LINEヤフー株式会社(証券コード:4689)は、「LINE」や「Yahoo! JAPAN」を中心に事業を展開する企業です。広告・コマース・金融の各分野でサービスを提供しています。企業向けには「LINE公式アカウント」などのマーケティング手段を提供しています。本記事では、2027年3月期第1四半期の決算数値と開示内容をもとに、業績の推移と事業ごとの動向を整理します。
2027年3月期第1四半期の売上収益は5,539億87百万円で、前年同期比+13.1%の増収でした。営業利益は1,011億75百万円(同+6.4%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は580億60百万円(同+19.2%)です。売上収益と調整後EBITDAは、いずれも第1四半期として過去最高を更新しました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【LINEヤフー株式会社(証券コード:4689)徹底解説】メディア・EC・フィンテックを束ねる巨大デジタル基盤企業
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
同社の事業は、インターネット広告、EC、キャッシュレス決済や銀行などの金融サービスにまたがっています。今期の第1四半期は、広告の中でも商品ごとに明暗が分かれる結果となりました。ディスプレイ広告と検索広告が前年同期比で減収となった一方、アカウント広告は高い伸びを続けています。
決算短信によると、アカウント広告は「LINE公式アカウント」の有償アカウント数の増加や従量課金の拡大を背景に、前年同期比+13.3%の増収でした。企業が顧客と直接つながる手段として、メッセージ配信型の販促への需要が根強いことがうかがえます。表示回数や検索に依存する広告から、顧客との継続的な接点を持つ広告へと、予算の配分が移っている可能性があります。
決済領域では、PayPay連結取扱高が5.5兆円(前年同期比+23.0%)と順調に増えています。PayPay銀行の貸出金残高も1兆3,348億円(同+37.5%)まで拡大しました。キャッシュレス決済の利用拡大が、同社の金融事業の成長を後押ししていると見られます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
LINEヤフー株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信(PDF)
第1四半期の売上収益は5,539億87百万円で、前年同期の4,896億31百万円から643億円余り増加しました。営業利益は1,011億75百万円で、前年同期の950億71百万円から+6.4%の増益です。営業利益率は18.3%となり、前年同期の19.4%からは1.1ポイント低下しました。
四半期利益は753億87百万円で、このうち親会社の所有者に帰属する四半期利益は580億60百万円です。前年同期の487億16百万円から+19.2%増えました。基本的1株当たり四半期利益は8.47円で、前年同期の6.84円を上回っています。
同社が重視する調整後EBITDAは1,548億円で、前年同期比+23.1%の増益でした。販売促進費や支払手数料、人件費を中心に販管費が増えたものの、増収効果がそれを上回ったと説明されています。調整後EBITDAの伸びが営業利益の伸びを大きく上回っている点は、今回の特徴の一つです。
財政状態は、第1四半期末の資産合計が11兆6,124億55百万円で、前期末から+3.6%増加しました。資本合計は3兆7,238億54百万円です。銀行事業の住宅ローン債権や預金の増加が、資産と負債の双方を押し上げています。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も重要なのは、前期に連結子会社化した企業の寄与と既存事業の成長が重なり、2桁の増収となった点です。決算短信では、BEENOS、LINE MAN CORPORATION、LINE Bank Taiwanの連結子会社化による増収が挙げられています。これに加え、PayPay連結売上やアカウント広告、「LYPプレミアム」、「Yahoo!ショッピング」も伸びました。
セグメント別に見ると、戦略事業の成長が際立っています。戦略事業の売上収益は1,302億円(前年同期比+34.9%)、調整後EBITDAは350億円(同+64.4%)でした。PayPay連結の成長に加え、LINE Bank Taiwanの連結化やLINE Pay Taiwanの事業拡大が寄与しています。
コマース事業の売上収益は2,428億円(同+12.5%)、調整後EBITDAは420億円(同+10.2%)です。メディア事業は売上収益1,820億円(同+2.6%)と伸びは小さいものの、調整後EBITDAは761億円(同+14.2%)と2桁の増益でした。人件費や生成AI関連費用を中心に販管費が減ったことが、メディア事業の利益を押し上げています。
一方、営業利益の伸びは+6.4%にとどまりました。調整後EBITDAは減価償却費などを除いた指標のため、営業利益とは費用の範囲が異なります。子会社化に伴う償却費の増加などが、伸び率の差につながっている可能性があると考えられます。
4. 今期の重点領域と収益構造
同社の収益は、メディア事業、コマース事業、戦略事業の3つの柱で構成されています。第1四半期の売上収益はコマース事業が最も大きく、調整後EBITDAではメディア事業が最大の稼ぎ頭です。メディア事業は売上収益に対する調整後EBITDAの比率が高く、利益面で全体を支える役割を担っています。
メディア事業の中では、アカウント広告とユーザー課金が成長をけん引しています。ユーザー課金他の売上収益は前年同期比+12.5%で、2026年2月に始まった「LYPプレミアム with Netflix」が会員数の増加につながりました。広告主からの収益と利用者からの課金収益を組み合わせる構造が、同社の強みと見られます。
同社は2027年3月期について、成長の要となる領域に規律ある投資を行い、増収増益を目指すとしています。通期予想は売上収益2兆2,400億円(前期比+10.0%)、調整後EBITDA 5,850億円(同+17.8%)、調整後EPS 30.0円(同+4.4%)です。第1四半期時点の進捗率は、売上収益で24.7%、調整後EBITDAで26.5%となっています。
その一方で、事業の選択と集中も進めています。「LINEショッピング」と「LINE BITMAX」は、2026年6月1日にサービスを終了しました。成長領域へ経営資源を振り向ける姿勢が、サービス構成の見直しにも表れています。
5. 業界の注目ポイント
「LINE公式アカウント」を軸にしたアカウント広告の伸び
LINEマーケティングツールの領域で注目されるのは、アカウント広告の成長です。第1四半期のアカウント広告の売上収益は前年同期比+13.3%となり、高い伸びを続けています。決算短信では、有償アカウント数の増加と従量課金の拡大が要因として示されました。
有償アカウント数の増加は、LINE上での顧客接点づくりに費用をかける企業が増えていることを意味します。従量課金の拡大は、既存の利用企業がメッセージ配信の量を増やしていることの表れと考えられます。ディスプレイ広告や検索広告が減収となる中で、アカウント広告はメディア事業の成長を支える存在になっています。
企業側から見ると、配信量に応じて費用が増える仕組みのため、配信の効果測定や対象の絞り込みが重要になります。LINE公式アカウントと連携する配信管理や顧客管理のツールへの関心が、今後さらに高まる可能性があります。
PayPayを中心とした金融事業の拡大
戦略事業は、今回の第1四半期で最も高い成長率を記録しました。PayPay連結取扱高は5.5兆円と、前年同期比+23.0%増えています。決済の利用が増えることで、手数料収入に加えてカードや銀行などの周辺サービスにも顧客が広がりやすくなります。
PayPay銀行の貸出金残高は1兆3,348億円で、前年同期比+37.5%の伸びでした。第1四半期末の資産合計が増えた主な理由の一つも、銀行事業の住宅ローン債権の増加です。戦略事業の調整後EBITDAが+64.4%と大きく伸びたことから、金融事業は規模の拡大とともに利益貢献も高まる段階に入ったと見られます。
連結子会社化によるコマース事業の拡張
コマース事業では、BEENOSとLINE MAN CORPORATIONの連結子会社化が増収に寄与しました。「Yahoo!ショッピング」やZOZOグループも増収となり、既存事業と新たな連結先の両方が売上を押し上げています。コマース事業の売上収益2,428億円は、全社で最大の規模です。
ただし、連結子会社化に伴い販売促進・広告宣伝費や人件費などの費用も増えています。調整後EBITDAの伸びが+10.2%と売上収益の伸びをやや下回った点は、統合初期の費用負担を反映したものと考えられます。取り込んだ事業の採算をどこまで高められるかが、コマース事業の今後の焦点になりそうです。
6. ITトレンド編集部の考察
今回の第1四半期決算は、売上収益5,539億87百万円(前年同期比+13.1%)と2桁の増収でした。調整後EBITDAも1,548億円(同+23.1%)と、成長の勢いが明確な内容です。前期に実施した連結子会社化の効果に加え、PayPayやアカウント広告など既存の成長領域も伸びています。3つのセグメントすべてで調整後EBITDAが増益となった点は評価できます。
一方で、営業利益の伸びは+6.4%にとどまり、営業利益率は前年同期から低下しました。調整後EBITDAとの伸び率の差がどのような費用に起因するのかは、今後の開示で確認する必要があります。広告の中でも、ディスプレイ広告と検索広告が減収となっている点には注意が必要です。
LINEマーケティングツールの観点では、「LINE公式アカウント」の有償アカウント数と従量課金の拡大が続いている点が重要です。企業のLINE活用が広がるほど、配信の最適化や顧客管理を支援するツールの需要も高まると見られます。通期予想に対する売上収益の進捗率は24.7%です。前期は第1四半期の売上収益が通期実績の24.0%でしたので、順調な滑り出しと考えられます。
7. まとめ
- 2027年3月期第1四半期の売上収益は5,539億87百万円(前年同期比+13.1%)で、第1四半期として過去最高
- 営業利益は1,011億75百万円(同+6.4%)、営業利益率は18.3%
- 親会社の所有者に帰属する四半期利益は580億60百万円(同+19.2%)
- 調整後EBITDAは1,548億円(同+23.1%)で、第1四半期として過去最高
- 戦略事業は売上収益1,302億円(同+34.9%)、調整後EBITDA 350億円(同+64.4%)と大きく成長
- アカウント広告の売上収益は前年同期比+13.3%、PayPay連結取扱高は5.5兆円(同+23.0%)
- 資産合計は11兆6,124億55百万円、資本合計は3兆7,238億54百万円
- 通期予想は売上収益2兆2,400億円(前期比+10.0%)、調整後EBITDA 5,850億円(同+17.8%)、調整後EPS 30.0円(同+4.4%)
- 年間配当は11.0円を予想(前期は7.3円)
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

