人事評価における目標設定とは
人事評価における目標設定は、公平な人事評価をするために欠かせません。個々に設定された目標への取り組み方や達成度合いを指標として、人事評価が実施されます。
目指すべきゴールが可視化されるため、従業員はモチベーションを維持しながら業務に臨めます。目標達成に必要なスキル習得を加速させるなどのメリットもあるでしょう。結果として、企業全体の生産性の向上にもつながります。
目標設定の手法「SMART」
適切な目標を設定するには、企業の目標や従業員が各自に求められる役割を理解する必要があります。また、具体性のない曖昧な目標や現実離れした高すぎる目標では意味がないでしょう。ここからは、明確かつ現実的な目標設定に役立つフレームワーク「SMART」について解説します。
目標設定における5つのポイントの頭文字からSMARTと呼ばれ、具体的には以下の内容を指します。
- ■Specific:具体的な目標
- ほかの人が見てもわかる明確な目標を立てる。「5W1H」を組み込むとなおよい。
- ■Measurable:測定可能な目標
- 達成の程度が可視化できるよう、極力定量化できる目標にする。
- ■Achievable:達成可能な目標
- 現実的に達成可能な範囲で目標を設定する。
- ■Related:企業の目標に関連した目標
- 目標を企業理念やビジョンと関連づける。
- ■Time-bound:期限などの時間制約
- 目標達成を引き伸ばさずに、いつまでに行うか期限を決める。
「SMART」の5つの要素
目標設定の際には、上記の要素すべてが落とし込めているか、確認しましょう。また目標設定後は、達成に向けてどのように行動するかをスケジュールに組み込むことも重要です。
なお、人事評価を支援するITツールとして「人事評価システム」があります。人事評価システムの目標・進捗管理機能などを活用することで、目標達成に至るプロセスや達成状況の確認、マネジメントのサポートが期待できます。興味のある方は、ぜひ以下の最新ランキングページもご確認ください。
目標設定例と人事評価
一般企業に共通する人事評価での目標設定例を解説します。職種によっては、目標を数値化できる場合とできない場合があるでしょう。各ケース別に紹介するので、最適な目標設定に役立ててください。
数値目標を立てられる場合
目標を数値化できる場合は、従業員と話し合い、具体的な数字を目標に盛り込みましょう。具体的な数字を示すことで説得力が増し、本人も納得のいく目標が設定できます。「新規顧客を◯件獲得する」「アポイントを◯件獲得する」など、本人の努力により実行可能な範囲での目標を設定しましょう。
また目標の達成によって得られるスキルや経験など、数値以外の目標を盛り込むこともおすすめです。
数値目標が立てられない場合
具体的な数値目標が立てられない場合は、従業員が目標を達成した場合に「形」として残せるものを目標に設定しましょう。例えば、「◯◯の効率化を図るため、◯◯のマニュアルを作成する」など、業務における改善策を挙げ、行動内容を明確に示すことで、具体性のある目標が実現します。
加えて自己啓発や業務に臨む姿勢なども目標に盛り込みましょう。
自己啓発で目標を作る場合
自己啓発を目標に設定する場合もあります。「セミナーに自発的に参加する」「〇〇取得のために通信教育受講」など、自己啓発やスキルアップを図っている点を従業員の目標に盛り込むのもよいでしょう。
人事評価における目標設定例(職種別)
実際に目標を設定する際は、職種ごとに業務内容が異なるため、目標の立て方も変える必要があります。ここからは職種別の目標設定の方法と目標例を解説します。
製造業
製造業においては各従業員が果たすべき役割を基に、その役割での貢献度を目標に設定します。ラインごとの業績や成果項目を用い、目標の数値化が可能です。「◯◯商品のコストダウンを◯%図る」など、数字でゴールを明確化すれば本人は努力や工夫をしやすくなるでしょう。
エンジニア・技術職
ITエンジニアやメーカー・建築系の技術職では、目標達成のため具体的にどのような行動をとるのかを明確に示します。数値化できる項目があれば数値化し、数値化が難しければ具体的な期日や業務内容を盛り込みましょう。例えば新製品開発であれば、「いつまでに◯◯を、どの程度の状態にもっていく」など、具体的に記入します。
数値化が難しい業種ですが、できる限り数値化できる箇所は数字を記載します。
公務員
国家公務員や地方公務員は、年1回の能力評価と年2回の業績評価で人事評価が行われます。
管理職が設定した組織目標を、部下職員ごとの職位や役割分担に応じた目標に細分化し、具体的な目標へと落とし込みましょう。例えば、「◯◯制度の再検討にあたり、必要性の低い規制を廃止し、ニーズを基にした改善策を検討する。期末には数字で示せるようにする」など、具体的な事案を盛り込んだ目標を決定します。期末に目標達成状況を勘案し、人事評価を行います。
営業職
営業職の目標には、売上目標や契約本数などの具体的な数値が欠かせません。「◯月までにアポイントを◯本とり、前年比◯%の売上を上げる」など、数値だけではなく、目標達成に至るまでのプロセスや期限などを目標に盛り込みましょう。数値の設定は、部署全体の目標との擦り合わせを行い、前期より高い数値を掲げます。
人事
人材採用の目標も比較的に数値化しやすく、応募者数・面接設定率・内定率・採用コストなど、さまざまな指標が用いられます。「面接連絡のメール文面を見直し面接設定率を◯◯%から◯◯%に引き上げる」「オンラインツールを活用しスカウトメールの送信件数を前年の1.5倍にする」など、具体的な行動に落とし込みましょう。
事務職
事務職では目標の数値化が難しいケースも多く、日々の業務改善など成果が見えやすい目標を設定するのがよいでしょう。「書類の保管棚を整理し、スペースを◯割空ける」「ダブルチェックを必ず行い毎月の計算ミスを0にする」など、できるだけ具体的な数字を盛り込んだ目標がおすすめです。
総務・経理などの管理部門に所属する事務の場合、経費の削減や業務の効率化などが数値化しやすいです。なお、業務における改善点は大掛かりなものにしすぎず期間内に達成可能な範囲で設定しましょう。
総務
総務部の場合、備品管理や問い合わせ対応などが特に数値化しやすいでしょう。「消耗品の購入先を見直し消耗品費用を◯%削減させる」「社内FAQを充実させ、問い合わせ件数を◯割減少させる」などの目標例が挙げられます。
経理
社内の入出金管理を担い、正確さが求められる経理部門においては、コストカットやミス防止につながる取り組みを目標にするのもよいでしょう。「コピー紙の使用量を◯割削減させる」「請求書発行のダブルチェックやリスト作成によりミス率を◯%以内におさえる」など、具体的な数値に落とし込みます。
営業サポート
生産性向上につながる事務作業の効率化や、営業活動のサポート内容を具体的に示しましょう。例えば「ピボットテーブルの使い方を勉強して、営業資料の作成時間を◯時間短縮させる」「勉強会に参加し製品理解を深め、問い合わせ対応できる項目を〇件増やす」などです。
看護師
看護師の目標設定は属する科や勤続年数によって異なります。
ほかの職種と同様、数値化できる目標は数字で示し、所属に応じた具体的な目標設定を行いましょう。数字を盛り込みにくい場合は「医療セミナーへの参加」「患者さんとのコミュニケーションを密にする」など、具体的な活動内容を示します。勤続年数により所有する医療スキルも違うため、職員のスキルにあわせた目標設定が必要です。
消防士
消防士の人事評価は、能力評価と業績評価によって行われます。能力評価ではあらかじめ設定された項目により評価され、業績評価は職員が設定した目標の達成度や取り組み姿勢により評価されます。
消防士の目標は、現場や訓練での活動を掘り下げて設定するのがよいでしょう。例えば研修への参加や地域住民との連携があげられます。「現場での判断ミス・器材の操作ミスを0にする」「訓練大会で入賞を目指す」など、具体例をあげて目標を設定します。
人事評価のための目標を効率的に管理するには人事評価システムの導入が便利です。製品の比較表で目標管理機能の有無や価格がひと目でわかるのでぜひ参考にしてください。
目標設定のプロセス
人事評価の目標設定は、ただ目標を決めるだけではなく、組織方針とのすり合わせや達成基準の明確化、進捗確認まで含めて進めることが大切です。適切なプロセスで目標を設定すれば、従業員本人の納得感が高まり、人事評価の公平性や育成効果も高まりやすくなります。ここでは、目標設定を進める基本的な流れを解説します。
1.企業や部門の方針を確認する
まずは、会社全体や所属部門がどのような目標を掲げているかを確認します。個人目標は組織目標とつながっていることが重要であり、方向性がずれていると、本人が努力しても評価につながりにくくなるためです。たとえば、売上拡大を重視する部門であれば業績への貢献、業務効率化を重視する部門であれば改善活動や標準化などを意識して目標を設計します。
2.担当業務と役割を整理する
次に、従業員が担っている業務内容や期待される役割を整理します。役割が曖昧なまま目標を立てると、評価の基準がぶれやすくなるためです。日常業務の中で何を求められているか、どの範囲まで責任を持つのかを確認し、担当業務に合った目標に落とし込みましょう。例えば、営業であれば売上や商談数、事務職であれば正確性や業務改善などが整理の起点になります。
3.目標項目を洗い出す
方針と役割を確認したら、具体的な目標項目を洗い出します。このときは、「改善したいこと」と「維持したいこと」に分けて考えると整理しやすいでしょう。課題の解消を目的とした目標だけでなく、すでにできていることを安定して継続する目標も、人事評価では重要な要素です。たとえば、納期短縮、ミス削減、対応品質の維持、社内連携の強化などが候補になります。
4.達成基準と期限を明確にする
目標項目が決まったら、達成したといえる基準を明確にします。人事評価では、達成・未達を判断できる状態にしておくことが重要です。数値化できる場合は件数や割合、金額などを用い、数値化が難しい場合は完了条件や品質基準、行動基準を定めましょう。あわせて「いつまでに達成するか」という期限も設定し、曖昧なまま運用しないようにします。
5.上司とすり合わせて確定する
目標は本人だけで決めるのではなく、上司と確認しながら確定することが大切です。会社や部門の期待と本人の認識にずれがあると、評価時の納得感が下がるためです。業務負荷や難易度、優先順位を踏まえて、達成可能でありながら成長にもつながる内容になっているかを確認しましょう。必要に応じて、目標数や水準を調整することも重要です。
6.進捗確認と振り返りを行う
目標は設定して終わりではありません。期中に進捗確認を行い、必要に応じて行動計画や優先順位を見直すことで、達成につながりやすくなります。また、期末には結果だけでなく、取り組みの過程や工夫した点も振り返りましょう。達成度とプロセスの両面を確認することで、次回の目標設定や人材育成にもつなげやすくなります。
人事評価における目標の重要性
人事評価において目標設定は重要です。なぜならば、目標に対する達成度合いやプロセスは、人事評価の判断材料として利用されるためです。従業員の処遇や人員配置にも大きく影響を与えます。
また目標設定により、企業と従業員間で進むべき方向性にズレが生じずにすむ利点もあるでしょう。ここからは、目標設定の重要性について解説します。
人事評価の材料となる
人事評価で目標設定が重要な一番の理由は、目標の達成率や過程の業務姿勢などが、従業員それぞれの評価材料に活用できるためです。特に目標の達成度合いは客観的な数値が出せるため、人事評価の根拠として従業員も納得しやすいです。そのためにも目標は、上司と相談しながら自身で設定する必要があります。
適切なポジションの獲得につながる
従業員が日々努力し目標を成し遂げた場合、業務姿勢や達成度を評価材料として昇格や人事異動を決定します。従業員は目標を達成できれば適切なポジションの獲得につなげられるでしょう。管理職側も従業員の強みや特性、スキルや経験を活かした適材適所への人員配置が可能です。
企業と従業員の関係性向上に役立つ
企業のビジョンを理解したうえで同じ方向性の個人目標を立てれば、企業と従業員が一丸となって達成に向けて努力できます。相互理解の促進やパートナーシップの向上につながるでしょう。そのためには目標設定だけでなく、目標管理の過程における適切なフォローが重要です。
人事評価の目標設定におけるよくある質問(FAQ)
人事評価における目標設定については、「どのように設定すればよいのか」「評価はどのように行うのか」など、実務で悩むケースも少なくありません。ここでは、目標設定に関するよくある質問とその考え方をまとめました。
人事評価の目標は何個くらい設定するのが適切ですか
目標は、実際に管理・評価できる範囲の数に絞ることが重要です。目標数が多すぎると優先順位が曖昧になり、進捗確認や評価が形だけになりやすくなります。多くの企業では、主要業務に関する目標を中心に3〜5項目程度に整理し、数値目標と行動目標を組み合わせて設定するケースが一般的です。
数値化できない職種でも人事評価はできますか
数値化が難しい職種でも人事評価は可能です。件数や売上のような数値がなくても、達成条件や成果物、行動基準を設定することで評価の判断材料を作れます。例えば、「業務マニュアルの作成」「業務改善の提案」「ミス削減の取り組み」など、成果として確認できる行動や結果を目標として設定する方法があります。
目標設定はどのタイミングで行うべきですか
多くの企業では、評価期間の開始時に目標を設定します。期間の最初に目標を定めておくことで、評価期間中の行動や成果を客観的に確認しやすくなるためです。一般的には、年度や半期の開始時に上司との面談を行い、組織目標や担当業務を踏まえて個人目標を設定します。
目標設定後のフォローは必要ですか
目標設定後も、期中のフォローや進捗確認が重要です。目標は設定して終わりではなく、進捗状況を確認しながら行動を調整することで達成につながりやすくなります。定期的な面談や進捗共有を行い、課題や改善点を話し合うことで、目標達成の可能性を高められます。
人事評価システムを導入するメリットは何ですか
人事評価システムを導入すると、目標管理や評価業務を効率化できます。目標設定・進捗管理・評価記録などを一元管理できるため、管理者と従業員の双方にとって運用負担の軽減が期待できます。また、評価プロセスが可視化されることで、評価の透明性や公平性の向上にもつながります。
適切な目標設定で企業全体の利益向上を叶えよう
人事評価の目標を作るうえで、最も重要なポイントは「納得できる」ことです。部下が納得できない内容であれば、目標達成やパフォーマンスの向上は期待できません。一方的なアドバイスを押しつけるのではなく、部下の意見を聞き、モチベーション向上につながる目標を設定しましょう。



