IT担当者不在の中小企業がネットワークを自前運用するために必要なこととは
社内のWi-Fi環境が不安定、でもネットワークに詳しい人材がいない——そんな状況を抱える中小企業は少なくありません。株式会社バッファローの調査(2024年)によると、中小企業の44.1%が「情報システム担当者が不足している」と回答しており、70.3%がネットワーク構築・運用を外部委託しています。一方で、外部委託にはコストや対応速度の面での課題もあり、「できれば自社で管理したい」というニーズも根強くあります。
本記事では、中小企業がネットワーク環境を整備・運用する際の選択肢を整理したうえで、ナイスモバイル株式会社が2026年4月に国内販売を開始した「eKit」の位置づけを確認します。
中小企業のネットワーク運用における3つの構造的課題
中小企業がネットワーク環境の整備・維持に苦労する背景には、主に以下の3点があります。
1. 設計・導入に専門知識が必要
ルーターやアクセスポイントの適切な配置、セキュリティ設定、VLAN構成など、業務用ネットワークの構築には一定の専門知識が求められます。IT担当者が兼任や不在の環境では、初期設定を外部業者に依頼せざるを得ないケースが多く、その都度コストが発生します。
2. 運用・保守の継続的な負荷
導入後も、ファームウェアの更新、障害発生時の原因特定、拠点追加時の設定変更など、継続的な運用作業が発生します。これらを専任者なしでこなすのは現実的に難しく、放置されたまま脆弱な状態で運用されているケースも見受けられます。
3. 家庭用機器の業務転用リスク
株式会社バッファローの調査(2023年)では、72.7%の中小企業が家庭用Wi-Fiルーターを業務利用していることが明らかになっています。家庭用機器は同時接続数や通信の安定性、セキュリティ機能の面で業務用途には不十分な場合が多く、接続トラブルや情報漏えいリスクの一因になり得ます。
中小企業向けネットワーク製品の選び方:3つの類型
こうした課題に対応するネットワーク製品は大きく3つの類型に分けられます。自社の状況に照らしてどれが適切かを判断する際の参考にしてください。
① エンタープライズ向け製品
高度なカスタマイズ性と拡張性を持ち、大規模環境や複雑なネットワーク構成に対応できます。機能は豊富ですが、導入・運用には専門知識が必要で、ライセンス費用を含むトータルコストは高くなる傾向があります。IT専任者が社内にいる、または外部パートナーと継続的な契約がある企業向けの選択肢です。
② クラウド管理型SMB向け製品
管理画面をクラウド上に集約し、複数拠点の機器を一元的に監視・設定できる製品群です。エンタープライズ向けと比べて導入ハードルが低く、IT専任者がいない環境でも運用しやすい設計のものが多いです。製品によってコスト・機能・サポート体制に差があるため、比較検討が必要です。
③ 家庭用・SOHO向け製品
導入コストは最も低いですが、同時接続数の上限、セキュリティ機能、障害時のサポート体制などの面で業務利用には制約が生じる場合があります。従業員数が少なく、ネットワークへの依存度が低い環境であれば選択肢になりますが、業務拡大に伴い限界が生じやすい点は考慮が必要です。
クラウド管理型SMB向け製品の比較
同カテゴリには複数の製品が存在しており、導入のしやすさ・コスト・サポート体制・データ管理の方針がそれぞれ異なります。以下に、代表的な3製品の仕様・特性を同一の観点で整理します。
A社製品
対応規格:Wi-Fi 6対応製品が中心。大規模環境向けのラインアップも充実。
導入難易度:設定項目が多く、初期構築には技術知識を要する。IT担当者が不在の場合、外部サポートとの契約が前提になるケースが多い。
管理方式:クラウド管理に対応。業種別の標準構成は原則用意されておらず、個別設計が必要。
データ管理:海外サーバーでの管理が主体。国内コンプライアンス要件が厳しい業種では事前確認が必要。
国内実績:導入実績が豊富で、長期的なサポート継続性の判断材料が得やすい。
B社製品
対応規格:Wi-Fi 6対応製品が中心。エントリークラスからミッドレンジまで幅広くラインアップ。
導入難易度:比較的シンプルな設定手順で、小規模オフィスへの導入実績が豊富。
管理方式:クラウド管理に対応。業種別の標準構成は製品によって異なり、日本語サポートの充実度にも差がある。
データ管理:製品によって管理サーバーの所在が異なるため、事前確認が必要。
国内実績:小規模オフィスを中心に国内導入実績があり、価格帯の選択肢が広い。
eKit
対応規格:Wi-Fi 7(Wi-Fi 6にも対応)。ルーター・スイッチ・アクセスポイントをラインアップ。
導入難易度:ゼロタッチ導入とスマートフォンによる設定に対応。オフィス・ホテル・店舗など業種別の標準構成が定型化されており、個別設計が不要。
管理方式:クラウド管理システム(eKit APP/SNC・Easy WEB)による複数拠点の一元管理に対応。
データ管理:日本国内のサーバーで管理される仕様。
国内実績:2026年4月に国内販売を開始したブランドであり、A社・B社と比べて国内での導入実績は現時点では少ない。高度なカスタマイズや既存システムとの複雑な連携が必要な環境では、機能面での制約が生じる可能性がある。
製品選定時に確認すべき5つの観点
ネットワーク製品を選定する際には、スペックだけでなく以下の観点も重要です。
・初期設定の難易度:自社で対応するか業者に依頼するかによって、トータルコストが大きく変わります。
・管理画面の使いやすさ:IT専任者がいない場合、日常的な監視や設定変更を誰が担うかを明確にしたうえで評価してください。
・既存システムとの互換性:現在使用中の機器やセキュリティツールとの連携可否を事前に確認することが必要です。
・Wi-Fi規格と端末の対応状況:Wi-Fi 7の性能を活かすには接続端末側の対応も必要です。現在の端末環境と照らし合わせて費用対効果を判断してください。<br>
・サポート体制と保証期間:障害発生時の対応窓口、応答時間、保証年数は製品・ベンダーごとに異なります。導入後の運用を見据えて確認してください。
まとめ
IT人材不足を抱える中小企業にとって、ネットワークの導入・運用コストを抑えることは経営上の実務課題です。製品選定にあたっては、スペックや価格だけでなく、自社の運用体制・既存環境・データ管理要件・サポート体制を軸に複数製品を比較したうえで判断することが重要です。本記事で取り上げた製品類型と選定観点を参考に、自社の実態に合った選択を検討してください。
※1 株式会社バッファロー「中小企業のITインフラに関する実態調査」(2024年)
※2 株式会社バッファロー「中小企業におけるルーター利用実態調査」(2023年)
