手形割引とは？仕組みと換金の流れ
手形割引とは、企業が受け取った約束手形を支払期日前に金融機関へ持ち込み、割引料（手数料）を差し引いた金額で換金（現金化）する資金調達方法です。資金繰りを改善する手段として、中小企業でも広く利用されています。
手形をどう換金する？
手形割引の換金は、以下の流れで行われます。
- 1. 売掛先から受け取った約束手形を準備
- 2. 銀行や信用金庫などの金融機関に提出
- 3. 審査通過後、割引料を差し引いた金額が口座に入金される
換金時には、手形のほかに「登記簿謄本」や「直近の決算書類」などが必要になることもあります。事前に必要書類を確認しておきましょう。
手数料や諸費用の内訳とは？
手形割引にかかる主な費用は次の通りです。
- ●割引料（手形金額×年率×割引期間）
- ●印紙税（場合により）
- ●事務手数料など（金融機関による）
割引料の年率や計算方式は金融機関ごとに異なるため、複数社の条件を比較することが重要です。
換金時の注意点とリスク
手形割引には以下のようなリスクもともないます。
- ●不渡りリスク：売掛先が期日に支払えないと、自社に支払義務が発生（償還請求あり）
- ●審査ハードル：手形の振出人（売掛先）の信用が重要
- ●即時資金化には不向き：審査完了まで数日かかることも
こうしたリスクを把握し、自社の資金繰りや信用状況に応じた慎重な利用が必要です。
ファクタリングと手形割引の仕組みの違いとは？
ファクタリングと手形割引はどちらも売掛債権ですが、現金化する対象に違いがあります。ファクタリングは売掛金を、手形割引は受取手形を現金化します。
売掛金とは、商品やサービスを販売した後に発生する「将来支払われる予定の代金」のことです。法的にはあくまで「約束」に過ぎず、回収不能となるケースも少なくありません。
一方、受取手形には商法上の裏付けがあり、期日までに支払わなければ社会的信用を失うリスクが高いため、債務者も誠実に支払う傾向が強いといえます。
比較表で見る両者の違い
手形割引とファクタリングの主な違いを「対象債権」、「審査対象」、「償還義務」などの観点からわかりやすく整理しました。
| 比較項目 | 手形割引 | ファクタリング |
|---|---|---|
| 対象債権 | 約束手形 | 売掛債権（請求書） |
| 審査対象 | 手形の振出人 | 売掛先の信用力 |
| 償還義務 | あり（企業が支払責任） | なし（ノンリコース型） |
| 資金化スピード | 数営業日 | 最短即日も可能 |
ファクタリングと手形割引は併用はできる？
企業によっては、「手形取引先には手形割引」、「請求書ベースの売掛にはファクタリング」というように使い分けることで、より柔軟な資金調達が可能になります。特に資金繰りが逼迫する時期や、複数の売掛債権がある企業では、併用することでリスク分散と資金効率の最適化が期待できます。
ファクタリングと手形割引の活用メリットは？
ファクタリングと手形割引には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ファクタリング：リスクヘッジを取れる
ファクタリングの多くは償還求償権がないため、万が一売掛先が支払不能になっても、自社に返済義務が発生せず、リスク回避につながります。償還求償権とは、債務不履行になった場合に、債権の購入者が販売者に債権の買戻しを求める権利のことです。
償還求償権がないため、万が一債務不履行になっても、ファクタリング利用者の利益が守られます。回収不能となった場合でも売却代金は返還不要のため、安定的な資金調達手段として有効です。ただし、稀に償還求償権を設定しているファクタリング業者もいるので、事前に確認しましょう。
一方、受取手形は償還求償権があるため、債務不履行になった場合は、手形割引した企業は売却先の金融機関に対し、相応の補償をしなくてはなりません。
ファクタリング：決算書の見栄えをよくできる
ファクタリングは、手形と異なり、貸借対照表で会計処理する必要がありません。売掛金の減少が現金の増加となるため、資産の変動がなくなり、決算書の見栄えもよくなります。
手形割引の場合は、金融機関からの借入と見なされるため、資産のほかに負債も増加します。貸借対照表上では借入金が増えるため、決算書の見栄えも悪くなるのです。融資元が資産の効率性を重視する場合、印象が悪くなるため、審査に通るのは難しくなるでしょう。
手形割引：手数料を抑えられる
手形割引には償還求償権があるため、手形割引の手数料は低くなっています。手数料の目安は、次の通りです。
- ●手形割引：１.５%～３.５%（銀行の場合）
- ●２社間ファクタリング：20％～30％
- ●３社間ファクタリング：１％～５％
３社間ファクタリングは、「ファクタリング業者」、「利用者」、「売掛先」の３者で売掛金を売買します。そのため２社間ファクタリングより信用度が高く、手数料も大幅に低いです。２社間ファクタリングは、回収に失敗すると業者が責任を負うため、手数料も高くなっています。
上記の傾向から、売掛金は、請求書ではなく手形として受け取った方が、現金化時の手数料を抑えやすいといえるでしょう。ただし手形割引は、融資という枠組みであり、焦げ付く可能性もあるので注意が必要です。また手形割引業者に依頼すると、相場より高い手数料を請求されるケースもあります。
ファクタリングと手形割引の違いを知り、適切な資金調達を！
ファクタリングと手形割引の違いは、ファクタリングは売掛金を、手形割引は受取手形を現金化することです。それぞれメリット・デメリットあるので、状況に応じて使い分けましょう。
ファクタリングは、リスクヘッジを取れ、決算書の見栄えをよくできますが、手数料が高めです。手形割引は、手数料を抑えられますが、焦げ付いた場合に補償する責任があります。
ファクタリングと手形割引の違いを知り、適切な資金調達を行いましょう。
