電子カルテとは
電子カルテとは、診療経過やバイタルに検査結果や画像・看護記録・紹介状など患者に付随する情報を加えて、電子データとして保存したものです。あるいは、紙カルテを電子化してデータベースで管理するシステムを指す場合もあります。電子カルテの導入で、ペーパーレス化やカルテの管理、検索が容易になります。

また、検査結果の取り込みやレセプトの作成など、業務全体が効率化する機能を備えたシステムも多くあります。そのため医師はもちろん、看護師や検査技師、医療事務など複数の関係者が利用できるシステムです。
電子カルテの保存三原則
電子カルテは、さまざまなメーカーから提供されていますが、厚生労働省が定めた以下のの三原則「真正性」「見読性」「保存性」を満たしている必要があります。
- ■真正性
- 正当な人が記録し確認された情報に関し第三者から見て作成の責任の所在が明確であり、故意または過失による虚偽入力、書き換え、消去および混同が防止されていること
- ■見読性
- 電子媒体に保存された内容を、権限保有者からの要求に基づき必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること
- ■保存性
- 記録された情報が法令等で定められた期間に渡って真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されること
参考:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版|厚生労働省
電子カルテの種類
電子カルテの提供形態は、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類に分けられます。病院の規模や使用用途により適した形が異なるため、特徴をもとに自院にあう種類を選択しましょう。
項目 | オンプレミス型 | クラウド型 |
---|---|---|
導入コスト | 高額(サーバ・専用機器などが必要) | 初期費用無料または低額、月額定額制が多い |
運用・保守 | 自院で実施、専門人員が必要 | 提供会社が対応、手間がかからない |
セキュリティ | 院内で完結するため漏えいリスクが低い | インターネットを経由するため対策が必要 |
利用環境 | 院内のみ(サーバ・端末に依存) | インターネット環境があれば外部からも利用可能 |
適した施設 | 大規模病院・専任IT担当がいる施設 | 小規模~中規模の診療所、訪問診療クリニック |
近年では、セキュリティ対策が実施されているクラウド型電子カルテも多く登場しています。以下のページでは、クラウド型電子カルテの特徴を比較しているため、ご覧ください。
電子カルテのメリットと導入効果
電子カルテの導入により、医師ごとの属人的な管理を防止できるなど、さまざまな効果を得られます。ここでは、紙カルテと比較し、電子カルテの活用メリットを紹介します。
カルテ入力・文書作成・受付・会計が短時間で完了する
電子カルテの導入により、診療現場だけでなく受付・会計業務も含めた一連の業務が効率化されます。例えばカルテ入力では、過去の記録を呼び出して流用(Do入力)できるほか、定型文・テンプレートの活用で診断書や紹介状の作成時間を大幅に短縮可能です。また受付ではカルテを探す手間がなく、検索ですぐに情報を表示できます。会計ではレセプトソフトとの連携により、診療内容が自動で反映され算定漏れのリスクも減少。これらの改善により、患者の待ち時間も短縮され、職員の作業負荷も軽減されます。
検査業務の効率化とヒューマンエラーの防止
電子カルテは検査依頼・結果取り込みも一元管理できるため、作業工程を簡略化できます。検査会社への依頼から結果の取り込みまでが自動連携され、紙カルテのように記録を探して書き写す必要がありません。検査業務の省力化はもちろん、記入ミスや記録漏れといったヒューマンエラーの予防にもつながり、安全で確実な情報管理を実現します。
リアルタイムに情報共有できる
電子カルテはネットワーク経由で即時更新されるため、診療履歴・処方・検査結果などの情報がリアルタイムに確認できます。端末さえあれば場所を問わず閲覧・入力が可能で、紙カルテのような部門間の受け渡しや紛失リスクもありません。情報共有のスピードが向上し、医師・看護師・事務職員の連携が円滑になり、迅速な医療提供が実現します。
読みやすさと指示の正確性が向上する
電子カルテは誰でも読みやすいフォーマットで記録されるため、手書きカルテにありがちな読み間違いや指示伝達ミスを防げます。また、処方ミスを防ぐためのチェック機能を搭載した電子カルテもあり、医療の安全性を高める効果もあります。
保管スペースの削減と災害時のデータ保全が可能
電子カルテはクラウドサーバにデータを保存できるため、紙カルテのように物理的な保管場所が不要になります。これにより、保管棚の削減や院内スペースの有効活用が可能です。また、クラウド型なら火災や水害などの災害時でもデータ消失のリスクが低く、バックアップ体制も整っているため、BCP(事業継続計画)対策としても有効です。過去の紙カルテを電子化できるサービスもあり、移行もスムーズに行えます。
患者へのサービスが向上する
電子カルテの活用により、診療情報の検索・確認・共有が迅速になることで、患者一人ひとりにかけられる診療時間の確保が可能になります。受付や会計の待ち時間も短縮され、検査結果もスピーディーに確認できるため、患者の満足度向上に寄与します。全体として、医療サービスの質と効率を高める大きな要因となります。
電子カルテのデメリット
電子カルテを導入する際は、デメリットについても理解し、適切な対策を講じておきましょう。
導入コストがかかる
電子カルテの導入にはコストが発生しますが、クラウド型の場合月額利用料は約1万~5万円程度、オンプレミス型では初期費用が300万~500万円程度が相場です。導入形態や機能、カスタマイズの有無によって費用は変動します。複数のベンダーから見積もりを取り、総コストを比較検討することが重要です。また、IT導入補助金などの制度を活用することで、費用負担を軽減できる場合もあります。
システム定着までに時間と学習コストを要する
電子カルテは、自院の診療体制にあわせた設定が必要であり、使用頻度の高い薬剤名やテンプレートの登録など事前準備に手間がかかる場合があります。また、PC操作に不慣れな医師・スタッフもおり、操作を習得するまでに時間がかかることもあります。円滑な導入には、ベンダーのサポート体制や導入時の研修・勉強会の実施が重要です。
停電・通信障害時に利用できないリスクがある
電子カルテは電力・ネットワーク・システムに依存しているため、災害発生時など停電時には利用できません。自家発電装置を備える病院もありますが、断線や接続不良などシステムダウンする危険性もあります。提供会社には、災害時などの備えや対応方法を事前に確認しましょう。
情報漏えい対策などセキュリティ管理が不可欠
電子カルテは診療記録や個人情報など重要なデータを扱うため、高度なセキュリティ対策が求められます。外部からのサイバー攻撃だけでなく、USBメモリなどを用いた内部不正による情報もち出しのリスクもあります。ログの管理やアクセス制限など多層的な対策が必要です。
電子カルテの普及率と今後の義務化について
厚生労働省の「医療施設調査」によると、令和5年時点での電子カルテの普及率は一般病院全体で65.6%、一般診療所では55.0%となっています。特に大規模病院(400床以上)では93.7%と高水準で導入が進んでおり、小規模病院(200床未満)でも59.0%まで拡大しています。医療機関の規模に応じて普及が進んでいる状況がうかがえます。
なお、電子カルテは2025年6月時点で義務化されていませんが、厚生労働省は2030年までに全国の医療機関で電子カルテ情報の標準化と共有を実現する方針です。
参考:医療DXの更なる推進について|厚生労働省 医政局
参考:電子カルテシステム等の普及状況の推移|厚生労働省
電子カルテの導入ポイント
電子カルテを導入する際には、以下の点を比較してみましょう。
- ■対応可能な規模や診療科目
- 電子カルテには、無床クリニック向けや中小病院向け、特定診療科向けなど多様な製品がある。自院の規模や診療科目に適した製品を選定することが重要。
- ■他システムとの連携性
- 予約管理、検査、画像管理などのシステムと連携できるかを確認する。特に会計業務の効率化にはレセコンとの連携が欠かせない。製品ごとに対応範囲が異なるため、事前確認が必要。
- ■多職種でも使いやすい操作性
- 電子カルテは医師だけでなく、看護師や医療事務など多職種が使用するため、誰でも直感的に操作できるインターフェースであることが望ましい。音声入力や手書き入力、タブレット対応などの補助機能がある製品がおすすめ。
- ■サポート体制
- システム障害やトラブル時に迅速な対応が可能かを確認する。対応時間や訪問対応の有無、導入時の操作研修や遠隔サポートの有無も重要な評価項目。
- ■セキュリティ対策
- 電子カルテは個人情報を多く含むため、通信の暗号化やアクセス権限管理、操作ログ記録などの対策が不可欠である。ベンダーの対策内容だけでなく、院内での情報セキュリティ教育も重要。
以下の記事では、数ある電子カルテメーカーのなかから、病院の規模・種類別に製品を比較紹介しています。製品に選び方や比較ポイントも解説しているので、あわせてご覧ください。
電子カルテシステムのランキングTOP3を紹介
ITトレンド年間ランキング2024「電子カルテ」より、資料請求数の多かったTOP3の製品を紹介します。
CLIUS (クリアス)
- 【無料】WEB予約・問診・在宅・オンライン診療全て追加料金なし
- カルテ入力時間を短縮できるUI・UX。初心者でも使いやすい
- iPadでも使える!訪問診療や院内での持ち運びに役立ちます
株式会社DONUTSが提供する「CLIUS(クリアス)」は、外来・在宅を問わずスムーズな診療を支援するクラウド型電子カルテです。直感的な操作性と多端末対応に加え、訪問診療向けの地図連携や定期処方管理などを強化。レセプトや地域連携にも対応し、カルテ入力や患者管理の効率化を図りつつ、医師が患者と向き合う時間を創出します。
Medicom-HRf Hybrid Cloud
- オンライン順番受付・モバイル型決済・オンライン問診と連携可能
- はじめてでも直観的に理解しすぐに使いこなせるUX/UIデザイン
- クラウド活用によるデバイス&ロケーションフリーを実現
ウィーメックス株式会社が提供する「Medicom-HRf Hybrid Cloud」は、クラウドの柔軟性と診療支援機能を兼ね備えた医事一体型電子カルテです。多様な医療機器との連携や診療内容のチェック機能により、業務の質と効率を両立。院外利用や災害時のデータ保全にも対応し、セキュリティ面でも安心の体制を整えています。
MAPs for CLINIC
- 初期ライセンス0円!Web予約問診(LINE連携)も追加費用0円!
- 柔軟な入力セット・画面表示カスタマイズで4倍速の高速入力
- ネットワーク障害時は別回線に自動切換。オフラインでも入力可能
株式会社EMシステムズが提供する「MAPs for CLINIC」は、安全性と使いやすさを両立した無床クリニック向けクラウド電子カルテです。高速入力や画面カスタマイズによる操作効率の向上に加え、回線障害時も診療継続が可能な設計が特徴。外部機器やサービスとの連携で受付から決済までの業務も支援し、現場の負担軽減と診療の質向上に貢献します。
製品詳細やほかのランキング入賞製品も確認したい方は、ぜひ以下の記事も一読ください。主要な電子カルテメーカーも把握できます。
導入の際には3省2ガイドラインを遵守する
電子カルテを導入する際には、各省庁が規定しているガイドラインに則って進める必要があります。これは、医療に関する情報を電子化しクラウド保存する際に遵守しなければならない事項がまとめられたものです。病院や診療所のほか、薬局や介護事業者なども対象とされています。
なお、コストの問題で導入が難しい場合、経済産業省管轄の「IT導入補助金」を活用する手もあります。医療機関も補助対象者に該当し、助成対象となる電子カルテ製品もあるため、制度を活用してみましょう。
参考:
●医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
●医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン(METI/経済産業省)
●IT導入補助金
まとめ
電子カルテとは、患者のあらゆる情報を電子化して管理するシステムのことです。リアルタイムで正確な情報を共有・管理でき、紙カルテのような保管場所の確保が不要となるメリットがあります。導入後の定着や災害時の不安、セキュリティリスクもゼロではありませんが、適切な対策により効果的な運用が実現します。
自院にあう電子カルテを選択するためにも、複数企業の資料を取り寄せまずは比較してみましょう。以下のリンクから、おすすめの電子カルテの製品ラインナップを紹介しています。ぜひご覧ください。