いちご株式会社は、「心で築く、心を築く」を信条に掲げるサステナブルインフラ企業です。アセットマネジメント事業、心築(しんちく)事業、ホテル事業、いちごオーナーズ事業、クリーンエネルギー事業の5つのセグメントを展開し、不動産に新たな価値を創造する「心築」を軸とした事業モデルを推進しています。
2027年2月期第1四半期累計期間の業績は、売上高104億97百万円(前年同期比-15.9%)となった一方、営業利益は25億87百万円(同-25.4%)、経常利益は14億48百万円(同-37.8%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は28億83百万円(同+23.7%)となりました。営業利益・特別損益に計上される心築・ホテルの資産売却損益を加えた事業利益は68億22百万円(同+45.3%)と大きく伸びており、通期での過去最高益更新に向けて順調に進捗しています。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
いちご株式会社(証券コード:2337)の決算解説
今期スタートを取り巻く市場環境
当第1四半期における日本経済は、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費や設備投資に持ち直しの動きが見られ、景気は緩やかに回復しています。一方で、物価上昇の影響や地政学的リスク、米国の通商政策、国内外の金利動向など、先行きの不透明要因には引き続き留意が必要な状況です。
いちごが属する不動産業界では、日米間の金利差や円安を背景に投資資金の流入が継続しており、東京をはじめとする主要都市で投資意欲は旺盛な状況が続きました。宿泊需要を含むインバウンド消費も好調に推移しています。こうした環境の中、いちごは心築施策による保有物件の価値向上と物件の新規取得により、主にオフィスの賃料収入を増加させました。
また、心築により価値向上を実現した商業施設の売却や、子会社株式の売却を通じた心築資産の価値向上成果の実現も進めています。今期スタートの市場環境は、不動産投資意欲が旺盛な一方で金利上昇リスクなど不確実性も抱える、二面性のある局面だと見られます。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
いちご株式会社 2027年2月期 第1四半期決算短信(PDF)
いちごの業績を振り返ると、2026年2月期通期では売上高927億05百万円(前期比+10.9%)、営業利益204億49百万円(同+25.4%)、当期純利益166億28百万円(同+9.5%)と、過去最高益を更新していました。ストック収益が前期比+6%、フロー収益が前期比+14%とそれぞれ伸び、事業利益・純利益ともに増益を確保していた実績があります。
そして今回の2027年2月期第1四半期累計では、売上高104億97百万円(前年同期比-15.9%)、営業利益25億87百万円(同-25.4%)、経常利益14億48百万円(同-37.8%)、四半期純利益28億83百万円(同+23.7%)となりました。営業利益・経常利益は前年同期に計上された大型の譲渡成果報酬の反動などにより減少した一方、心築事業に属する不動産の売却益や関係会社株式売却益といった特別利益の計上により、純利益は増益を確保しています。
財政状態を見ると、2026年5月末時点の資産合計は4,450億99百万円(前期末比+92億78百万円)、負債合計は3,360億44百万円(同+169億78百万円)となりました。純資産合計は1,090億54百万円(同-77億円)で、自己資本比率は24.4%(前期末比-2.3ポイント)とやや低下しています。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も注目すべき点は、営業利益・経常利益が減益となった一方、事業利益(営業利益に特別損益計上の心築・ホテル資産売却損益を加えたもの)が前年同期比+45.3%と大きく伸びたことです。心築事業に属する不動産の固定資産売却益12億28百万円、不動産保有子会社の株式売却に伴う関係会社株式売却益30億17百万円などが、特別利益として大きく貢献しました。
セグメント別では、心築事業のセグメント利益(事業利益)が48億15百万円(前年同期比+144.4%)と大幅に伸びた一方、アセットマネジメント事業は前年同期の大型譲渡成果報酬の反動により、セグメント利益が3億09百万円(同-50.9%)に減少しました。ホテル事業は既存ホテルのRevPARが堅調に推移した一方、新規取得・リブランドホテルの構成比上昇や訪日需要の弱含みにより、セグメント利益は12億12百万円(同-22.8%)となっています。
株主還元面では、当第1四半期に総額48億円の自己株式取得を実施したほか、当連結会計年度の配当予想を1株当たり15.5円(前期比+35%)としています。業績予想については、2026年4月14日公表の通期予想から変更はなく、翌期(2027年2月期通期)の営業利益は206億円(前期比+0.7%)、経常利益は149億円(同-12.8%)、純利益は180億円(同+8.2%)を見込んでいます。
今期の重点領域と収益構造
いちごの収益構造は、アセットマネジメント、心築、ホテル、いちごオーナーズ、クリーンエネルギーの5セグメントで構成されています。今第1四半期では、心築事業の売上高が37億19百万円と最大の収益源となり、オフィスブランド「VILLAGE」シリーズの新規稼働などが賃貸収益の増加に寄与しました。
いちごオーナーズ事業は、新築優良レジデンス「GRAN PASEO」を都心中心に184億円取得し、通期取得目標580億円に対して順調に進捗しています。ただし第1四半期は物件売却が発生しなかったため、セグメント利益はマイナス40百万円となりました。第2四半期以降の売却活動により、通期での不動産売却額(売上)は620億円を見込んでいます。
クリーンエネルギー事業では、2026年6月1日付で同社初となる蓄電所「いちご御宿岩和田ECO蓄電所」が稼働を開始し、電源の多様化に向けた取り組みが進んでいます。今期の重点領域は、心築による資産価値向上とストック収益の拡大、そしていちごオーナーズ事業における新築レジデンスの供給拡大にあると見られます。
業界の注目ポイント
日米金利差を背景とした不動産投資資金の流入
日米間の金利差や円安を背景に、国内不動産への投資資金流入が継続しています。東京をはじめとする主要都市では投資意欲が旺盛な状況が続いており、いちごの心築事業やアセットマネジメント事業にとって追い風になっていると見られます。
一方で、いちごは長期VISION「いちご2030」に基づき、借入金の固定金利化を中心とした金利上昇リスクへの対応を進めています。当第1四半期における固定金利比率は56%となっており、金利変動リスクの低減に取り組んでいる状況です。
インバウンド需要の変化とホテル事業の収益性
ホテル事業では、既存ホテルのRevPARが前年同期を上回るなど堅調な部分がある一方、大阪・関西万博関連需要の反動や、中国政府による訪日渡航自粛要請等を背景とする宿泊需要の弱含みにより、保有ホテル全体のRevPARは前年同期比-10%となりました。
2026年4月には「THE KNOT FUKUOKA Tenjin」が開業するなど、ブランドの拡大自体は継続しています。インバウンド需要の地域差・国別動向を踏まえた価値向上策が、今後の収益性改善の鍵になると考えられます。
累進的配当政策とDOE目標の引き上げ
いちごは「累進的配当政策」を掲げ、原則として前期比で維持または増配し減配しない方針を取っています。株主還元指標であるDOE(株主資本配当率)目標も、従来の「4%以上」から「5%以上」へ引き上げられました。
2027年2月期の配当予想は1株当たり15.5円(前期比+35%)と大幅増配が見込まれています。機動的な自社株買いも10期連続で実施しており、株主価値の向上を重視する経営姿勢が続いています。
ITトレンド編集部の考察
今回の決算で最も重要な視点は、営業利益・経常利益の減益と純利益の増益が併存しているという構造です。これは、前年同期に計上された大型の譲渡成果報酬の反動という一時的な要因と、今期の心築資産・子会社株式売却による特別利益の押し上げという、いずれも「フロー収益」の変動によるものだと見られます。事業利益が前年同期比+45.3%と大きく伸びていることから、資産の入れ替えを通じた価値創造という同社のビジネスモデルは、着実に機能していると考えられます。
一方で、いちごオーナーズ事業のようにセグメント利益が一時的にマイナスとなる事業もあり、収益認識のタイミングによって四半期ごとの業績が変動しやすい構造であることには留意が必要です。通期での不動産売却額620億円という見通しが計画通り進捗するかどうかが、下半期の業績を占う材料になると見られます。
財務面では自己資本比率がやや低下しているものの、固定金利比率56%やESGローンの活用拡大など、金利上昇リスクへの備えは着実に進んでいます。累進的配当政策とDOE目標の引き上げは、株主還元を重視する姿勢の表れであり、通期での過去最高益更新とあわせて、今後の四半期の進捗を注視する価値があると考えられます。
まとめ
- 2027年2月期第1四半期累計の売上高は104億97百万円(前年同期比-15.9%)
- 営業利益25億87百万円(同-25.4%)、経常利益14億48百万円(同-37.8%)と減益
- 親会社株主に帰属する四半期純利益は28億83百万円(同+23.7%)と増益、事業利益は68億22百万円(同+45.3%)
- 自己資本比率は24.4%(前期末比-2.3ポイント)とやや低下
- 配当予想は1株当たり15.5円(前期比+35%)と大幅増配、自己株式取得48億円を実施
- 翌期(2027年2月期通期)予想は営業利益206億円、経常利益149億円、純利益180億円を見込む

