
BIツールの基本知識
BIツールとは、「Business Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)」の略で、企業のあらゆるデータを分析・可視化し、より良い意思決定を支援するツールです。
例えば、「毎月の売上推移」や「商品ごとの利益率」などを、グラフや表で一目で確認できるようにすることで、課題の発見や迅速な判断が可能になります。従来はExcelで手作業していたデータ集計や分析を自動化でき、経営判断のスピードと精度を大きく高められるのが特徴です。
BIツールの定義や種類などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
BIツールの4つの機能
BIツールは、主に以下の4つの機能から構成されています。それぞれの機能が組み合わさることで、データの集計から分析・可視化・意思決定支援までを一貫して行えます。
- ■レポーティング機能
- 業務レポートを自動生成し、意思決定を迅速化します。膨大なデータの分析結果を、表やグラフの形式でわかりやすく表示し、リアルタイムに更新可能です。日々の営業活動の改善や、経営層への迅速な報告に役立てることが、レポーティング機能の効果的な使い方です。
- ■ダッシュボード機能
- リアルタイムなKPIや進捗状況などを、ひと目で把握できるように可視化します。状況変化を即座に捉え、問題の要因を多角的に検証するのに役立ちます。重要な指標を継続的にモニタリングし、意思決定のタイミングを逃さないことが、ダッシュボード機能の効果的な使い方です。
- ■OLAP分析機能
- 「地域別売上」や「月別顧客数」など、複数の視点(多次元)でデータを比較・集計できる機能です。顧客の動向や売上の傾向を深掘りしやすくなります。多角的な視点からパフォーマンスを分析し、部門や施策の改善に役立てることが、OLAP分析機能の効果的な使い方です。
- ■データマイニング機能
- 過去の傾向から将来の動きを予測します。統計的手法や機械学習により、膨大なデータから隠れた関係性やパターンを発見し、戦略立案に活用できます。人では気づけない潜在的な要因を見出し、意思決定の精度を高めることが、データマイニング機能の効果的な使い方です。
BIツールできる分析手法と効果的な使い方
BIツールによる分析(BI分析)は、企業に蓄積された売上・在庫・顧客・経費などの膨大なデータを活用し、経営判断や業務改善につなげるための手法です。ここでは、BI分析でよく使われる代表的な手法を、業務別にわかりやすく紹介します。
予実分析で素早い経営判断を実現する
予実分析とは、予算と実績を比較して分析することです。どんな企業であっても、利益を生み出すためには的確な予実分析が必須です。BIツールを使えば、過去から現在までの売上データを簡単に分析できます。ダッシュボード機能を活用すれば、リアルタイムに表やグラフが更新されていく様子の監視も可能。
例えば経営管理部門であれば、経営判断に役立つ指標をすぐに確認・分析することが日々必要とされています。企業によって重要指標は異なりますが、ダッシュボード機能で「経常利益率」や「売上高」などのデータをリアルタイムに表示することで、迅速な経営判断を行えるようになります。
また、為替や材料費などの変動をもとに、将来の売上をシミュレーションすることも可能です。そのため、BIツールは予測ツールとしても活用できます。
OLAP分析・データマイニングでマーケティング戦略を立てる
OLAP分析・データマイニングでは、分析の掘り下げや関連性の分析が行えます。こうした機能を活用することで、売上や購買履歴と外的要因(季節や地域性など)との関連性を分析でき、広告施策の最適化やターゲットの明確化につながります。
例えばマーケティング部門では、BIツールの分析機能を活用して、売上データの関連性や傾向を効率よく分析できます。マーケティング業界では有名な話ですが、スーパーマーケットの売上データから、赤ちゃん用のおむつとビールが一緒に購入される傾向にあるという分析も、このOLAP分析・データマイニングから明らかになったと言われています。
人では発見出来ないような傾向やパターンを見つけ出し、広告の最適化やプロモーションのターゲットを絞り込むなどの施策を行えるでしょう。
レポーティング機能で日々の営業活動を最適化する
BIツールはレポーティングの機能があり、分析結果を簡単にレポートできます。フィルター(条件抽出)やドリルダウン(詳細分析)の機能を使えば、分析結果に深みを持たせ、より説得力ある説明が可能になります。
営業部門であれば、レポーティング機能を使って日々の売上レポートや売上予測を簡単に作成できます。前日の営業活動を踏まえて、今日の営業活動では新規でアポを3~4件程度取ろう、などの方針をすぐに決められるできるでしょう。
また経営層に報告を求められたときも、例えば「自社製品を導入した企業の売上アップ率」など具体的な数字もBIツールでは簡単に出せるので、資料の説得力も向上します。
ABC分析で商品や顧客をランク分けする
ABC分析は重点分析とも呼ばれており、顧客管理や販売管理の分野でよく使われる分析手法です。売上高などの任意の指標でABCの3段階に優先順位をつけ、各グループに対して施策を打ち出します。
このABC分析を行う際は、過去の膨大なデータを全て分析する必要があり、Excelなどで分析するには限界があるでしょう。BIツールでABC分析を行えば、全商品を過去数年間で売上が多い順に並べ替え、各グループに対してさらに分析をかけられます。
BIツールの使用はデータの一元管理が前提となっているため、スライシングやドリルダウンといった再集計が簡単にできます。分析完了後、グラフで視覚的にまとめるのも簡単です。
在庫回転率分析で在庫の過不足を減らす
在庫を持つ企業であれば、可能な限り在庫の過不足を減らし適正在庫を目指したいと考えているのではないでしょうか。商品ごとの適正在庫量を設定し、季節や担当者別に分類・管理するには多大な労力がかかります。しかし、BIツールを使えば、在庫回転率を自動で算出・可視化し、過不足の早期発見と改善が可能です。
在庫は日々変動し続けるものですが、BIツールでは最初に設定をしておけば毎日自動でデータ更新がされていきます。在庫管理は企業にとって経営状況にも影響を及ぼす大きな要因の一つですが、BIツールを活用することで効率よく在庫の過不足を減らせます。
企業に適したBIツールは異なります。「自社に合う製品を診断してから資料請求したい」、「どんな観点で選べばいいかわからない」という方向けの診断ページもご覧ください。
BIツールの導入手順
BIツール導入では、まず「何を改善したいか(課題)」を明確にし、それにあった機能や操作性を持つツールを選ぶことが重要です。無料トライアルを活用し、実際の運用シーンでの使い勝手を検証しましょう。最後は、他部門への共有・定着支援も忘れずに行いましょう。
ステップ1:現状課題の整理と目的の明確化
まずは、自社のどの業務に課題があるのかを洗い出し、BIツールを導入する目的を明確にします。例えば「売上レポートの作成に時間がかかる」、「経営層への報告資料がバラバラ」といった悩みを整理し、どのような業務改善を目指すのかを関係部門と共有することが重要です。目的が明確でないと、ツール選定や導入後の活用がうまくいかない原因になります。
ステップ2:ツール選定とトライアル利用
明確にした目的に沿って、必要な機能や操作性、予算にあったBIツールを選定します。選定の際は、複数の製品を比較検討し、無料トライアルを活用して実際の業務データを用いた検証を行いましょう。操作性やグラフの見やすさ、社内システムとの連携のしやすさなども重要な判断ポイントです。可能であれば、実際に使う現場の担当者にも体験してもらいましょう。
ステップ3:部門横断での展開と定着支援
導入後は、特定の部門だけでなく、全社的に活用されるように展開を進める必要があります。そのためには、マニュアルの整備や操作研修の実施、データの整合性ルールの策定など、定着に向けた仕組みづくりが不可欠です。また、現場からのフィードバックを取り入れながら継続的に改善することで、BIツールの活用効果を最大化できます。
以下の記事では、BIツール導入時における要件定義を解説しているので、あわせてご覧ください。
BIツール導入事例も参考にしよう
BIツールの使い方を考えるときは、実際の導入事例を参考にするとよいでしょう。自社と似たような課題を抱える企業もあるかもしれません。
データの分析に要する時間が20分の1に/日本酒類販売株式会社 様
日本酒類販売株式会社では、データの抽出や分析に多くの時間を必要とする現状を課題と認識していました。既に自社でDWH(データウェアハウス)などを整備し、誰でもデータを見られる仕組みを構築していたものの、必要なデータを抽出するために半日以上かかるケースもあったのです。
そこで、同社では大量のデータを簡単に分析できるBIツール「Yellowfin」を導入することにしました。BIツールの導入によって、データの抽出や検索に要する時間を大幅に短縮でき、以前は1日かけても抽出しきれなかったデータが30分で抽出可能となったのです。特殊な請求書作成などの業務も、1件につき1時間以上の削減ができました。
参考:導入事例:BIツール Yellowfin(日本酒類販売株式会社)|ITトレンド
新旧混在する大量データの一元化と迅速な把握を実現/ライオン株式会社 様
ライオン株式会社では、新旧のシステムが混在しているという課題を抱えていました。自社内でもオープン系のダウンサイジングに取り組んだが、営業系・事業部系・商品企画などが使用する「マーケティング活用支援システム」は、スリム化を経てもなお100以上の画面数がある状態だったのです。そのため、データ分析をするには個別にダウンロードし、データをExcelに集約してから整形を加える手間に時間を要していた。
「MicroStrategy」を導入したことで、画面数を大幅に削減。旧来のメインフレームから使い勝手は大きく変わったものの、今まで使い慣れたExcel操作と違和感なく直観的な操作ができ、現場・開発側もモチベーションがあがる好循環ができました。
参考:導入事例:BIツール MicroStrategy(ライオン株式会社)|ITトレンド
BIツールを活用し課題を削減しよう
ここまで、BIツールの機能や導入手順、効果的な使い方について紹介してきました。
まずは自社の業務のどこに無駄があるかを見直し、BIツールで改善できるポイントを明確にすることが重要です。そのうえで、気になる製品の資料を取り寄せたり、ベンダーから話を聞いたりしながら、自社に最適なツールを選定していきましょう。
具体的なBIツール製品については、以下の記事で一覧比較が可能です。導入の第一歩として、自社にあったツールを見つけるヒントを得られるはずです。