
IP電話とは
IP電話とは、インターネット回線を用いた電話のことです。プロバイダによって提供されることが多く、PCやスマホ、固定電話機などで利用できます。

IP電話は通話機能だけでなく、通話録音システムやWeb電話帳、顧客管理システムなどさまざまな社内システムと連携が可能です。また、電話回線の通話サービスと比べて基本料金や通話料金が安くなるケースも多いため、近年多くの企業で導入されています。
IP電話の種類
IP電話の種類は大きく3つにわけられます。「0ABJ型」「050型」「電話番号不要型」の各種類について、それぞれ詳しく解説します。
0ABJ型
総務省が定めた品質基準を満たした通信事業者のみ取得できる10桁のIP電話番号のことです。従来の固定電話番号と同じく「市外局番(03や06)+市内局番+加入者番号」で構成され、通話品質も担保されています。
0ABJ番号IP電話は、通信事業者やプロバイダ提供の光電話が該当します。代表的なものに、NTT東日本・NTT西日本のひかり電話があります。
以下の記事では、光電話と比較しながらIP電話の概要を解説しているので、あわせて参考にしてください。
050型
「050+通信事業者の識別番号+加入者番号」で構成される11桁のIP電話番号のことです。どこから発信しても050からはじまる番号になるため、市外局番のように発信地は特定できません。ただし、どの通信事業者と契約しているかは特定されます。また、050型のIP電話同士なら無料通話となるケースが多いため、通話コストの削減に効果的です。
050型IP電話の導入メリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
電話番号不要型
LINEやSkype、Facebook Messengerなど、電話番号がなくても音声通話できるアプリが電話番号不要型の代表格です。電話回線や携帯キャリアの電話を利用せず、インターネット回線を使用して通話するため、インターネット電話とも呼ばれます。同じアプリ間であれば無料通話が可能です。ただし、固定電話への発信はできません。
IP電話の仕組み
IP電話は、音声をIPパケットに変換することで、インターネット経由での通話を可能にします。IP電話の仕組みは以下のとおりです。
- 1.発信者の音声情報を電気信号に変換
- 2.VoIPゲートウェイという中継機器を用いて、電気信号をIPパケットへと変換
- 3.インターネット回線を通じて着信側へと送信
- 4.IPパケットのままでは音声を確認できないため、再度VoIPゲートウェイを介し、電気信号に復元
- 5.電気信号を音声情報に復元
IP電話の仕組みについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
固定電話(アナログ電話)とは
固定電話とは、アナログ回線やデジタル(ISDN)回線を用いた電話のことです。
アナログ回線は、メタル線とアナログ信号を用いて通話する電話回線です。信号の違いによってダイヤル回線とプッシュ回線に分類でき、ダイヤル回線はダイヤルパルス信号、プッシュ回線はプッシュボタン信号を利用します。
固定電話(アナログ電話)の仕組み
固定電話(アナログ回線)の仕組みは以下のとおりです。
- 1.発信者が電話番号を入力する
- 2.メタル線を介して、ダイヤルパルス信号またはプッシュボタン信号が発信者の最寄りの電話局(交換機)へ送られる
- 3.中継回線を通じて着信者の最寄りの電話局(交換機)に到達し、呼び出し音を鳴らす
- 4.着信者が受話器を取ると両者の回線が接続され通話できる
なお、NTT東日本・NTT西日本のアナログ回線とデジタル回線は、2024年1月にIP網へと移行されました。
参考:固定電話のIP網への移行時期について|NTT東日本
参考:固定電話網の円滑な移行|総務省
IP電話と固定電話(アナログ電話)との違いを比較
IP電話と固定電話では、電話料金や回線の安定性、通話可能な電話番号などが異なります。そのため、自社の業務内容に適した電話環境を構築するのがおすすめです。ここでは、IP電話と固定電話の違いを解説します。

回線の安定度や通話品質
IP電話 | 固定電話 | |
---|---|---|
安定度と通話品質 | 通信環境に左右されやすい | 良好 |
IP電話はインターネット回線を使用するので、通信環境によっては固定電話ほど回線が安定しません。ただし、ひかり電話(光電話)など0ABJ型のIP電話であれば、固定電話と同等の安定性が期待できます。
電話音声品質によって、総務省がIP電話事業者をA・B・Cの3つにランクわけしています。特に安定した回線を求める場合は、AランクのIP電話事業者と契約するとよいでしょう。
導入費用や料金
IP電話 | 固定電話 | |
---|---|---|
導入費用 | 2,000円~3,000円前後(ネット回線がすでにある場合) | 35,000円前後(電話加入権を新規購入した場合) |
基本料金 | 500円前後 | 1,500円~2,000円前後 |
通話料金 | 距離によって変動しない 携帯電話宛よりも固定電話宛の通話料金のほうが高い | 距離によって変動する 固定電話宛よりも携帯電話宛の通話料金のほうが高い |
IP電話は固定電話と比べて、導入費用も月額費用も安価です。電話加入権を購入する必要がなく、相手との距離に限らず通話料金が一定のためです。また、IP電話アプリ同士なら通話料無料のサービスも登場しています。
なお、IP電話の通話料金は、通話先が携帯電話か固定電話かによって違いがあります。多くの場合、携帯電話よりも固定電話への通話のほうが通話料金は高くなります。
電話番号や機能
IP電話 | 固定電話 | |
---|---|---|
電話番号 | 0ABJ型(03や06はじまり)/050型/電話番号不要型 | 0+市外局番+市内局番+加入者番号 |
機能1(110番や119番への発信) | 0ABJ型を除き不可 | 可能 |
機能2(フリーダイヤルへの発信) | 不可(一部可能なものもある) | 可能 |
発信者の位置情報を通知する機能がない050型のIP電話では、「110番」や「119番」などの緊急通報や緊急電話が利用できません。市外局番を使用する0ABJ型のIP電話からは発信可能ですが、通信事業者によってサービス内容は異なるため事前に確認が必要です。緊急通報や緊急電話が利用不可の場合は、最寄りの警察署・消防署などの通常番号を事前に登録し、直接電話をかけるといった対策が必要です。
また大半のIP電話では、フリーダイヤルへの発信もできません。フリーダイヤルとは0120からはじまる番号で、通話料金を着信側が負担する形態です。IP電話からフリーダイヤルにかけたい場合は、携帯電話と同様に専用の番号にかける必要があります。
インフラ要件
IP電話 | 固定電話 | |
---|---|---|
利用回線 | インターネット回線 | アナログ回線 |
工事の必要性 | 不要(インターネット回線がすでにある場合) | 必要 |
利用形態 | 電話機/PC/スマホ | 電話機 |
IP電話はインターネット環境があれば、配線工事の必要はありません。ただし、インターネット環境がない状態でIP電話を導入したい場合は、インターネット回線の契約が必要です。また、固定電話は専用の電話機を用いた音声通話しか行えませんが、IP電話は固定電話機・PC・スマホを利用でき、ビデオ通話にも対応可能です。
なお、IP電話の種類によっても、通信品質や利用料金などは異なります。以下の記事では機能や価格別におすすめのIP電話サービスを比較しているので、具体的な製品情報が知りたい方はあわせてご覧ください。
IP電話の導入メリット
IP電話は、コストと利便性において固定電話より優位でしょう。ここではIP電話のメリットと、IP電話導入が適している企業について解説します。
- ●コスト削減ができる
- ●企業規模を問わない
- ●システム連携がしやすい
- ●時間をかけずに導入できる
コスト削減ができる
IP電話は、固定電話と比べて基本料金や通話料金が安価な傾向にあり、使用量によっては大幅なコスト削減につながります。遠方や海外との通話料金も安価なため、全国に拠点のある企業や海外との通話を頻繁に行う企業におすすめです。
また、IP電話はこれまで使用していた電話機やPC・スマホなどを継続して利用可能です。新たに電話機を購入する必要がなく、コストをかけずに導入できます。
企業規模を問わない
IP電話は初期コストや運用コストを抑えられるため、電話環境にあまり予算をかけられない中小企業でも導入しやすいでしょう。一方で、複数拠点の電話システムの統合や一元管理を行いたい大企業にも適しています。複数拠点の保守管理を本社でまとめて実施することで、企業組織の簡素化や人件費の削減につながります。
システム連携がしやすい
IP電話はスマホやPCのほか、顧客管理システムや通話録音システムなど、さまざまな業務システムやアプリケーションと連携できる製品があります。さらに、IP-PBXやクラウドPBXなどの電話交換機を用いることで、社外からも会社の代表番号で発着信できるなど、柔軟な電話対応が可能になります。
そのため、拡張性や柔軟性のあるIP電話は、テレワークを導入している企業や外回り営業が多い企業、電話応対や取次などの業務効率化を図りたい企業にもおすすめです。
時間をかけずに導入できる
IP電話なら、導入のための配線工事だけでなく、従業員数や拠点数の増減による工事や撤去も必要ありません。そのため、オペレーター数の増員や、事務所や営業所の移転などを検討している企業にも最適です。また、導入の手間が少なく低コストで利用できるため、スタートアップ企業にとっても有用でしょう。
IP電話の注意点
IP電話を効果的に利用するためには、注意すべきポイントが3つあります。
- ●停電時に利用できない
- ●インターネット回線の影響を受ける
- ●セキュリティ対策が必要になる
それぞれ詳しく解説します。
停電時に利用できない
アナログ回線を利用する固定電話は、電話線から電力を供給しているケースもあり、停電発生時にも電話がつながる可能性は高いでしょう。しかしIP電話は、専用機器をコンセントに接続して利用するため、停電時には使用できません。
固定電話からIP電話に切り替えた場合は、停電発生時にスマホを利用するなどの対策が必要です。また停電時に備えて、IP電話と固定電話を併用するのも一手です。
インターネット回線の影響を受ける
IP電話はインターネット回線を使用した電話のため、電波が不安定な場合に影響を受ける可能性は否めません。ネットワークにトラブルが発生した際は、通話ができなくなる恐れもあります。考えられるトラブルと、対応方法をあらかじめ決めておくことが大切です。
通話の安定性を求める場合は、0ABJ型のIP電話事業者と契約するのがおすすめです。
セキュリティ対策が必要になる
ネットワークに接続している通信機器の設定が不適切であったり、セキュリティ対策が不十分だったりすると、第三者による乗っ取りやなりすましなどの不正アクセスを招きます。実際に、第三者によるIP電話の不正利用が発生しており、総務省は注意を呼びかけています。
ルータやPBXの設定を確認するとともに、ソフトウェアを最新バージョンにアップデートする、IDやパスワードの定期的に変更するなどの対策を講じましょう。
参考:停電の際の固定電話サービスの利用について|総務省参考:第三者によるIP電話等の不正利用に関する注意喚起|総務省
固定電話(アナログ電話)をIP電話に切り替える方法
固定電話からIP電話への切り替え手順は、以下のとおりです。特別な切り替え作業を必要としないケースも多く、比較的簡単に移行できます。
- 1.通信事業者やプロバイダへIP電話を申し込む
- 2.専用機器(VoIPアダプター)を受け取り、コンセントと電話に接続する
IP電話をアナログ回線の固定電話で使用する場合には、アナログ信号をデジタル信号に変換するVoIPアダプターが必要です。ただし、最初からIP通話に対応したIP電話機を使用する場合は、アダプターは不要です。

また、最近では専用のIP電話機やスマホアプリを活用することで、VoIPアダプターを使用せずにIP電話を導入できるクラウド型サービスも増えています。小規模オフィスやスタートアップ企業など、初期投資を抑えたいケースでは、アプリ型のIP電話サービスも有力な選択肢です。
以下の記事ではIP電話アプリを比較しているので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
おすすめのIP電話サービスを紹介
ITトレンド編集部おすすめのIP電話サービスを紹介します。提供形態や機能、参考価格などもまとめているので、自社にあう製品の選定にお役立てください。
トビラフォン Cloud
- 設備投資不要で簡単に導入可能
- 自動テキスト化などのさまざまな機能が標準搭載
- 柔軟な着信設定と操作性に優れた管理画面
トビラシステムズ株式会社が提供する「トビラフォン Cloud」は、スマホでビジネスフォンの機能を活用できるフルクラウド型のクラウドPBXです。通話録音や音声テキスト化、IVR・SMS自動送信、迷惑電話フィルタなど、多機能ながら操作はシンプル。はじめてIP電話を導入する企業にも使いやすいでしょう。テレワークや外勤でも社用番号で通話でき、場所にとらわれない柔軟な電話対応を実現します。
提供形態 | クラウド / SaaS | 無料トライアル | ◯(5日間) |
参考価格 | 初期費用33,000円~ 月額3,300円~/ユーザー | 機能 | 携帯電話転送 / PC連携 |
MiiTel Phone(ミーテルフォン)
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- 正確・迅速な共有で顧客対応を高速化!営業ノウハウの俗人化解消
株式会社RevCommが提供する「MiiTel Phone(ミーテルフォン)」は、IP電話を業務改善にも役立てたい企業におすすめのAI機能搭載のクラウドIP電話サービスです。通話内容をAIが自動で分析・可視化するため、対応品質の改善や業務の標準化に役立ちます。録音・文字起こし・CRM連携なども可能。導入後もスムーズに活用できるよう、クラウド上でのサポート体制も整っています。
提供形態 | クラウド / SaaS | 無料トライアル | ー |
参考価格 | 初期費用無料 月額5,980円~/ユーザー | 機能 | 通話録音/自動文字起こし/システム連携 |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
MiiTel Phone(ミーテルフォン)を利用したユーザーの口コミ
保留中の時間や受付の方とのやり取りも分析に反映されてしまうため、自動でカットするなどの機能が欲しい。また、電話内容の自動文字起こしの精度もそこまで高くない。
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THISIS
- 1つのスマホにサブ回線として独立した仕事専用の連絡先を持てる
- プライベートな情報を知らせることなく、仕事用の連絡網を構築
- URL形式の連絡先なので、仕事専用の連絡先として一般公開可能
THISIS株式会社が提供する「THISIS」は、スマホにビジネス専用の回線を追加できるサブ回線サービスです。電話番号を公開せずにURLやQRコード経由で通話・チャットができるため、問い合わせ窓口や外部対応にも便利です。初期費用・通話料が無料で、短期間・少人数から気軽に始めたい企業に適しています。
提供形態 | クラウド / SaaS | 無料トライアル | ◯(1週間) |
参考価格 | 初期費用無料 月額9,800円~(税込み) | 機能 | 無料通話・チャット/グループ着信/QRコード発信など |
RemoTEL
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- 1か月単位で契約できる柔軟な料金体系!
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株式会社ジェイドコーポレーションが提供する「RemoTEL」は、スマホアプリから会社番号で発着信できるクラウド型IP電話サービスです。オフィス外でも内線通話や代表番号対応が可能。設置工事が不要で、機器管理の手間もなく、スタートアップ企業やはじめてIP電話を導入する企業でもスムーズに利用開始できます。
提供形態 | クラウド / SaaS / ASP | 無料トライアル | ー |
参考価格 | 初期費用13,200円(税込み) 月額7,260円(税込み)/5ID | 機能 | 外線番号管理/外線発着信/通話録音など |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
RemoTELを利用したユーザーの口コミ
ビジネスフォンだと比較的難しいお客様の履歴参照の業務が簡単に行えるようになりましたし、コロナ禍などの急なテレワーク対応もスムーズに行えました。
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管理画面のUIをより詳細にアレンジできたり、音質などのよりクリア化、システムの安定化などを期待します。不便な部分などは特にないですね。
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より多くの製品情報が知りたい方は、以下の一覧をご活用ください。製品資料やサービス比較を通じて自社に最適なIP電話サービスを見つけましょう。
IP電話に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、IP電話を導入する際によくある疑問をまとめました。
- Q1. IP電話の方が本当に安いの?
- 通話量や通話先によりますが、初期費用・月額費用は固定電話より安価です。
- Q2. IP電話は110番や119番にかけられる?
- 0ABJ型なら可能ですが、050型は不可です。注意点をよく理解しましょう。
- Q3. IP電話の通話品質は問題ない?
- 0ABJ型や光電話なら、固定電話と遜色ない品質が期待できます。
まとめ
IP電話とは、インターネット回線を利用した電話のことです。固定電話に比べ初期費用や通話料金が安く、企業の通信コストの削減につながります。ただし、通信音声品質や利用料金などは製品によって異なるため、導入を検討する際は各社製品をよく比較し、自社に最適なIP電話製品を見つけましょう。

録音機能もあり、会話をいつでも再生しチェックしたりすることができるので他のメンバーの会話を共有し、スキル向上へと繋げることができています。
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