Retty株式会社(証券コード:7356)は、実名型グルメプラットフォーム「Retty」を運営する企業です。実名の口コミを軸にした飲食店の情報サービスに加えて、飲食店向けの集客支援サービスや販促ソリューションを提供しています。単一セグメントで事業を運営しており、売上は飲食店支援サービスと統合ソリューションの二本立てで構成されています。
2026年9月期 第3四半期累計期間(2025年10月〜2026年6月)の業績は、売上高11億30百万円(前年同期比-7.9%)となりました。営業損益は17百万円の損失、経常損益は25百万円の損失です。一方で、投資有価証券売却益を特別利益に計上したことにより、四半期純利益は54百万円の黒字を確保しました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【Retty株式会社(証券コード:7356)徹底解説】2026年9月期第2四半期──売上6.2%減も費用削減で営業利益9.2%増、飲食店SaaS転換の中間点
1. 通期着地を左右する市場環境
同社の説明によれば、当期の国内経済は緩やかな回復基調で推移しました。飲食業界についても、外食支出の回復やインバウンド需要の影響から回復傾向にあるとしています。需要面では、飲食店を取り巻く環境に明るさが戻りつつある局面です。
ただし、コスト面の重石は残っています。原材料価格の上昇と人手不足は、飲食店の経営環境に厳しい材料として残存していると同社は指摘しています。集客支援サービスを購入する側である飲食店の余力が、そのまま同社の受注環境に反映される構造です。需要が戻っても、販促予算の増加にすぐ結びつくとは限りません。
通期の着地を左右するのは、この販促予算の回復ペースと、同社自身の販売体制の切り替えがどう噛み合うかです。同社は代理店チャネル中心から直販中心の獲得体制へ転換する過渡期にあると説明しています。市場環境よりも、自社の体制移行が業績を規定する局面に入っていると考えられます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
Retty株式会社 2026年9月期 第3四半期決算短信(PDF)
第3四半期累計期間の売上高は11億30百万円となり、前年同期の12億27百万円から-7.9%の減収となりました。内訳は飲食店支援サービスが9億31百万円、統合ソリューションが1億98百万円です。第2四半期累計時点の減収率が-6.2%でしたので、第3四半期にかけて減収幅がやや広がった形になります。
費用面では、売上原価が3億65百万円(前年同期比-4.2%)、販売費及び一般管理費が7億82百万円(同-7.4%)となりました。いずれも前年同期から圧縮されています。それでも売上の減少を吸収しきれず、営業損益は17百万円の損失となりました。前年同期はほぼ収支が均衡した水準でしたので、そこからの後退です。
経常損益は25百万円の損失です。支払利息などの営業外費用が8百万円計上された一方、助成金収入などの営業外収益は1百万円にとどまりました。ここまでは本業の厳しさがそのまま表れた形です。
これに対して四半期純利益は54百万円の黒字となりました。投資有価証券売却益92百万円を特別利益として計上したことによるものです。前年同期は6百万円の四半期純損失でしたので、最終損益は黒字転換しています。ただし本業の改善による黒字ではない点には留意が必要です。
財政状態については、第3四半期会計期間末の総資産が9億76百万円となり、前事業年度末から44百万円増加しました。純資産は3億93百万円で、四半期純利益の計上により54百万円増加しています。負債側では1年内返済予定の長期借入金が258百万円増加した一方、長期借入金が263百万円減少しており、借入の区分が入れ替わった形です。
通期予想は下方修正されました。修正後は売上高14億96百万円(前期比-8.2%)、営業利益10百万円(-48.1%)、経常利益0百万円(-93.6%)、当期純利益79百万円(+581.4%)です。当期純利益の大幅増は、特別利益として計上した投資有価証券売却益92百万円によるものです。
3. 直近決算の重要ポイント
最も注目すべきは、第3四半期単独の急激な悪化です。同社の開示によれば、第3四半期会計期間の売上高は3億35百万円、営業損失は38百万円でした。上半期累計では営業黒字を確保していましたので、第3四半期の3か月間で損益が大きく崩れたことになります。
その要因は三つ挙げられています。第一に、案件単位で受注するフロー型の統合ソリューションで、一部案件の失注と計上時期の期ずれが発生しました。第二に、飲食店支援サービスで一部のアライアンス案件の契約期間が終了しました。第三に、直販体制の強化に向けた人材採用に伴う採用関連費用が発生しています。
二つ目の論点は、お店会員数の減少です。当第3四半期累計期間において、お店会員数(固定と従量の合計)は7,435件から6,734件へ減少しました。うち固定会員は5,045件から4,746件への減少です。解約率の高い特定代理店経由の店舗整理はほぼ完了したものの、代理店チャネルでの新規参画店舗数の減少が響いた形です。
三つ目は、経営陣が結果に対する姿勢を示した点です。通期業績予想が期初計画を下回る見通しとなったことを受け、社内取締役3名について2026年7月から9月までの3か月間、月額報酬の20%を自主返納することが決定されています。
4. Q3時点の事業進捗
同社の収益は性質の異なる二つの流れで構成されています。飲食店支援サービスは、お店会員からの月額固定料金と従量課金による積み上げ型の収益です。統合ソリューションは、案件単位で受注するフロー型の収益であり、四半期ごとの変動が大きい性質を持ちます。
今回の減収は、この両方が同時に押し下げ要因となった結果です。飲食店支援サービスでは会員数の減少が響きました。ARPU(月額固定支払いのあるお店会員の売上計上ベースの単価)については、新規参画店舗の単価は前年同期比で上昇している一方、廉価な法人プランの一時的な増加と、満期更新時に一部の有料会員が価格の低いプランへ移行したことが上昇の抑制要因になっていると説明されています。
統合ソリューションは、失注と期ずれの影響を直接受けました。フロー型の収益は積み上がりが効かないため、四半期単位の業績を大きく振らせます。同社は2026年6月に事業構造改革を実施しており、人件費などの固定費削減効果は第4四半期以降に発現する見込みとしています。第4四半期の売上高は、その大宗を契約済みの継続収益と受注済み案件が占めるとも説明されています。
5. 業界の注目ポイント
代理店から直販への転換コスト
同社は獲得体制を代理店チャネル中心から直販中心へ切り替える過渡期にあります。直販化は、顧客との接点を自社で握り、解約率や単価をコントロールしやすくする狙いがあると考えられます。中長期で見れば、収益の質を高める方向の施策です。
ただし移行期には痛みが伴います。代理店経由の新規獲得が細る一方で、自社の営業体制が立ち上がるまでには時間がかかります。今回の決算では、直販体制の強化に向けた人材採用に伴う採用関連費用が損益を圧迫しました。獲得数の空白期間をどれだけ短くできるかが、転換の成否を分けると見られます。
フロー型収益への依存度をどう扱うか
統合ソリューションは売上高1億98百万円と、全体の2割弱を占める規模です。この領域で発生した失注と期ずれが、通期業績予想の下方修正における主たる要因となりました。同社の説明では、統合ソリューションによる営業利益への影響は30百万円のマイナスとされています。
一方、飲食店支援サービスの売上減少による営業利益への影響は5百万円のマイナスにとどまりました。売上の減少に伴う販売手数料の減少と、一部営業施策の見直しによる販売促進費の減少が、売上減の大部分を吸収したためです。ストック型の事業は減収局面でも利益への影響が緩和されやすいことを示す結果と考えられます。
財務基盤と借入構造の見極め
第3四半期会計期間末の純資産は3億93百万円、総資産は9億76百万円です。負債総額は5億82百万円で、前事業年度末から10百万円減少しました。借入金の総額は大きく変わっていないものの、長期借入金263百万円が1年内返済予定へと振り替わっています。
短期の返済負担が前面に出る構造になったため、手元資金と営業キャッシュ・フローの推移は注視が必要です。現金及び預金は22百万円増加しており、当面の資金繰りに逼迫感は見られません。ただし、本業が営業損失の状態が続けば、財務の自由度は徐々に狭まると考えられます。
6. ITトレンド編集部の考察
Rettyの2026年9月期第3四半期は、最終損益の黒字と本業の赤字が同居する、読み解きに注意を要する決算だったと受け止めています。四半期純利益54百万円という数字だけを見れば好転したように映りますが、その原資は投資有価証券売却益92百万円です。営業損益17百万円の損失、経常損益25百万円の損失という本業の実態を切り離して見る必要があります。
とりわけ重いのは、第3四半期単独で営業損失38百万円を計上した点です。上半期は営業黒字を維持していただけに、この3か月間の落ち込みは事業モデルの脆さを示しました。フロー型の統合ソリューションで案件が一つ二つずれるだけで四半期損益が反転する構造は、収益の予見性という観点では課題が残ります。
もっとも、同社が打った手は明確です。2026年6月の事業構造改革による固定費削減効果は第4四半期以降に発現する見込みであり、第4四半期の売上は契約済みの継続収益と受注済み案件が大宗を占めるとされています。修正後の通期営業利益10百万円という水準は、この前提に立てば現実的な着地と見られます。実名口コミという資産を飲食店向けのストック型サービスへどこまで転換できるかが、来期以降の焦点になりそうです。
7. まとめ
Retty株式会社(証券コード:7356)の2026年9月期 第3四半期決算のポイントを整理します。
- 売上高は11億30百万円(前年同期比-7.9%)。飲食店支援サービス9億31百万円、統合ソリューション1億98百万円
- 営業損益は17百万円の損失、経常損益は25百万円の損失。売上原価3億65百万円、販管費7億82百万円と費用は圧縮
- 四半期純利益は54百万円の黒字。投資有価証券売却益92百万円の特別利益計上によるもの
- 第3四半期単独では売上高3億35百万円・営業損失38百万円と、上半期の営業黒字から悪化
- お店会員数は7,435件から6,734件へ減少(うち固定は5,045件から4,746件)
- 通期予想は下方修正され、売上高14億96百万円(-8.2%)、営業利益10百万円(-48.1%)、当期純利益79百万円(+581.4%)
- 2026年6月実施の事業構造改革による固定費削減効果は第4四半期以降に発現する見込み
ITトレンド編集部
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