BIツール導入時における要件定義の失敗例
BIツールを導入する際の要件定義に失敗する例は少なくありません。ここでは2つの失敗例を紹介します。
- ■基幹システムと連携できなかった例
- ある企業は、基幹システムのリプレイスとデータウェアハウスの導入を同時に進行していました。ところが、いざデータウェアハウスを導入してみると、基幹システムの一部のデータと連携できないことが判明しました。データウェアハウスに求められる機能や特徴を、IT部門の担当者が充分に理解していないのが原因だったといいます。
- ■IT部門に要件定義を任せきりにした例
- ある企業は、ユーザー部門がIT部門にBIツールの要件定義を一任していました。本来の業務に加え、BIツールの導入プロジェクトにまで労力を割く余裕が無かったためです。IT部門はユーザー部門から提供された資料を基に要件定義を行いました。しかし、結局ユーザー部門が望むような仕上がりにはならず、使いづらいツールになったといいます。
失敗を避けるためにも、他社の導入事例を確認しておくことをおすすめします。

BIツール導入の流れと成功に導くポイント
BIツール導入を成功させるには、目的の明確化からツール選定、社内展開、定着支援まで一連のプロセスを段階的に進めることが重要です。ここでは、BIツール導入の基本的な流れと、失敗を防ぎ成功に導くためのポイントをわかりやすく解説します。
- 1.導入目的の明確化
- まずは「なぜBIツールを導入するのか」を明確にします。売上分析や経営判断の迅速化、業務効率化など、目的を明確にすることで、以降の要件定義やツール選定がブレずに進みます。部門ごとの目的が異なる場合は、共通目標と部門別目標の両方を整理しておきましょう。
- 2.要件定義と現状把握
- 現行の業務フローや既存システムのデータ構造を正確に把握したうえで、「どのデータをどのように分析したいのか」を明文化します。IT部門とユーザー部門の連携が不可欠であり、コミュニケーション不足による要件のズレが失敗につながることもあるため、ワークショップやヒアリングを丁寧に行うことがポイントです。
- 3.ベンダー選定とPoC
- 要件に合致したBIツールを選定するために、複数の製品を比較検討します。可能であればPoC(概念実証)を実施し、自社データでツールの操作性や分析精度を確認します。ツールの機能だけでなく、ベンダーのサポート体制や将来的な拡張性も評価基準に含めましょう。
- 4.社内展開とトレーニング
- ツールを導入しただけでは効果は得られません。利用部門に向けた説明会やハンズオン研修を実施し、ユーザーがBIツールを使いこなせるように支援します。また、部門間での情報共有ルールやレポートフォーマットの標準化も検討しましょう。
- 5.利用定着と評価改善
- 運用フェーズでは、活用状況のモニタリングと定期的なフィードバックが重要です。アクセスログの分析やユーザーアンケートを通じて課題を洗い出し、改善を重ねることで定着率を高めていきます。KPIの達成度も評価指標として活用しましょう。
導入の流れやポイントを把握したら、次は自社にあったBIツールを見つける段階です。主要なBIツールを比較した以下の記事もあわせてご覧ください。
BIツール導入時における要件定義のステップ
BIツールを導入する際の要件定義はどのように進めれば良いのでしょうか。3つのステップに分けて見ていきましょう。
1.分析対象・情報の明確化
BIツールは情報を分析し、それを行動につなげるためのツールです。したがって、まずはどのような情報を分析するのかを明らかにしましょう。
このとき、分析対象はユーザーの目線で明らかにする必要があります。IT部門は、ユーザー部門に日々の業務から分析したい情報を洗い出してもらいましょう。
また、その際には「BIツールの導入により何を改善したいのか」を考えることが重要です。例えば、売上を高めたいのであれば、分析対象は売上金額や売上数量などになるでしょう。
2.切り口・数値の設定
続いて、情報を分析する切り口と、分析対象である数値を定めます。例えば、売上を商品が売れた時期別に分析したいのであれば「年」や「月」が切り口です。そして、このときの数値は「売上金額」となります。
そして、切り口や数値を分類しましょう。例えば、切り口の「年」や「月」は同じ「時間」の次元として分類可能です。一方、数値は「売上金額」「売上数量」などを同じ「売上実績」として分類できます。逆に、「売上予測」は「売上金額」や「売上数量」とは分析の切り口などが異なるため、同じものとして分類できません。
IT部門はこうした分類を基にモデルの草案を作りましょう。そして、それを基にユーザーにヒアリングを行い、意見を擦り合わせます。
3.データ取得先の決定
最後に、分析したいデータをどこから得るのかを定めます。IT部門は、BIツールの導入によって分析したい対象やその切り口と、既存システムとの対応について確認しましょう。
もっとも理想的なのは、ETLやDWHといったシステムとBIツールでデータを全面的に統合できることです。これらを導入済みの場合だけでなく、これから導入する予定がある場合もBIツールとの連携が可能かどうかよく考えなければなりません。
BIツール導入時における要件定義のポイント
BI導入時に完璧な仕様を目指そうとする企業は少なくありません。しかし、こうした完璧主義は失敗を招く要因になります。なぜなら、完璧がどのような状態であるかは、ビジネス環境の変遷に伴ってすぐに変化するからです。
そのため、BIツールを導入する際、必要最低限の機能を盛り込めたらまずは実際に導入してみましょう。一度導入してその効果をユーザーに実感してもらえれば、スムーズに社内に定着させられるでしょう。要望が出ればさらに付け加えて行けばよいだけです。初めにどれほど完璧にしても、こういった新しい要望への対応は避けられません。
さらに、自社だけで要件定義を行うのが難しい場合は、コンサルタントから支援を受ける手もあります。単に要件定義のサポートが受けられるだけでなく、目的の設定や導入後の運用までの支援を行ってくれるサービスもあります。
以下の記事では、ツール導入における失敗例と原因を紹介しています。導入を成功させるために一読ください。
BIツールの要件定義を正しく行い、導入を成功させよう
BIツールの要件定義では、「現場ニーズの把握不足」や「完璧を求めすぎる姿勢」が失敗の原因になりがちです。適切な進め方を理解したうえで、まずは必要最低限の要件から導入をはじめ、段階的に精度を高めていくのが成功のカギです。
また、自社内だけでの定義が難しい場合は、外部の支援サービスやコンサルタントの活用も有効です。スムーズに導入を進めるために、信頼できるBIツールを見極めることが重要になります。
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