株式会社LIFULL(証券コード:2120)は、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営する企業です。報告セグメントは、同サイトや不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」などからなるHOME'S関連事業で、これに老人ホーム・介護施設の検索サイト「LIFULL介護」や地方創生事業などが「その他」として続きます。国際会計基準(IFRS)を適用しています。
2026年9月期第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)の連結業績は、売上収益219億83百万円(前年同期比+4.4%)となりました。営業利益は32億39百万円(同+7.9%)、四半期利益は21億26百万円(同+41.9%)です。増収に加え、利益の伸びが売上を上回る好調な進捗となっています。
親会社の所有者に帰属する四半期利益は20億95百万円でした。持分法による投資の売却損益1億38百万円を計上したことも、最終利益の押し上げに寄与しています。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社LIFULL(証券コード:2120)徹底解説】2026年9月期第2四半期──売上収益149億01百万円・継続事業の実力は前年比2倍超の利益改善
通期着地を左右する市場環境
不動産情報サービスの収益は、不動産会社の広告出稿と物件掲載数に連動します。住宅取得を巡っては金利動向や建築コストの上昇が意識される一方、賃貸を中心とした住み替え需要は底堅く推移しています。オンラインでの物件探しが定着した現在、ポータルサイトは不動産取引の入り口として機能し続けています。
競争環境は引き続き厳しいものがあります。大手ポータル同士の集客競争に加え、不動産会社が自社サイトで直接集客する動きも進んでいます。ポータル側には、単なる物件掲載にとどまらない付加価値の提示が求められる局面です。
通期の着地を左右するのは、下期にあたる第4四半期の広告需要です。第3四半期までの進捗が良好であることを踏まえると、当面の焦点は成長投資と利益のバランスをどう取るかに移ると考えられます。空き家活用や地方移住といった社会課題に紐づく領域は、中期の収益源として育つ余地があると見られます。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社LIFULL 2026年9月期 第3四半期決算短信(PDF)
前年同期にあたる2025年9月期第3四半期累計の売上収益は210億59百万円でした。今期は9億24百万円の増収となり、219億83百万円に達しています。伸び率は4.4%です。
利益はより大きく伸びました。営業利益は前年同期の30億01百万円から32億39百万円へ2億38百万円増加し、伸び率は7.9%となっています。営業利益率は14.7%で、前年同期の14.3%から改善しました。減価償却費及び償却費が8億73百万円から10億36百万円へ増えるなかでの増益です。
税引前四半期利益は33億12百万円となりました。持分法による投資の売却損益1億38百万円が寄与した一方、金融収益及び費用(純額)は51百万円のマイナス、持分法投資損益は13百万円の損失でした。四半期利益は21億26百万円と前年同期比+41.9%の大幅増益です。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も注目したいのは、通期予想に対する進捗の高さです。通期予想は売上収益293億円(前期比+4.2%)、営業利益39億円、当期利益25億円とされています。第3四半期累計時点で、売上収益は約75%、営業利益は約83%、四半期利益は約85%の進捗です。
利益の進捗が売上を上回っている点は、収益性の改善が想定を上回るペースで進んでいることを示しています。増収率4.4%に対して営業利益が7.9%伸びており、コスト構造の効率が高まっていると考えられます。
財務面も拡充しました。第3四半期末の総資産は425億31百万円、資本合計は283億19百万円です。前年同期末の総資産380億61百万円、資本合計255億24百万円からいずれも増加しており、利益の積み上げが自己資本の厚みにつながっています。
Q3時点の事業進捗
主力のHOME'S関連事業は、外部顧客からの売上収益が200億41百万円となりました。前年同期の191億76百万円から4.5%の増加です。セグメント利益は36億26百万円で、前年同期の34億27百万円から5.8%増えています。
セグメント利益率は18.1%と高い水準を保っています。物件情報の掲載と広告を軸としたビジネスは、売上が伸びるほど利益が積み上がりやすい構造です。この構造が全社の利益成長を支えているといえます。
「その他」の区分は、外部顧客からの売上収益が19億41百万円と前年同期の18億83百万円から3.1%増加しました。一方でセグメント損失は4億09百万円となり、前年同期の2億70百万円の損失から拡大しています。LIFULL介護や地方創生事業を含むこの区分は、まだ投資が先行する段階にあると見られます。
業界の注目ポイント
不動産ポータルは集客から取引支援へ広がる
物件検索サイトの価値は、集客力だけでは測れなくなっています。不動産会社にとっては、問い合わせの質や成約までの効率が重要な評価軸です。掲載課金と反響課金のどちらを主軸に置くかによって、事業者ごとの収益構造も変わります。
同社は不動産・住宅情報サイトに加え、不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」も運営しています。用途や目的の異なる複数のメディアを持つことは、景気変動に対する耐性につながります。取引の前後まで支援領域を広げられるかが、次の差別化要因になると考えられます。
空き家と地方移住が新しい需要を生む
人口減少に伴う空き家の増加は、社会課題であると同時に事業機会でもあります。既存の流通に乗りにくい物件をどう扱うかは、情報プラットフォームの得意領域です。地方移住や二拠点居住の広がりも、従来の住み替え需要とは異なる情報ニーズを生んでいます。
同社の「その他」区分には地方創生事業が含まれており、現時点では損失が先行しています。社会課題に紐づく事業は立ち上がりに時間がかかる一方、いったん定着すれば競合が模倣しにくい強みになります。投資段階から収益段階へ移る時期が注目されます。
不動産テックの進化が業務支援の裾野を広げる
不動産業界では、物件情報の管理や顧客対応、契約手続きのデジタル化が進んでいます。電子契約や物件情報の連携基盤が整うほど、ポータル側が担える業務領域も広がります。データの標準化が進むことは、情報を集約する事業者にとって追い風です。
加えて、AIによる物件レコメンドや価格推定は、利用者体験を左右する要素になりつつあります。長年にわたり蓄積された物件データと行動データは、こうした機能の精度を支える資産です。データ活用の巧拙が、集客コストと成約効率の双方に効いてくると考えられます。
ITトレンド編集部の考察
第3四半期累計の内容は、収益性の改善が着実に進んでいることを示しています。売上収益219億83百万円に対し営業利益32億39百万円と、営業利益率は14.7%に達しました。増収率4.4%を上回る7.9%の営業増益は、コスト管理が効いている証左と考えられます。
四半期利益が前年同期比+41.9%と大きく伸びた点には、持分法による投資の売却損益1億38百万円などの要因も含まれます。営業段階の伸びと最終利益の伸びには差があるため、実力値は営業利益ベースで捉えるのが妥当です。それでも通期予想に対する営業利益の進捗が約83%に達している点は、素直に評価できます。
課題は「その他」区分の収益化です。売上収益19億41百万円に対しセグメント損失4億09百万円と、前年同期から赤字が拡大しました。HOME'S関連事業が稼いだ利益を、介護や地方創生といった次の柱の育成にどう配分するか。その配分の巧拙が、中期的な企業価値を左右すると見られます。
まとめ
- 2026年9月期第3四半期累計の売上収益は219億83百万円(前年同期比+4.4%)
- 営業利益は32億39百万円(同+7.9%)、営業利益率は14.7%へ改善
- 四半期利益は21億26百万円(同+41.9%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は20億95百万円
- 税引前四半期利益は33億12百万円、持分法による投資の売却損益1億38百万円を計上
- HOME'S関連事業は外部顧客からの売上収益200億41百万円、セグメント利益36億26百万円(同5.8%増)
- その他の区分は売上収益19億41百万円、セグメント損失4億09百万円と赤字が拡大
- 総資産425億31百万円、資本合計283億19百万円
- 2026年9月期通期予想は売上収益293億円(前期比+4.2%)、営業利益39億円、当期利益25億円
- 通期予想に対する進捗は売上収益約75%、営業利益約83%、利益約85%
- 予想年間配当は1株あたり6.72円
ITトレンド編集部
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