IT導入補助金の概要とスケジュール
IT導入補助金は、事業者が抱える課題やニーズにあわせてITツールを導入する経費の一部を補助する制度です。まずは、どのような申請枠があるのか、最新のスケジュールとあわせて確認しましょう。
対象となる申請枠と補助額
IT導入補助金には複数の申請枠があり、導入するITツールの種類や目的によって分類されています。それぞれの枠で補助額の上限や補助率が異なりますので、自社の目的に合った枠を選ぶことが重要です。主な申請枠の概要は以下の通りです。
| 申請枠 | 主な目的 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 労働生産性の向上に資するITツールの導入 | 1/2以内 | 申請類型により変動 |
| 複数社連携 IT導入枠 (複数社連携IT導入類型) | 複数の中小企業が共同でITツールを導入し、生産性向上や業務効率化を図る取り組み | 最大2/3以内 | 補助額は連携体全体の規模や導入内容により変動 |
| インボイス枠 | インボイス制度に対応した会計ソフトや受発注ソフト等の導入 | 類型により最大4/5以内 | 最大350万円 |
| セキュリティ対策推進枠 | サイバー攻撃のリスク低減を目的としたセキュリティ対策ツールの導入 | 1/2以内 | 最大100万円 |
※上記は概要です。申請類型や従業員規模によって補助額・補助率は変動します。
参考:サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2025』の概要|中小企業庁
2025年の公募スケジュール・締切
IT導入補助金は、年間を通じて複数回の締切が設けられています。申請を検討している事業者は、自社のITツール導入計画にあわせて、どの締切回に申請するかを決定する必要があります。
公募スケジュールは公式サイトで随時更新されるため、定期的に確認することが重要です。締切直前はIT導入支援事業者の対応が混み合う可能性もあるため、余裕をもったスケジュールで準備を進めることをおすすめします。
なお、IT導入補助金2025の最終締切日(第8次締切)は、2026年1月7日(水)17:00までとなっています。
IT導入補助金の申請から交付までの全体フロー
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際の経費の一部を補助する制度です。申請手続きは複雑に思われがちですが、全体の流れを把握すればスムーズに進められます。大まかな流れは以下の4つのステップに分かれます。
- 1:事前準備
- 2:IT導入支援事業者・ITツールの選定
- 3:交付申請
- 4:交付決定・補助金請求
IT導入補助金は、事業者単独では申請できず、必ず「IT導入支援事業者」と連携して手続きを進める点が大きな特徴です。まずは全体像を理解し、計画的に準備を始めましょう。
参考:新規申請・手続きフロー詳細(中小企業・小規模事業者等のみなさまの手続き)|IT導入補助金2025
1:申請の準備・要件確認
交付申請に進む前に、いくつかの必須要件を満たしておく必要があります。これらの準備には時間がかかる場合があるため、早めに着手しましょう。
GビズIDプライムアカウントの取得(必須)
IT導入補助金の電子申請には、「GビズDプライム」アカウントが必須です。GビズIDは、複数の行政サービスに1つのアカウントでログインできる認証システムです。
アカウントの発行には、申請書類を郵送してから2週間程度の時間がかかる場合があります。まだ取得していない場合は、最初にこの手続きを済ませておきましょう。
SECURITY ACTIONの自己宣言
SECURITY ACTIONは、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。IT導入補助金の申請要件として、「一つ星」または「二つ星」のいずれかを宣言している必要があります。
公式サイトで宣言手続きを行い、自己宣言IDを取得してください。手続き自体は比較的簡単に行えます。
みらデジ経営チェック
「みらデジ経営チェック」は、自社の経営課題やデジタル化の進捗状況を可視化するための診断ツールです。交付申請前に、この経営チェックを実施しておく必要があります。
GビズIDでログインし、いくつかの質問に回答することで診断が完了します。診断結果は、後の申請手続きでも活用されます。
2:IT導入支援事業者・ITツールの選定
事前準備と並行して、補助金の対象となるITツールと、その導入を支援してくれる「IT導入支援事業者」を選定します。パートナーとなる事業者選びは、採択の可否を左右する重要なプロセスです。
なお、IT導入支援事業者や補助金対象として登録されているITツールは、公式の「IT導入補助金特設サイト」で検索できます。業種や目的別に比較できるため、事前リサーチやパートナー選定に活用するとスムーズです。
自社の課題に合ったツールの選び方
まずは自社が抱える課題を明確にすることが重要です。例えば、「経理業務を効率化したい」「顧客管理を強化したい」「インボイス制度に対応したい」など、具体的な目的を洗い出しましょう。
その課題を解決できるITツールは何かを検討し、複数のツールを比較します。IT導入補助金の対象として登録されているツールの中から、自社のニーズに最も合うものを選びます。
信頼できる支援事業者の探し方
導入したいITツールが決まったら、そのツールを提供するIT導入支援事業者へ連絡します。支援事業者は、交付申請のサポートから導入後のフォローまで、一貫して事業者を支援するパートナーです。過去の採択実績やサポート体制の充実度などを確認し、信頼できる事業者を選びましょう。
3:交付申請(マイページ作成・書類提出)
IT導入支援事業者と共同で事業計画を作成し、申請手続きを進めます。事業者から申請マイページへの招待を受けたら、必要情報を入力し、履歴事項全部証明書などの必要書類を準備して添付します。
すべての入力と書類提出が完了したら、IT導入支援事業者が内容を確認し、事務局へ交付申請書を提出します。申請内容に不備がないよう、事業者と念入りに確認作業を行いましょう。
4:交付決定
交付申請が無事に採択されると「交付決定」の通知が届きます。その後、補助金を受け取るまでには、事業の実施と報告の手続きが必要です。
ITツールの発注・支払い
交付決定の通知を受け取る前に、ITツールの契約や支払いを行ってはいけません。交付決定日より前に行った発注・契約・支払いは補助金の対象外となるため、必ず通知を待ってから事業を開始してください。IT導入支援事業者と契約を結び、ツールの導入費用を全額支払います。
事業実績報告と補助金の入金
ITツールの導入と支払いが完了したら、実際に事業を行った証拠として、契約書や請求書、支払い証明などをまとめて事業実績報告を行います。事務局による審査を経て補助金額が確定し、その後指定の口座に補助金が振り込まれます。補助金は後払いであるため、一時的にITツール導入費用の全額を立て替える必要がある点に注意が必要です。
事業実施効果報告
補助金の入金後も、定められた期間内に「事業実施効果報告」を提出する必要があります。これは、ITツール導入によって生産性がどの程度向上したかを報告する手続きです。報告を怠ると補助金の返還を求められる場合があるため、忘れずに行いましょう。
まとめ
IT導入補助金の申請について、流れを解説しました。一見手続きが多く見えますが、一つ一つの作業はすぐに終わるものも少なくありません。大事なことは、どんなITツールをどんな目的で導入したいのかという目的の整理です。まずはいろいろな製品を見て、自社の課題を整理してみることもおすすめです。


