ガントチャートとは
ガントチャート（Gantt Chart）とは、プロジェクトの進行状況を可視化するためのスケジュール管理表です。タスクの開始・終了日を横棒（バー）で示し、進捗や担当者、依存関係を直感的に把握できます。工程管理に活用されることが多く、「線表」と呼ばれることもありますが、厳密には線表の一種とされています。
ガントチャートの構成要素
ガントチャートは、一般的に以下の要素で構成されます。
- ●タスク（作業項目）: プロジェクトを構成する各作業
- ●期間（開始日・完了日）: タスクの実施期間
- ●バー（進捗を示す横棒）: タスクの進捗状況を示す横棒
- ●依存関係: タスク間の関係（どのタスクがほかのタスクに影響を与えるか）
- ●マイルストーン: 重要な節目や目標の設定
- ●リソース（担当者）: 各タスクの担当者の割り当て
- ●進捗状況: タスクごとの完了率など
これらの要素が組み合わさることで、プロジェクトの流れを直感的に把握しやすくなります。
WBSとの違い
WBS（Work Breakdown Structure）は、プロジェクトを成果物や作業単位に分解し、構造化する手法です。「プロジェクトで何をすべきか」に焦点を当て、タスクを階層的に整理することで、抜け漏れのない計画を立てられます。
一方、ガントチャートは、WBSで整理したタスクを時間軸上に配置し、スケジュールとして可視化するツールです。WBSがタスクの「構造化」に重点を置くのに対し、ガントチャートは「スケジュール管理」と「進捗の把握」に役立ちます。
WBSとガントチャートは役割が異なりますが、WBSで分解されたタスクをガントチャートに落とし込むことで、プロジェクトの進行状況を管理しやすくなります。
バーチャートとの違い
バーチャート工程表は、縦軸に作業項目、横軸に時間を配置し、各作業の所要期間を可視化する工程表です。作業の順序や期間を明確にし、各タスクの所要日数を把握することを目的としています。一方、ガントチャートはバーチャートを発展させたもので、タスクの進捗状況や依存関係を管理することに重点を置いています。
ガントチャートの目的と誕生の背景
20世紀初頭、大量生産の進展に伴い、効率的な進捗管理手法が求められました。そこで、エンジニア兼経営コンサルタントのヘンリー・ガントが、作業進捗を一目で把握できる管理手法としてガントチャートを考案。
ガントの死後、1992年にウォーレス・クラークが著書「The Gantt Chart: A Working Tool of Management」を発表したことで、この手法は世界中に広まりました。現在では、タスクの可視化や情報共有の効率化を目的に、多くの業界で活用されています。
ガントチャートのメリット
ガントチャートを活用するメリットは以下のとおりです。
- ●メンバーの作業状況やプロジェクトの進捗状況がひと目でわかる
- ●スケジュールやタスクの割り振りの変更時にスムーズに共有できる
- ●プロジェクトに遅延があった場合、どのタスクに遅れがあるのかすぐにわかる
- ●すべてのタスクを可視化できるため、業務の割り振りが最適化しやすい
- ●タスク間の依存関係を明確にし、効率的なプロジェクト運営が可能になる
「プロジェクトのスケジュール管理を効率化したい」、「タスクの依存関係を整理したい」などの課題には、プロジェクト管理ツールの導入も効果的です。以下で人気の製品を確認できます。
ガントチャートの作り方
ガントチャートは無料のExcelテンプレートを使用すれば簡単に作成可能です。また、マイクロソフト社の「Microsoft 365」に加入していれば日付管理ガントチャートを利用できます。プロジェクト管理全体を効率化したい場合には、ガントチャート機能の搭載されたプロジェクト管理ツールやタスク管理ツールを活用するのもおすすめです。
ここでは、Excelやツールの付属機能を用いてガントチャートを自作する場合の作り方をわかりやすく解説します。
１．プロジェクトの目的と範囲の定義
まず、ガントチャートで管理するプロジェクトの目的と範囲を明確にします。この情報がガントチャートの全体像を決める基礎となります。
２．タスクの洗い出し
次に、ガントチャートの縦軸に記載するための作業項目を洗い出します。例として、製造業で機械製品を作る場合を考えてみましょう。この場合、資材の準備や部品の組み立て、梱包などさまざまな工程があります。
３．タスクの細分化と順序設定
洗い出したタスクをより具体的な作業に細分化します。資材の準備であれば、取引先との連絡や発注作業、代金の支払いなどがあるでしょう。組み立てであれば人材の手配や機械設備の整備、実際の組み立て作業などが含まれます。
こうして細分化することで、現実的な納期の設定が可能になります。洗い出した各タスクは、作業の順番どおりにガントチャートに記入しましょう。
４．作業日程の設定
次は、各タスクの開始日と終了日を決めます。横軸の単位は、日や月など、プロジェクトの規模に応じて適切なものを選びます。
このとき、タスクの期限にある程度の余裕を持たせましょう。余裕がなければトラブルが生じた際に対処が難しくなります。
５．依存関係の特定と記入
タスクの依存関係を特定し、ガントチャートに反映させることで、作業間の影響を明確にできます。
６．リソースと担当者の割り当て
タスク間の関係性が明確になったら、各タスクの担当者を決定します。決めた担当者の名前は、縦軸の作業項目と並べて記載しましょう。
担当者の決定時に注意しなければならないのが、負担を偏らせないことです。１つのプロジェクトにおいてバランスよく負担を分散させるのはもちろんのこと、ほかのプロジェクトも考慮する必要があります。１つのプロジェクトが忙しくて別のところまで手を回せない担当者は、負担を少なくしましょう。
７．チャートの作成と調整
手順６までの情報をもとに、ガントチャートを作成します。必要に応じて調整を行いながら、実際のチャートを形作っていきましょう。
８．レビューと最終確認
チャートをチームメンバーや関係者と共有し、フィードバックを受けて最終的な確認を行いましょう。ここでの調整が、ガントチャートの完成度を高めます。
ガントチャートを自作するデメリット
Excelやスプレッドシートを使ってガントチャートを自作する方法は、手軽にはじめられる一方で、いくつかの課題があります。
- ■作成や更新に手間がかかる
- タスクの追加やスケジュール変更が発生するたびに、手作業で修正しなければなりません。プロジェクトの規模が大きくなるほど、管理負担が増します。
- ■依存関係の管理が難しい
- タスク同士の前後関係を手動で設定すると、スケジュール変更時にすべての関係を修正する必要があります。ミスが発生しやすく、計画の精度にも影響を与えます。
- ■リアルタイムの情報共有が困難
- Excelやスプレッドシートでは、専用ツールのようにリアルタイムでの更新や共有ができません。チームメンバーと最新のスケジュールを素早く共有するのに手間がかかります。
- ■進捗管理の自動化ができない
- 専用のプロジェクト管理ツールには、進捗状況を自動更新する機能がありますが、自作のガントチャートではすべて手作業です。そのため、データの更新漏れや誤入力が発生しやすくなります。
- ■視認性や拡張性が低い
- 専用ツールは直感的なUIや視覚的にわかりやすいレイアウトを備えています。一方、Excelなどで自作した場合、見た目を調整する手間がかかるうえ、大規模プロジェクトには向いていません。
ガントチャートを手軽に作成できる一方で、運用面の負担が大きくなることがあるため、プロジェクトの規模や必要な機能に応じて、専用のガントチャートツールの導入も検討するとよいでしょう。
ガントチャートを活用できるおすすめツール
ここからは、ガントチャートが簡単に作成できるおすすめツールを紹介します。
Backlog
- タスク・プロジェクト管理に必要な機能がオールインワン
- ガントチャートやカンバンボードで直感的にタスク管理
- シンプルで直感的に使えるデザインだからすぐに使いこなせる
株式会社ヌーラボが提供している「Backlog」は、案件管理がしやすいガントチャートを特徴とするタスク・プロジェクト管理ツールです。案件のフェーズごとにタスクの整理がしやすいマイルストーン機能を搭載しているため、長期プロジェクトでも活用しやすいでしょう。タスクごとのチャットでは、星マークをつけて感謝の気持ちを伝えるスター機能により、コミュニケーションが活発化します。
【参考価格】初期費用無料、月額2,970円～
Lychee Redmine
- 大規模なプロジェクト計画でもスピーディで直感的に操作可能
- ガントチャートやカンバンで、リアルタイムに進捗可視化
- 作業時間予定と実績を担当者別に表・グラフで見える化
株式会社アジャイルウェアが提供する「Lychee Redmine」は、プロジェクト管理を支援する多機能ツールです。ガントチャートやカンバンを活用したタスク管理に加え、工数やリソースの可視化、プロジェクトレポート機能などを搭載。7,000社以上の導入実績があり、クラウド版には無料プランも用意されています。セキュリティ面ではISO27001認証を取得し、安全な運用が可能です。
【参考価格】月額900円～/ユーザー
Jira
- リックソフトはAtlassian Platinum Solution Partnerです
- 世界65,000以上の企業が利用しているプロジェクト管理ツール
- アジャイル開発・ウォーターフォール開発・ビジネス部門にも
リックソフト株式会社が代理店として提供する「Jira」は、プロジェクト管理を支援する高機能ツールです。大小規模を問わず、課題管理や進捗の可視化を実現し、レポート機能を活用して業務の効率化をサポート。3,000以上のアドオンによる柔軟なカスタマイズが可能で、リックソフトは自社開発アプリも提供しています。導入から定着まで手厚いサポートを行い、研修やeラーニング、無料トライアル時の日本語ヘルプデスクなども利用可能。
【参考価格】初期費用無料、クラウドプラン：月額893円
プロジェクトマネジメントDX Flagxs（フラッグス）
- 計画から実行、レポートまで考え抜かれた設計思想
- 現場の定着にこだわった圧倒的に使いやすいExcelライクな操作性
- 円滑なマネジメントサイクルを実現するコンサルティングサポート
フラッグス株式会社が提供する「プロジェクトマネジメントDX Flagxs（フラッグス）」は、プロジェクト管理を効率化し、組織全体のレベルアップを支援するクラウド型プラットフォームです。WBSの標準化により、複数プロジェクトを統一した尺度で管理し、リスクの早期検知を実現。リアルタイムレポート機能により、進捗や実績の可視化とマネジメントコストの削減をサポートします。
【参考価格】お問い合わせください
CrewWorks
- WBSとガントチャートでプロジェクトの全体像を瞬時に把握
- EVMでコスト・スケジュール進捗をグラフィカルに管理
- シンプルな操作で初めてでもプロジェクトを効率的に管理可能
テクノ・マインド株式会社が提供する「CrewWorks」は、プロジェクトの進行をスムーズに管理できるツールです。WBSで作業の明確化と抜け漏れ防止を支援し、ガントチャートでタスクの期限や進捗を可視化。さらに、EVM・ESMによりコストとスケジュールの管理を強化し、問題点を早期に発見できます。直感的な工数入力機能も備え、担当タスクを手間なく記録可能。長期プロジェクトでもストレスなく運用できる環境を提供します。
【参考価格】月額400円～/ユーザー
Jira
- 世界12万社以上が活用するプロジェクト管理のスタンダード
- 組織全体の動きを可視化することで、的確な意思決定を支援
- Jiraに組み込まれたAIにより、タスク作成をより効率化
アトラシアン株式会社が提供する「Jira」は、タスクとプロジェクトを効率的に管理するためのツールです。直感的なインターフェースでタスクの追加や詳細なカスタマイズが可能。また、スプリントやタイムラインなど多様なビューで進捗を確認できます。ノーコードの自動化機能を備え、繰り返し作業の削減にも貢献。ダッシュボードやレポート機能を活用し、データにもとづいた意思決定を支援します。
【参考価格】月額990円～/ユーザー
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ガントチャート活用のコツ
ガントチャートを自作・運用する際の注意点を解説します。
タスクを詰め込みすぎない
作業漏れの防止や正確なスケジュール設計のためにタスクを細分化しすぎると、作業状況の更新・チェック工数が増えてしまいます。工程の細分化は重要ですが、似たような作業や担当者が同じものなど、まとめられるものがあれば工夫しましょう。
タスクの依存関係を明確にする
ガントチャートはタスク間の関係が見えにくいため、表示方法の工夫が必要です。例えば、製造業における部品の仕入と組み立て作業の関係性を考えてみましょう。組み立て作業には必ず部品が必要となるため、先に部品の仕入を完了しておく必要があります。一方、組み立てに要する製造設備の整備などは、部品が手元になくても問題なく実施できるでしょう。
そこで、仕入と組み立て作業を同じ色のチャートで示し、機械設備の整備は別の色で示す方法があります。また、仕入と組み立てのチャート同士を矢印で結び、タスク同士が連続したものであることを示してもよいでしょう。そのほか、縦軸にタスクを並べる際、関係の深いタスク同士を近づけると、まとめて把握しやすくなります。
進捗状況の更新確認をメンバーに依存しない
ガントチャートは更新しなければ意味を成しません。定期ミーティングの際にマネージャーが自らメンバーに進捗を確認するなどして、データを最新の状態に保てるように全員で工夫しましょう。
柔軟な計画を立てる
ガントチャートは計画通りに進行することを前提としていますが、実際のプロジェクトは予期せぬ変更が発生することも多いでしょう。そのため、計画を立てる際は柔軟性を持たせることが重要です。例えば、予備のバッファ時間を設ける、重要度が低いタスクの優先順位を変更しやすくするなど、計画の見直しが容易な構造にすると、変更が発生したときに迅速に対応できるでしょう。
チーム全員での共有と意見交換を促進する
ガントチャートはチーム全員が見て理解できるように作成・運用することが重要です。定期的なミーティングでガントチャートを共有し、進捗状況や課題についてオープンに意見交換を行うことで、全員がプロジェクトの進行状況を共有し、課題解決に向けて協力しやすくなるでしょう。
まとめ
ガントチャートは棒グラフを用いた図で、プロジェクトのタスクと期限を可視化し進捗状況を共有するために使われます。ガントチャートを簡単に作成できる専用ツールを活用し、プロジェクト管理を成功させましょう。ぜひ資料請求を行い無料トライアル、無料プランの導入をご検討ください。
