、社内の規程で必要な要件を先に洗い出しておきましょう。
要件の解釈は、コンプライアンス部門や監査部門と相談して進めてください。自社だけで判断せず、専門部署に確認する姿勢が大切です。
本番環境への影響と変更管理
金融系のシステムでは、本番環境への変更に厳格な手続きが定められている場合が多くあります。エージェントの導入や更新が、その手続きの対象になるかを確認しておく必要があります。
導入の手順や更新の頻度を、変更管理の担当者と共有しておくと、運用開始後のトラブルを防ぎやすくなります。
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APMツールの大規模環境で起こるデータ収集の不具合
通信事業者のように大規模なシステムでは、収集するデータの量が膨大です。どのような不具合が起こりうるかと、事前の確認点を紹介します。
データ量の増加による収集の遅れや欠損
収集するデータが増えると、収集基盤の処理が追いつかず、表示が遅れたり、一部のデータが欠けたりする可能性があります。原因は、APMツール側の処理能力だけでなく、ネットワークや送信元の設定にある場合もあります。
想定するデータ量で負荷試験を行い、収集の状況を確認しておくと安心です。不具合が見つかった場合は、製品側と環境側の両方を切り分けて調べることが大切です。
サンプリング設定と精度のバランス
サンプリングとは、収集するデータを一定の割合に絞る仕組みです。データ量を抑えられる一方で、発生頻度の低い異常が記録に残らない場合があります。
割合の設定を変更できるか、重要な処理は全件を記録できるかなどを確認してください。運用しながら設定を調整できると、費用と精度の釣り合いをとりやすくなります。
基盤の拡張性と費用の見通し
システムの拡大にあわせて収集基盤を増強できるかは、大規模な環境での重要な確認事項です。クラウド型の場合は、データ量の増加に伴って費用がどう変わるかも見通しておく必要があります。
契約の上限や超過時の扱いは、見積もりの段階で確認しましょう。拡張の際に再契約が必要かどうかも、確認しておきたい項目です。
業種を問わず行いたいAPMツール導入前の確認手順
どの業種でも、事前の検証と導入後の見直しが、懸念を減らす基本の流れです。共通して行いたい手順を紹介します。
検証環境での事前テスト
本番環境に導入する前に、検証環境で計測が正しく動くか、負荷に影響が出ないかを確認します。実際の業務に近い操作を行い、収集されるデータの内容も見ておきましょう。
テストの結果は記録し、ベンダーへの質問や社内承認の材料にしてください。記録があれば、本番導入後に問題が起きた際の比較にも使えます。
導入後の見直しと改善
導入後は、アラートの精度や運用の負担を定期的に見直します。業種の特性に応じて、繁忙期や制度改正の時期など、注意が必要なタイミングを把握しておくことも大切です。
見直しの結果は運用の手順書に反映し、担当者が替わっても引き継げる形にしておきましょう。定期的な見直しの時期を、カレンダーに設定しておくと形骸化を防げます。
業種ごとの懸念に備えるAPMツール
業種特有の事情を踏まえて検討しやすい製品を紹介します。
New Relic
- 全てのスタックをOneプラットフォームで統合監視可能
- システム全体を把握し問題の予兆検知や早期発見・早期対応が可能
- クラウドネイティブ対応で、スケールに応じた柔軟な監視が可能
ベニックソリューション株式会社が提供する「川崎重工IT子会社が手掛けるオブザーバビリティソリューション「NewRelic」」は、複雑化するシステムのエラーに早く対処するための、オブザーバビリティソリューションです。リアルタイムにデータを取得し、問題の予兆検知や改善につなげます。タグ設定でサービスや環境ごとにデータを整理でき、アラートトリガー設定で通知条件も決められます。業種ごとに監視したい範囲が異なる場合でも、導入前に機能を照らし合わせる材料になります。
CAApplicationPerformanceManagement (Broadcom Inc.)
- Webアプリの性能をリアル/擬似ユーザ監視で可視化。
- 自動検出と追跡でボトルネックを特定
- トポロジーマップと自動ベースラインで異常を早期把握。
JENNIFER (株式会社ジェニファーソフト)
- 状況を常に監視し、即座に把握すること。
- 誰でも容易に障害原因を特定可能
- 多角的な分析により、課題の抽出と再構築を行う。
Splunk® Application Performance Monitoring (Splunk Services Japan合同会社)
- AIドリブンのインサイトで問題のあるサービスを特定
- アプリやインフラ、ログを関連付けて原因分析を支援
- OpenTelemetryネイティブで柔軟なデータ収集に対応
Dynatrace (Dynatrace合同会社)
- アプリからインフラまで自動トポロジーマップで可視化。
- AI分析で原因特定・影響範囲を分析し、MTTRを削減。
- クラウドネイティブ/Kubernetes対応。
APMツールに関するよくある質問
APMツールの業種別の懸念点について、導入前によく寄せられる疑問をまとめました。確認の際の参考にしてください。
- ■Q1:自社の言語やフレームワークがAPMツールに対応していない場合はどうすればよいですか?
- A:共通規格を使った計測データの送信に対応できるかを確認します。対応外の部分は別の監視手段で補う方法もあるため、全体の監視方針をあわせて整理しましょう。
- ■Q2:ECサイトでAPMツールを導入するときの注意点は何ですか?
- A:アクセス集中時の負荷への影響と、決済などの外部サービスを含めた監視範囲を確認します。繁忙期の前に余裕をもって導入し、検証しておくことが大切です。
- ■Q3:金融業で機密情報の収集を避けるにはどうすればよいですか?
- A:特定の項目を収集の対象から除外する設定や、マスキングの機能があるかを確認します。社内の規程やコンプライアンス部門の意見も踏まえて判断してください。
- ■Q4:大規模なシステムでデータ収集に不具合が出ないか、どう確認すればよいですか?
- A:想定するデータ量で負荷試験を行い、表示の遅れや欠損が起きないかを確かめます。サンプリング設定や基盤の拡張性もあわせて確認しましょう。
まとめ
APMツール導入の懸念点は業種ごとに異なります。IT企業は言語への対応、EC事業者は負荷と繁忙期、金融業は機密情報の扱い、通信事業者はデータ収集の規模が主な論点です。検証環境での事前テストを行い、業種の特性に応じた項目を確認しましょう。複数製品を比較したい場合は、資料請求を活用してみてください。

