ETLとビッグデータの関係性は?
まずは、ETLとビッグデータの関係を見ていきましょう。大量かつ多様なビッグデータを活用するには、形式を統一し、分析に適した状態へと変換する必要があります。そこで重要になるのが「ETL処理」です。
ビッグデータは分析しやすいよう加工しなければならない
社内の各部門や業務システムには、それぞれ独自の形式でデータが保存されています。フォーマットが異なるままでは一元的な分析が難しく、データ形式ごとに別々に処理しなければならず、非常に非効率です。
そのため、ビッグデータを活用するためには、各種データを共通形式に加工・統合する処理が不可欠です。従来であれば、個別にプログラムを開発して対応する必要がありましたが、ETLを使うことでこの負担を軽減できます。
ETL処理とは?~3つのステップでデータを整える~
ETL処理とは、Extract(抽出)・Transform(変換)・Load(格納)の3ステップでデータを整える一連の処理を指します。
- ●抽出(Extract):各システムや外部データソースから必要なデータを取り出す工程
- ●変換(Transform):データ形式を統一したり、不要データを除外・加工する工程
- ●格納(Load):整えたデータをデータウェアハウス(DWH)などに取り込み、分析しやすい状態に保存
この一連の処理を自動化することで、膨大なデータを短時間で高精度に処理でき、業務の効率化とデータ活用の高度化が実現します。
ETLツールはビッグデータ処理を効率化できる
ETLツールを導入すれば、異なるシステムからのデータ抽出や、複雑な変換処理を自動化できます。従来であれば、データソースごとに抽出・変換用のプログラムを開発し、仕様変更にも都度対応しなければなりませんでした。
また、手作業によるデータ加工はミスの温床となり、データの信頼性を損なうリスクがあります。ETLならデータ品質を担保しながら、確実な変換・格納が可能です。
このように、ETL処理を導入することで、ビッグデータ分析における前処理を自動化・効率化し、意思決定のスピードと精度を高められます。ETLの意味や基本的な仕組み、機能などについては、以下の記事をご覧ください。
ETLとELTの違いは?
データ活用の文脈で「ETL」と並んで注目される手法に「ELT」があります。両者は似た目的で使われますが、処理の流れや適した環境に違いがあります。ここでは、ETLとELTの違いを処理順・処理場所・求められる技術といった観点から詳しく見ていきましょう。
ETL:抽出・変換・格納の順に処理される
ETL(Extract・Transform・Load)は、「抽出 → 変換 → 格納」の順に処理を行います。例えば、社内の各システムからデータを抽出し、加工・変換したうえで、データウェアハウス(DWH)などに格納します。
この方式では、あらかじめデータ品質を整えた状態で格納できるため、信頼性の高い分析が可能です。ただし、変換処理には専用のエンジンやスクリプトが必要で、初期構築や保守にコストがかかることもあります。
ELT:抽出・格納・変換の順に処理される
ELT(Extract・Load・Transform)は、「抽出 → 格納 → 変換」の順で処理されます。まずはデータをそのままデータベースに格納し、その後データベース内で変換処理を行う方式です。
変換専用エンジンを必要とせず、SQLなどのデータベース言語で柔軟な処理ができるため、特にクラウドベースのDWH環境との相性がよく、高速かつスケーラブルな処理が可能です。
ただし、未加工のデータをそのまま格納するため、ストレージ容量を圧迫しやすく、DBにかかる負荷が高まるといった注意点もあります。
ETLとELTの違いを一覧で比較
ETLとELTの主な違いまとめを以下にまとめました。
比較項目 | ETL | ELT |
---|---|---|
処理順序 | 抽出 → 変換 → 格納 | 抽出 → 格納 → 変換 |
変換処理の場所 | DWHに格納前にツールで実施 | データベース内で実施 |
主な適用環境 | オンプレミス環境、既存業務系システム | クラウド環境、大量データ分析基盤 |
メリット | 事前にデータ品質を整備しやすい | 処理が高速・柔軟、エンジン不要 |
デメリット | 初期構築・保守に手間とコストがかかる | DBの負荷増大、ストレージ容量圧迫の懸念 |
このように、ETLとELTは処理方法だけでなく、最適な活用シーンも異なります。一般に、オンプレミス環境で業務システムが中心の企業ではETLが、クラウドを活用し、大量のデータ分析を重視する企業ではELTが選ばれる傾向があります。
自社のデータ量・システム環境・業務要件に応じて、どちらがより適しているかを見極めましょう。>ETLとELTの違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
ビッグデータの分析に向いているのは?
近年は、クラウド技術の進化や柔軟性の高さから、ビッグデータ活用にはELTが選ばれるケースが増えています。理由としては以下の2点が挙げられます。
1.ビッグデータの活用の幅がELTの方が広い
ETLでは、変換済みの整ったデータのみが保管されるため、誤入力などの「生データ」を活用したい分析には向いていません。
一方ELTなら、未加工の状態でデータベースに格納し、活用目的に応じて柔軟に変換処理ができるため、データ活用の幅が広がります。
2.クラウドのデータベースを利用しやすくなった
ELTではデータベースの容量と計算能力が求められます。しかし、クラウド基盤であれば必要な分だけリソースを拡張できるため、処理負荷を気にせず活用可能です。
ETLとELTの違いを理解しビッグデータを有効活用しよう
ビッグデータを活用するには、ETLやELTといった処理手法の違いを正しく理解し、自社の環境に合った手法を選ぶことが重要です。
ツールを使わずに手作業で多様なデータを処理すると、膨大な時間とコストがかかります。ETLやELTを活用すれば、抽出・変換・格納の工程を自動化でき、効率的な分析体制を構築できます。
クラウド環境の整備が進むなかで、ELTの導入はますます注目されていますが、既存環境や目的に応じてETLが適している場合もあるため、用途や要件を見極めた選定が大切です。
ETLとELTの違いを理解し、自社に最適なデータ処理体制を整備することで、ビッグデータの価値を最大限に引き出しましょう。