ADCの機能エラーが起きる場所と切り分け
ADCは複数の機能を1台で担うため、エラーの現れ方も機能ごとに異なります。まず機能別の傾向を押さえ、原因を切り分ける順番を決めておきましょう。
| 機能 | 起こり得るエラー | 最初に見る点 |
|---|---|---|
| 負荷分散 | 特定のサーバーに通信が偏る | 振り分けの方式とヘルスチェック |
| SSL/TLSオフロード | 暗号化通信の接続に失敗する | 証明書とプロトコルの設定 |
| WAF | 設定が反映されない、正常な通信が遮断される | 適用の操作とルールの動作モード |
| キャッシュ、圧縮 | 古い内容が表示される、表示が崩れる | 対象の設定と保持時間 |
機能ごとに現れるエラーの種類を知る
ADCは、ロードバランサの負荷分散に、暗号化通信の処理やWAFなどの機能を加えた、装置またはソフトウェアの製品です。機能が多いぶん、エラーも通信の振り分け、暗号化処理、攻撃の検査、保存と圧縮といった場面ごとに分かれます。製品によって挙動が異なる点にも注意が必要です。
上の表のように、どの機能で何が起きているのかを先に分類すると、確認の範囲を絞れます。複数の機能が同時に関わる場合もあるため、一つの機能だけで結論を出さないことが大切です。
製品と自社と連携先の三方向で見る
エラーの要因は、製品側、利用者側の設定や運用、連携先のサーバーやネットワークのいずれにもあり得ます。一つの要因に決めつけると、確認が遠回りになる場合があります。どこから確認するかを事前に決めておくと、調査の順序がぶれにくくなります。
製品の不具合が疑われるときは、提供会社の公開情報を確認します。設定の変更が原因なら社内の作業記録を、連携先が原因なら担当部門への確認を進めましょう。三方向で確認すると、調査の抜けを減らせます。
ログと変更履歴で原因をたどる
原因の切り分けには、エラーが起きた時刻と、その前後に行った設定変更の記録が役立ちます。ADCのログには、接続の失敗やサーバーの応答状況が残る場合があります。記録の取り方は、導入前に提供会社へ確認しておくと安心です。
ログの保存期間や出力レベルは製品や設定によって異なるため、導入時に確認しておきましょう。変更履歴を残す運用にしておけば、直前の変更を取り消す判断もしやすくなります。担当者の間で、記録の見方を共有しておくと安心です。
負荷分散で通信が意図どおりに振り分けられない場合
負荷分散は、サーバーの負担を均等に近づけるための基本機能です。振り分けが想定と異なるときは、方式、セッション維持、ヘルスチェックの順に見直します。
振り分け方式の設定を見直す
負荷分散には、順番に割り当てる方式や、接続数の少ないサーバーを選ぶ方式、サーバーの処理能力に応じた重みづけの方式などがあります。方式が通信の特性にあわない場合、特定のサーバーに通信が偏ることがあります。運用状況にあわせた見直しも必要です。
サーバーごとの性能差や、処理に時間のかかる通信の有無を確認しましょう。方式を変える場合は、変更後の振り分け状況を管理画面やログで確かめます。急な変更で影響が出ないよう、通信の少ない時間帯に実施してください。
セッション維持の設定を確かめる
セッション維持とは、同じ利用者の通信を同じサーバーへ送り続ける仕組みです。ログイン状態を保つ必要があるシステムでは、この設定が欠かせません。利用者の負担になる再ログインが続くと、問い合わせの増加にもつながります。
設定が合っていないと、利用者が別のサーバーに振り分けられ、ログインが途切れる場合があります。逆に、維持の条件を厳しくしすぎると偏りの原因になる場合があります。維持の方法や保持時間を、アプリケーションの仕様とあわせて確認しましょう。
ヘルスチェックの条件を調整する
ヘルスチェックは、サーバーが正常に動作しているかを定期的に確かめ、不調なサーバーを振り分けの対象から外す機能です。確認の間隔や判定の基準が実態とずれていると、正常なサーバーが外れる場合があります。
単に接続できるかだけでなく、アプリケーションの応答内容まで確認する設定もあります。確認用の画面がメンテナンスで変わったときなどに、誤って判定される場合もあります。変更の際は、チェック条件の見直しも忘れずに行いましょう。
SSL/TLSオフロードで起きるエラーの確認
SSL/TLSオフロードは、暗号化通信の処理をADCが引き受ける機能です。証明書、通信方式、サーバー側の設定の3つを順に確認すると、エラーの原因を絞り込みやすくなります。
証明書の期限と構成を確かめる
暗号化通信の接続エラーでは、サーバー証明書の有効期限切れや、中間証明書の不足が原因となる場合があります。中間証明書とは、証明書の信頼の流れをつなぐために必要な証明書です。更新作業の担当者を決めておくと、期限切れを防ぎやすくなります。
証明書の更新時期は、運用の予定表に載せておきましょう。更新後は、複数のブラウザや端末から接続し、警告が出ないことを確かめます。ADCが複数台ある場合は、各機器に同じ証明書を反映したかも確認してください。
プロトコルと暗号方式の不一致を調べる
ADCが対応するTLSのバージョンや暗号方式と、利用者の端末側が対応する内容が一致しないと、接続に失敗する場合があります。古い端末や古い環境からの接続では、この不一致が起こり得ます。どの端末が影響を受けるかは、アクセスログから把握できる場合があります。
安全性を高めるため古い方式を無効にする際は、影響を受ける端末の有無を先に調べておきましょう。設定を変更したあとに接続できない利用者が出ていないか、ログで確かめることも大切です。
オフロード後のサーバー側の設定を確認する
オフロードでは、ADCとサーバーの間の通信が暗号化されない構成もあります。このとき、アプリケーションが元の通信を暗号化通信と判断できず、転送を繰り返す場合があります。ADCの設定だけで解決しない場合もあるため、両方の担当者で確認します。
利用者のIPアドレスをサーバーで把握するには、ADCがヘッダに付与した情報を読み取る設定も必要です。これらは製品比較の段階でも確認する項目です。サーバー側の担当者と、設定内容を事前にすり合わせておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でアプリケーションデリバリコントローラの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
WAFの反映遅れと誤検知への対処
WAFは、Webアプリケーションへの不正な通信を検査して防ぐ機能です。設定の反映が遅れたり、正常な通信が遮断されたりする場合は、仕組みと運用の両面から確認します。
- ■適用の状態
- 設定を保存しただけで終わらず、適用の操作まで完了しているか
- ■動作モード
- 検知のみか、遮断まで行うかを把握しているか
- ■例外の設定
- 誤検知した通信を個別に除外できるか
設定が反映されるまでの流れを知る
WAFの設定は、保存してから実際の通信に適用されるまでに、別の操作や時間が必要な場合があります。ルールの配布や、複数台の機器への同期にかかる時間も、製品によって異なります。製品ごとの反映の仕組みは、資料や提供会社への確認で把握できます。
反映が遅れているように見えるときは、適用の操作が完了しているか、機器間の同期が済んでいるかを確認しましょう。運用手順に反映の確認を加え、変更後に実際の通信で動作を試す流れにしておくと安心です。
検知モードと遮断モードを使い分ける
WAFには、不審な通信を記録するだけの検知モードと、実際に遮断するモードがあります。導入直後から遮断モードで運用すると、正常な通信まで止まる場合があります。対象のアプリケーションごとに、段階的に切り替える方法も選べます。
まず検知モードで通信の傾向を確かめ、問題がないことを見てから遮断へ切り替えるのが慎重な進め方です。切り替えの時期や判断の基準は、アプリケーションの担当者と相談して決めてください。切り替え後も、遮断された通信の記録を定期的に確認します。
誤検知を調整し、例外を運用する
誤検知とは、正常な通信を不正な通信と判定してしまうことです。入力フォームに記号を含む文字列が入る場合などに、起こり得ます。検査の厳しさを調整できるかは製品によって異なるため、導入前に確認しておくと安心です。
誤検知が見つかったら、ログから該当のルールを特定し、対象の通信だけを例外にします。例外を増やしすぎると防御が弱まるため、理由と日付を記録して定期的に見直しましょう。ルールの更新後にも、動作の確認を行ってください。
キャッシュと圧縮の不具合、エラー発生時の備え
キャッシュと圧縮は、表示の高速化に役立つ機能です。対象や期間の設定を誤ると、表示内容に影響する場合があります。エラーに備えた手順もあわせて整えましょう。
キャッシュ対象と保持期間を見直す
キャッシュとは、一度取得した内容を一時的に保存し、再利用する仕組みです。保持期間が長すぎると、更新したはずのページで古い内容が表示される場合があります。入れ替えの頻度が高い内容は、短めの期間にするなどの工夫もできます。
個人ごとに内容が変わるページは、キャッシュの対象から外す必要があります。サーバー側が出力するキャッシュに関する指定と、ADCの設定がぶつかっていないかも確認しましょう。更新時に内容を消去する手順も、決めておくと安心です。
圧縮機能の対象と二重処理を確認する
圧縮は、通信するデータの量を減らして表示を速くする機能です。すでに圧縮されている画像などを再び圧縮しても、効果が小さい場合があります。圧縮の効果は、対象のデータの種類や通信量によっても変わります。
サーバー側とADC側の両方で圧縮を行うと、表示が崩れる原因になる場合もあります。圧縮を行う側を一つに決め、実際の画面で確認してください。端末やブラウザによって挙動が異なる場合もあるため、複数の環境で試すと確実です。
エラー発生時に備えた手順を整える
エラーが起きたときに慌てないよう、確認と復旧の手順を事前に整えます。通知を受け取る担当者、ログの確認方法と保存場所、直前の安定した設定へ戻す方法を決めておきましょう。通知の設定が不十分だと、エラーに気づくのが遅れる場合があります。
設定を戻す際に影響が出ないよう、変更前の設定を保存しておくことも大切です。担当者が一人に偏らないよう、手順書を共有し、提供会社の窓口や連絡方法も記録に残してください。定期的な訓練も有効です。
負荷分散やSSL処理の機能を確かめたい製品
機能ごとの動作や対応範囲を確かめたい方に向けて、負荷分散やSSL処理に関する機能を掲載しているADC製品を紹介します。エラー時の支援体制もあわせて確認しておきましょう。
LoadMaster (株式会社OPENスクエア)
- HTTPコンテンツのキャッシングをサポート
- HTTP通信時のデータ圧縮
- 侵入防止(IPS)機能によるDoS攻撃対策
ArrayAPVシリーズ (アレイ・ネットワークス株式会社)
- SSLオフロードと負荷分散を1台で実現し、サーバ負荷を低減。
- 10/40 GbEインターフェースを搭載し、大規模システムに対応。
- API制御と仮想アプライアンスで多環境に展開可。
ADCに関するよくある質問
ADCの機能のエラーについてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:エラーが起きたとき、最初に何を確認すればよいですか?
- A:エラーが起きた時刻、影響を受けた機能、直前の設定変更の有無を確認しましょう。ADCのログと連携先のログを同じ時刻で見比べると、原因の範囲を絞りやすくなります。
- ■Q2:設定を変えたあとに不具合が出たときは、元に戻せますか?
- A:変更前の設定を保存しておけば、戻せる場合があります。戻す手順や影響は製品によって異なるため、導入前に提供会社へ確認し、実施は通信の少ない時間帯にしましょう。
- ■Q3:原因が製品側か自社側か分からないときはどうしますか?
- A:製品、自社の設定、連携先の三方向で確認しましょう。判断がつかない場合は、ログと再現の手順をまとめて提供会社へ相談すると、調査が進みやすくなります。
- ■Q4:機能のエラーを防ぐために、導入前にできることはありますか?
- A:本番に近い構成の検証環境や試用で、負荷分散、暗号化通信、WAF、キャッシュなどの動作を試しておきましょう。実施の範囲と時間帯は、本番環境に影響しないよう提供会社や社内の担当者と相談してください。
まとめ
アプリケーションデリバリコントローラ(ADC)の機能エラーは、負荷分散、SSL/TLSオフロード、WAF、キャッシュと圧縮の機能ごとに原因と確認点が異なります。製品、自社の設定、連携先の三方向で切り分け、ログと変更履歴で確かめることが大切です。機能の仕様やエラー時の支援体制は、複数製品の資料を請求して比較してみてください。

