AI・機械学習
2026年07月30日

楽天と日本HPが「Rakuten AI for Desktop」提供開始——オンデバイス×クラウドのハイブリッドAI体験を企業PCへ

楽天と日本HPが「Rakuten AI for Desktop」提供開始——オンデバイス×クラウドのハイブリッドAI体験を企業PCへ

楽天と日本HPが「Rakuten AI for Desktop」提供開始——オンデバイス×クラウドのハイブリッドAI体験を企業PCへ(写真はイメージ)

楽天グループと日本HPは2026年7月29日、HP製Windows PC向けAIアプリケーション「Rakuten AI for Desktop」の提供を開始したと発表しました。オンデバイス(PC内蔵の演算能力)とクラウド(楽天エコシステム連携)を組み合わせる「ハイブリッドAI体験」を実現する仕組みで、企業向けは7月29日、消費者向けは10月以降に展開されます。日本語に最適化された自社LLM「Rakuten AI 7B」を、初のオンデバイス実装として搭載した点が最大の特徴です。企業のAI活用が「クラウドAI一択」から「用途に応じたハイブリッド運用」に移りつつある流れを、大手PCメーカーとの提携で加速させる動きです。

サービス概要——「オンデバイスとクラウドを組み合わせるハイブリッドAI」

「Rakuten AI for Desktop」は、ゲーミングPC・シンクライアント・一部ワークステーションを除く日本国内のHP製Windows PCを対象に、プリバンドル形式で提供されます。企業向けは2026年7月29日から、消費者向けは2026年10月以降の展開が予定されています。

サービスの中核は「ハイブリッドAI体験」で、PC上のオンデバイスモードと、楽天のクラウドサービスと連携するクラウドモードを状況に応じて使い分けます。オンデバイスモードは、インターネット接続を必要とせず、プライバシー保護と低レイテンシを両立する設計です。クラウドモードは、楽天エコシステムの70超のサービスと連携し、複雑なタスクや外部データとの掛け合わせが必要な処理を担います。ネットワーク環境や業務要件に応じて、AI処理の場所を柔軟に選択できる構造となっています。

「Rakuten AI 7B」の初オンデバイス実装——日本語特化モデルをPCで動かす

技術面での最大のポイントは、楽天が開発する日本語特化LLM「Rakuten AI 7B」を、初めてオンデバイスで実装した点です。従来、日本語対応のフロンティアAIモデルはクラウド提供が主流でしたが、7Bパラメータのモデルをローカルで動作させることで、業務PC単体でAI活用を完結できる選択肢が生まれました。

7Bクラスの日本語モデルは、Copilot+ PC世代のNPU(Neural Processing Unit)と組み合わせて実用的な速度で動作できる規模感で、業務PCへの標準搭載モデルとして現実的なサイズです。日本語処理の品質をローカルで確保できる意味は大きく、機密文書の要約・翻訳・整理といった、外部にデータを出したくない業務用途で活用しやすくなります。

主な機能——文章作成から画像生成、楽天サービス連携まで

「Rakuten AI for Desktop」でカバーされる機能は以下の通りです。

  • オンデバイス/クラウド両方で利用可能:文章作成、翻訳、要約
  • クラウドのみで利用可能:画像生成、動画生成、コーディング支援
  • 楽天エコシステム連携:楽天市場、楽天トラベル、楽天モバイルなど70超のサービスとの統合利用

処理の重い生成系はクラウドに寄せ、日常的な文書業務はオンデバイスで完結する切り分けです。加えて、楽天エコシステム連携によって、業務用途だけでなく、出張手配や購買、通信サービス管理といった実生活の作業も同じAIから扱えるようになります。個人利用と法人利用の境界が曖昧な業務PC環境で、AIが「1つの窓口」として機能する構造が意識されています。

企業向け・消費者向けそれぞれの位置付け

企業向けについては、機密性の高い業務のローカル処理と、クラウド活用のコスト削減が主な訴求ポイントとして挙げられています。オンデバイス処理は、生成AI利用時の従量課金コストが発生しないため、頻度の高い翻訳や要約業務でトークン費用のかさむクラウドAIから一部を移行できるメリットがあります。加えて、社内文書をクラウド送信せず処理できるため、ガバナンス・コンプライアンス面のハードルを下げる効果も期待できます。

消費者向けは、日常タスクの支援と、楽天サービスとの統合利用が中核です。楽天市場での商品検索・購入補助、楽天トラベルでの旅行計画、楽天モバイルとの連携などが想定されており、Rakutenエコシステムを日常的に使う個人ユーザーにとって親和性の高い提案となっています。10月以降の消費者向けリリースで、家庭用HP製PCにもAI体験が広がる流れです。

両社のコメント——「Future of Work」を支える基盤へ

楽天CAIDO(最高AI・データ責任者)は「どこでもAIが利用できる環境の安心感を提供する」と発言し、ネットワーク環境に依存しない「常時使えるAI」の価値を強調しています。日本HP社長は「Future of Workを支える基盤」として位置付けており、企業の働き方変革を後押しするインフラとしての意義を打ち出しました。

両社は今後も統合デバイスやソリューションの共同開発を継続する方針で、単発の連携ではなく中長期的なパートナーシップとして関係を構築していく姿勢を明示しています。国内PCメーカー・キャリアとの提携を軸に、AI体験の裾野を広げる楽天のAI戦略の一環でもあります。

日本企業への示唆——「ハイブリッドAI運用」を業務PC標準に組み込む段階へ

日本企業にとってのポイントは、AI活用の設計に「オンデバイス」と「クラウド」の使い分けを組み込む段階に本格的に入ったことです。全てをクラウドAIに寄せる構成は、コスト・レイテンシ・機密性の観点で課題を抱えており、業務PCにAI処理能力を持たせるアプローチが現実味を帯びてきました。

「Rakuten AI for Desktop」のように、日本語特化モデルがPC標準にプリバンドルされる形は、情シスにとっても「AI利用を業務ツールと同列に扱える」変化を意味します。標準端末の選定基準に「AI機能プリバンドル」「NPU搭載」「オンデバイスLLM対応」といった項目が加わっていく流れは、他PCメーカーからの追随発表も含めて今後数年の主要トレンドとなりそうです。導入検討にあたっては、ネットワーク要件・データガバナンス方針・従業員トレーニングの3点を早めに整理しておくことが実務的な備えになります。

まとめ

楽天と日本HPの「Rakuten AI for Desktop」提供開始は、日本語特化LLMのオンデバイス実装を大手PCメーカーが標準搭載するという点で、日本市場におけるAI PC普及の重要な一歩です。オンデバイス/クラウドの使い分け、Rakutenエコシステム70超サービスとの統合、企業と消費者両方をカバーする展開ロードマップと、AI活用の裾野を大きく広げる構成になっています。

日本企業としては、AI活用戦略の中に「業務PCそのものがAIエンドポイント」であることを前提とした設計が求められる段階に入りました。ハイブリッドAI運用を標準化することで、コスト・機密性・レスポンスの三面で最適化を進めるための基盤が整いつつあります。他PCメーカーやAIベンダーの追随発表も含めて、業務PC選定の考え方が大きく変わる転換点として、継続的にウォッチしていく価値のある動きです。

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