APMツールの応答時間計測とトレース機能
APMツールの基本は、アプリケーションがどれくらいの時間で応答しているかを計測し、遅い処理を探すことです。計測とトレースの機能を、順に見ていきます。
応答時間の計測範囲
応答時間の計測では、リクエストの受付から応答までの時間を、画面や処理の単位で確認できます。平均値だけでなく、遅いリクエストの割合まで見られるかが、状況を把握するうえで役立つ場合があります。
計測できる単位や集計の方法は、製品によって異なります。数値の見方に慣れるまでは、ベンダーの案内も参考にできます。
自社が重視する指標を測れるか、試用で確認してください。画面ごとや処理ごとなど、見たい単位で集計できると原因の切り分けに役立ちます。
遅いSQLや処理を探すトレース
トレースは、一つのリクエストが通った処理の流れを追う機能です。データベースへの問い合わせや外部サービスの呼び出しにかかった時間を、処理ごとに確認できる製品があります。
遅い処理を見つけやすくなる一方で、対応する言語やフレームワークは製品ごとに異なります。自社の開発環境が対象に含まれるかを確認しましょう。
計測による負荷への配慮
計測の仕組みをアプリケーションに組み込むと、処理にわずかな負荷がかかる場合があります。負荷の程度は、計測の粒度や対象システムの構成によって変わります。
本番環境へ導入する前に、検証環境で影響を確認する進め方が安心です。収集データを間引く設定の有無も、あわせて見ておきましょう。
APMツールのエラー検知とアラート機能
障害の兆候をいち早く知るには、エラーの検知とアラートの仕組みが欠かせません。設定の自由度や通知の方法を確認するポイントを整理します。
エラーを自動で検知する仕組み
APMツールは、例外の発生やエラーの応答を自動で集計して表示できる場合があります。同じ種類のエラーをまとめて表示する機能があれば、発生状況の把握が楽です。
エラーの詳細として、発生した処理や直前の操作まで確認できるかは製品によって異なります。原因調査の手間に直結するため、画面で確認しておきましょう。スタックトレースと呼ばれる、エラーが起きた処理の履歴が見られると便利です。
アラート条件の設定の柔軟さ
応答時間やエラー率に基準値を設け、超えたときに知らせる設定が一般的です。条件を細かく指定できると、不要な通知を減らし、重要な変化に気づきやすくなります。
基準値は運用しながら見直すことが多いため、変更の手順が分かりやすいかも確認してください。最初は緩めの値から始め、徐々に調整する方法もあります。
設定の変更履歴が残る製品もあります。変更の経緯を残せれば、運用の引き継ぎにも役立ちます。
通知先と通知方法の選択肢
通知は、メールのほか、チャットツールや電話、運用管理ツールへの連携など、さまざまな方法に対応する製品があります。普段の連絡手段に届くかが、初動の早さに影響します。
夜間や休日の通知先を切り替えられるかも、運用上のポイントです。重要度に応じて通知方法を変えられると、対応の優先順位をつけやすくなります。
自社の当番体制にあわせて設定できるか確かめましょう。通知が届かなかった場合の再通知の仕組みも、見ておきたい項目です。
ユーザー体験を測るRUM機能の見方
RUMは、実際の利用者の画面で体感される速さを計測する機能です。サーバー側の計測だけでは見えにくい情報を補う役割があります。
RUMで計測できる内容
RUMとは、利用者のブラウザやアプリ上での表示時間や操作の反応を、実際の利用環境で計測する仕組みです。サーバーの応答が速くても、画面の描画に時間がかかる場合は、利用者の体感が悪くなる可能性があります。
ブラウザの種類や地域ごとの傾向を分けて確認できる製品もあります。計測できる項目は、事前に一覧で確認しましょう。対応ブラウザやスマートフォンのアプリが含まれるかも、あわせて確認が必要です。
サーバー側の計測との組み合わせ
RUMの結果とサーバー側のトレースを関連づけて見られると、遅さの原因が画面側か、サーバー側かを切り分けやすくなります。両者を同じ画面で確認できるかが、製品を比べる際の目安です。
RUMには別途契約が必要な場合もあるため、対応範囲と料金を確認しておきましょう。基本プランに含まれるのか、追加の契約になるのかで総費用が変わります。
利用者情報の取り扱いへの配慮
RUMでは、利用者の端末や閲覧に関する情報を収集する場合があります。個人情報にあたるデータが含まれないか、収集する項目を設定で制限できるかを確認してください。
プライバシーポリシーへの記載が必要になることもあるため、法務部門や情報システム部門に相談しておくと安心です。収集項目の一覧をベンダーから入手しておくと、社内の確認が進みます。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でAPMツールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
分散トレーシングでサービス間を追跡する
複数のサービスが連携して動くシステムでは、一つの処理が多くのサービスをまたぎます。分散トレーシングの役割と確認点を紹介します。
サービスをまたぐ処理を追う理由
マイクロサービスのようにサービスが分かれた構成では、遅延の原因がどのサービスにあるのか、個別の監視では分かりにくい場合があります。分散トレーシングは、サービス間の呼び出しを一続きの流れとして表示します。
構成がシンプルなシステムでは、必須とは限りません。自社の構成に必要かどうかを先に整理しましょう。
対応する言語と規格の確認
サービス間の追跡には、各サービスが同じ形式で追跡情報を受け渡す必要があります。OpenTelemetryのような共通規格に対応しているかは、製品を比較する際の確認項目です。
サービスごとに使う言語が異なる場合は、それぞれの言語に対応しているかも確認してください。対応外のサービスがあると、追跡が途切れて、原因の特定に時間がかかるおそれがあります。
ダッシュボードでの可視化機能
ダッシュボードは、計測した情報を一覧で見られる画面です。見やすさや共有のしやすさは、日々の運用に影響します。
表示内容のカスタマイズ性
画面に並べるグラフや指標を、利用者の役割に応じて変更できる製品があります。開発担当者は処理の詳細を、管理者は全体の状況を見るなど、目的に応じた画面を作れるかが判断材料です。
初期状態で用意されたテンプレートの有無も確認しましょう。設定の手間を減らし、導入直後から使い始められます。自社で必要な指標が揃っているかを、サンプル画面で見ておきましょう。
共有と閲覧権限の管理
画面を関係者へ共有できると、障害時の情報共有が早まります。閲覧のみの利用者と編集できる利用者を分けられるか、リンクでの共有に制限をかけられるかも確認項目です。
社外の関係者に見せる場合は、表示される情報の範囲にも注意が必要です。委託先などに共有する際は、見せてよい範囲を事前に決めておくと安心です。
主要機能で比べるAPMツール
計測やアラートなど、主要機能の確認に役立つ製品を紹介します。
New Relic
- 全てのスタックをOneプラットフォームで統合監視可能
- システム全体を把握し問題の予兆検知や早期発見・早期対応が可能
- クラウドネイティブ対応で、スケールに応じた柔軟な監視が可能
ベニックソリューション株式会社が提供する「川崎重工IT子会社が手掛けるオブザーバビリティソリューション「NewRelic」」は、リアルタイム分析に対応し、システムの状態を取得し続けながら問題の予兆を捉えるオブザーバビリティソリューションです。機械学習/AI分析の機能を備えているほか、タグ設定でデータを整理したり、アラートトリガーを設定して通知条件を決めたりできます。サービスマップによる可視化も利用でき、計測、検知、可視化の機能をまとめて確認したい場合の比較対象になります。
New Relic APM 360 (New Relic 株式会社)
- アプリの健全性指標を統合ビューで一元表示。
- 性能をリアルタイムで監視し、稼働状況を常に把握。
- マルチクラウドにより、多様なインフラ環境に対応。
Splunk® Application Performance Monitoring (Splunk Services Japan合同会社)
- AIドリブンのインサイトで問題のあるサービスを特定
- アプリやインフラ、ログを関連付けて原因分析を支援
- OpenTelemetryネイティブで柔軟なデータ収集に対応
JENNIFER (株式会社ジェニファーソフト)
- 状況を常に監視し、即座に把握すること。
- 誰でも容易に障害原因を特定可能
- 多角的な分析により、課題の抽出と再構築を行う。
CAApplicationPerformanceManagement (Broadcom Inc.)
- Webアプリの性能をリアル/擬似ユーザ監視で可視化。
- 自動検出と追跡でボトルネックを特定
- トポロジーマップと自動ベースラインで異常を早期把握。
APMツールに関するよくある質問
APMツールの機能について、導入前によく寄せられる疑問をまとめました。確認の際の参考にしてください。
- ■Q1:APMツールで応答時間を計測するにはどうすればよいですか?
- A:製品によっては、アプリケーションにエージェントなどの計測用の仕組みを組み込みます。対応する言語や環境は製品によって異なるため、事前に確認が必要です。
- ■Q2:エラーの自動検知とアラートはどの製品でも使えますか?
- A:エラー検知やアラートを備える製品はありますが、条件設定の自由度や通知先の種類は異なります。自社の運用に必要な設定ができるか確認しましょう。
- ■Q3:RUMと分散トレーシングは、どちらも必要ですか?
- A:システムの構成や課題によって異なります。利用者の体感を把握したい場合はRUM、複数サービスの連携を追いたい場合は分散トレーシングが検討対象です。
- ■Q4:ダッシュボードで確認すべき指標は何ですか?
- A:応答時間、エラー率、リクエスト数などが基本です。役割ごとに必要な情報が異なるため、見る人にあわせて画面を作れるかも確認しましょう。
まとめ
APMツールを選ぶ際は、応答時間の計測とトレース、エラー検知とアラート、RUM、分散トレーシング、ダッシュボードの対応範囲を確認することが大切です。製品によって対応する言語や設定の自由度は異なるため、試用を通じて、自社の環境で動作するかを確かめましょう。複数製品を比較したい場合は、資料請求を活用してみてください。

