
EPMとは
EPMとは「Enterprise Project Management」の略で、企業の業務をプロジェクトとして管理することです。EPMでは企業が取り組む各業務をすべてプロジェクトと見なして管理します。利益を最大化するためにはあらゆる業務をチェックし、人事、営業、マーケティングやITなどの他の業務部門で使用されています。
企業の競争力を高めるため重要
従来は、企業における業務の管理は比較的緩やかでした。ところが、1990年代頃から状況は変わります。IT技術の進歩やグローバル化に伴い、企業は短納期かつ低コストで高い成果を上げることが求められるようになりました。
このような背景から、EPMが重要視されるようになりました。業務の管理にガントチャートやWBSといったプロジェクト管理手法を適用することで、企業の競争力を高められます。
EPMでできること(活用シーンの具体例)
EPMは、プロジェクト管理にとどまらず、企業内の多様な業務を横断的に可視化・最適化できるのが特徴です。具体的には以下のようなシーンで活用されています。
- ● 予算や目標を部門ごとに設定・進捗をリアルタイムに管理
- ● 営業部門のキャンペーン実施計画と成果を可視化
- ● マーケティング施策のKPI進捗とコスト配分を統合管理
- ● 情報システム部門での開発案件やIT投資のプロジェクト統制
このようにEPMは業種や部門を問わず、「部門横断の業務管理基盤」として活用されるケースが増えています。プロジェクトマネジメントの枠を超えて、企業全体のパフォーマンス最大化を支援する仕組みです。
EPMのメリット
続いて、EPMのメリットを見ていきましょう。
業務プロセスの実施状況の把握が可能
従来の業務管理では業務の状況が不透明なのが問題でした。進捗状況はどうなのか、どれほどのコストがかかっているのかなどを、大まかにしか把握できませんでした。しかし、EPMを導入すれば業務プロセスを可視化できます。問題があれば速やかに発見でき、迅速に軌道修正することで円滑に業務を進められるでしょう。
具体的に可視化できる管理要素は以下のとおりです。
- ■タスク管理
- WBSによりタスクを整理できる
- ■コスト管理
- どの作業にどの程度のコストがかかっているかを把握できる
- ■スケジュール管理
- 現在の進捗状況と今後の予定を把握できる
- ■品質管理
- 課題を浮き彫りにし、作業の改善につなげられる
- ■コミュニケーション管理
- 現場から上がる質問やそれへの回答を蓄積できる
- ■要員管理
- 作業に要する人員を把握し、適切な人材配置につなげられる
業務ノウハウの蓄積が可能
自社が持つノウハウを適切に管理できている企業は多くありません。せっかくノウハウを生み出せても、部門での所有にとどまり、企業全体としての資産にはならないケースが多いです。
しかし、EPMを導入すれば社内でノウハウを蓄積・共有できます。すべての部門の業務を単一のフォーマットで管理可能なためです。企業の資産としてノウハウを蓄積できれば、部門の垣根を超えて業務を最適化できます。
EPMのデメリット
EPMは企業の活動をすべてプロジェクトとして管理することですが、これを人力で実現するのは困難です。したがって、EPMを導入するには専用のITツールが必要になります。導入するITツールは、情報を統合できるERPや、分析やレポーティングができるBIツールがおすすめです。特にERPは、業務データの一括管理が可能なため全体の管理がしやすくなるでしょう。
また、ツールの活用までには手間と時間もかかります。たとえば、他の業務システムとの連携性が悪ければ、データをEPM上に集約するのは難しいかもしれません。さらに、データに振り回されるリスクもあります。データはあくまで判断材料であるため、それをうまく活用できる体制や計画が必要です。
EPMとERP・BIとの違い
EPMと似た概念にERPやBIがありますが、それぞれ目的や役割に明確な違いがあります。以下で詳しく解説します。
EPMとERPの違い
ERPは「Enterprise Resource Planning」の略で、企業の会計・販売・在庫・人事など、日々の業務を処理・管理する基幹業務システムです。一方で、EPM(Enterprise Performance Management)は、これらの業務情報をもとに業績を分析し、予算や計画の立案、目標管理などを行うための管理系の仕組みです。
つまり、ERPが「業務を記録・処理するツール」であるのに対し、EPMは「経営目標を達成するための管理・分析の仕組み」という違いがあります。ERPはEPMの土台となるデータを提供する存在であり、EPMはそのデータを活用して業務を最適化するという補完関係にあります。ERPの詳しい概要については以下の記事をご覧ください。
EPMとBIの違い
BIは「Business Intelligence」の略で、企業内のデータを収集・可視化し、現状を把握するためのツールです。BIツールはダッシュボードやレポート機能を通じて、定量的なデータの把握や意思決定をサポートします。
一方、EPMは、BIのようにデータを分析するだけでなく、その分析結果をもとに予算編成や計画立案、目標管理といった「業績管理プロセス」に活用する点が大きな違いです。BIは「今を見える化する」ためのツール、EPMは「未来をつくるための意思決定を支える」仕組みとして位置づけられます。
EPMの導入で業務を可視化し付加価値を最大にしよう
EPMとは業務をプロジェクトとして管理することです。ERPやBIとの違いは以下のとおりです。
- ■ERP
- EPMを運用するのに必要なツール
- ■BI
- 定義は違うがEPMとほぼ同じ
また、EPMを導入することで以下のメリットを得られます。
- ■業務プロセスの実施状況を把握できる
- ■業務ノウハウを蓄積できる
上記のメリットを活用すれば業務を効率化・合理化できます。EPMを導入し、業務の価値を高めていきましょう。
