原因不明の遅延をAPMツールで突き止める
画面の表示や処理が遅い原因は、アプリケーション、データベース、外部サービスなど複数の要因が絡む場合があります。APMツールでどう原因に近づくかを整理します。
処理ごとの応答時間の可視化
APMツールには、リクエストが処理される流れを、段階ごとの所要時間として表示できる製品があります。どの処理で時間がかかっているかを数値で見られるため、感覚ではなく根拠をもとに調査を始められます。
ただし、表示できる粒度は製品や対応言語によって異なります。自社で使う言語やフレームワークに対応しているかを、先に確認してください。対応外の場合は、収集できる情報が限られることがあります。
遅い処理を特定するトレースの活用
トレースとは、一つのリクエストが通った処理の経路を追跡する仕組みです。遅いSQLや外部サービスへの問い合わせなど、時間のかかる箇所を絞り込むのに役立つ場合があります。
原因はアプリケーション側だけとは限らず、インフラやネットワークの状態が影響することもあります。他の監視情報とあわせて確認できると、見落としを減らせます。調査の際は、アプリケーションだけに絞らず、周辺の状態にも目を向けましょう。
ログの個別確認だけに頼る運用の限界
サーバーごとにログを開いて確認する運用は、台数やサービスが増えると手間が大きくなります。複数のログを時刻で照らし合わせる作業は、担当者の経験に左右されやすい面もあります。
APMツールを使えば、ログと性能データを同じ画面で見られる場合があります。ログの確認が不要になるわけではないため、併用を前提として、それぞれの役割を整理しましょう。
障害の原因特定と切り分けの工数を減らす
障害が起きたときに、どこから調べるかで調査時間は変わります。APMツールを使った切り分けの考え方を紹介します。
アラートと関連情報の一元化
エラーの発生や応答時間の悪化をアラートで知らせる機能があれば、利用者からの連絡を待たずに調査に着手できる場合があります。通知から該当の処理やエラー内容へ画面を移動できると、調査の初動が早まります。
通知が多すぎると重要な連絡を見逃すおそれがあるため、条件の調整ができるかも確認しましょう。しきい値や通知の優先度を、自社の運用にあわせて変更できると便利です。
障害調査の手順の標準化
調査の手順が人によって違うと、切り分けに時間がかかる原因といえます。確認する順番や見る画面を手順書にまとめ、ツールの画面と対応づけておくと、誰でも同じ流れで調べられます。
手順は一度作って終わりではなく、障害のたびに見直すことが大切です。実際の対応で気づいた点を反映し、改善を続けましょう。見直しの担当者と時期も、あらかじめ決めておくと形骸化を防げます。
過去の障害との比較による判断
過去の性能データを保存できるツールなら、発生時と平常時を比べて異常の度合いを判断できます。以前に同じ症状があったかを確認できれば、原因の見当もつけやすくなります。
データの保存期間は製品やプランで異なります。必要な期間を満たせるか、見積もりの段階で確認してください。障害の再発傾向を調べたい場合は、数か月分の保存が必要になることもあります。
APMツールで進める調査業務の属人化の解消
性能監視や障害調査が特定の担当者に集中すると、不在時に対応が滞るおそれがあります。ツールと運用の両面から、属人化を減らす方法を見ていきます。
調査の過程を画面で共有する
経験豊富な担当者が持つ調査の勘所を、画面上のグラフやトレースとして共有できると、他のメンバーも同じ情報を見て判断できます。画面のリンクを共有できる機能があれば、相談もしやすくなります。
チャットツールと連携して、アラートから画面へ直接移動できる製品もあります。連携の可否は、事前に確認しておきましょう。普段使っているチャットツールに対応しているかが目安です。
障害対応の記録を蓄積する
障害の原因と対処を記録として残し、検索できる状態にしておくと、次回以降の調査が楽です。ツール内にメモを残せる機能や、外部の管理表との連携方法も検討材料です。
記録の書式をそろえておくと、担当者が替わっても引き継ぎがスムーズです。発生日時、症状、原因、対処、再発防止策といった基本項目を決めておくとよいでしょう。
通知先を分散して負担を平準化する
アラートを1人が受け続けると、負担が偏り、疲弊や見落としにつながるおそれがあります。当番制にしたり、時間帯ごとに通知先を変えたりできるかも、確認しておきたい機能です。
代替の担当者を決めておくことで、特定の人に依存しない体制に近づけます。休暇や異動の際にも、通知の設定を見直せば対応が途切れにくくなります。
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紙の障害報告書をAPMツールとあわせて電子化する
紙の障害報告書は、記入や保管、検索に手間がかかります。APMツールのデータを活用しながら、報告書を電子化する進め方を紹介します。
紙の報告書で起こりやすい課題
手書きの報告書は、記入に時間がかかるうえ、過去の事例を探しにくい傾向があります。発生時刻や影響範囲を記憶や口頭の情報から書き起こすと、記載内容にばらつきが出る場合があります。
保管場所が分散していると、必要なときに確認できない可能性もあります。電子化により、検索や共有が容易です。
性能データを根拠にした電子報告書
APMツールには、障害発生時の応答時間やエラー件数をグラフとして出力できる製品があります。これらを報告書へ貼り付ければ、事実にもとづく記録を短時間でまとめられます。
報告書そのものを作る機能は、APMツールにない場合も多いため、既存の文書管理や申請の仕組みと組み合わせる運用を検討しましょう。データの出力形式がCSVや画像に対応しているかも、確認しておくと安心です。
性能監視は内製か外部委託か
性能監視や障害調査を自社で行うか、外部に任せるかは、人員や求める対応時間によって判断が分かれます。それぞれの特徴を整理します。
内製で運用する場合の条件
自社のシステムに詳しい担当者がいて、障害時にすぐ動ける体制を組めるなら、内製は有力な選択肢です。社内に知見が蓄積し、改善のスピードも保ちやすくなります。
一方で、夜間や休日の対応をどう担うかが課題です。担当者の負担が偏らないか、人員計画とあわせて検討しましょう。運用の知見を社内に残すため、手順書の整備も並行して進めてください。
外部委託を検討したい場面
専任の担当者を置けない場合や、24時間の監視が求められる場合は、運用を外部に委託する方法があります。ベンダーによっては、監視の設定や定期レポートの作成を請け負うサービスもあります。
委託する範囲や対応時間、費用は提供会社ごとに異なります。契約前に、どこまで任せられるかを具体的に確認してください。自社の担当者が行う作業と、委託先が担う作業の境目を明確にしておくことが大切です。
障害調査の工数を減らすAPMツール
原因の切り分けと調査の効率化に役立つ製品を紹介します。
New Relic
- 全てのスタックをOneプラットフォームで統合監視可能
- システム全体を把握し問題の予兆検知や早期発見・早期対応が可能
- クラウドネイティブ対応で、スケールに応じた柔軟な監視が可能
ベニックソリューション株式会社が提供する「川崎重工IT子会社が手掛けるオブザーバビリティソリューション「NewRelic」」は、全てのスタックをOneプラットフォームで統合して監視できるオブザーバビリティソリューションです。サービスマップでシステム間の依存関係を視覚的に把握でき、どこで遅延やエラーが起きているかを絞り込む手がかりになります。アラートトリガーを設定すれば、異常の早期発見と早期対応にも役立ちます。障害調査を特定の担当者の経験に頼りきらず進めたい場面で検討しやすい製品です。
Dynatrace (Dynatrace合同会社)
- アプリからインフラまで自動トポロジーマップで可視化。
- AI分析で原因特定・影響範囲を分析し、MTTRを削減。
- クラウドネイティブ/Kubernetes対応。
AppDynamics (株式会社サムライズ)
- アプリの性能をリアルタイムに監視
- 障害や遅延の原因をコードレベルで特定
- ビジネスへの影響を可視化。
JENNIFER (株式会社ジェニファーソフト)
- 状況を常に監視し、即座に把握すること。
- 誰でも容易に障害原因を特定可能
- 多角的な分析により、課題の抽出と再構築を行う。
Splunk® Application Performance Monitoring (Splunk Services Japan合同会社)
- AIドリブンのインサイトで問題のあるサービスを特定
- アプリやインフラ、ログを関連付けて原因分析を支援
- OpenTelemetryネイティブで柔軟なデータ収集に対応
APMツールに関するよくある質問
APMツールによる課題解決について、導入前によく寄せられる疑問をまとめました。確認の際の参考にしてください。
- ■Q1:レスポンスの遅延が多いとき、どんな機能を重視すべきですか?
- A:処理ごとの応答時間を見られる機能や、遅い処理を追跡するトレース機能が役立ちます。自社の言語やフレームワークに対応しているかも確認してください。
- ■Q2:ログの個別確認に限界を感じたら、どうすればよいですか?
- A:ログと性能データを一つの画面で見られるAPMツールを検討する方法があります。ログ確認が不要になるわけではないため、併用を前提として、それぞれの役割を整理しましょう。
- ■Q3:障害調査の属人化を防ぐには、何から始めればよいですか?
- A:調査の手順を文書にまとめ、ツールの画面と対応づけることから始められます。障害対応の記録を残し、通知先を分散する運用もあわせて整えると効果的です。
- ■Q4:性能監視は内製と外部委託のどちらがよいですか?
- A:担当者の人数や、夜間や休日の対応の必要性によって異なります。内製を基本に、不足する部分だけ外部の支援を使う方法もあります。
まとめ
APMツールは、処理ごとの応答時間やトレースを可視化することで、原因不明の遅延や障害調査の長時間化といった課題の解決に役立ちます。手順の標準化や記録の蓄積を進めれば、属人化の解消も期待できます。内製か外部委託かも含めて、自社の課題にあう製品を資料請求で比較してみてください。

