株式会社SHIFTは、第三者検証の立場からソフトウェアのテスト・品質保証を専門的に受託する企業であり、近年はソフトウェア開発、コンサルティング、BPaaSなど事業領域を拡大しています。2026年8月期第3四半期累計期間(2025年9月〜2026年5月)の連結業績は、売上高1,158億48百万円(前年同期比+21.4%)と大幅な増収を確保した一方、営業利益113億83百万円(同-4.3%)、経常利益73億12百万円(同-37.1%)、親会社株主に帰属する四半期純利益39億79百万円(同-36.6%)と、増収減益の決算となりました。
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株式会社SHIFT(証券コード:3697)の決算解説
本記事では、通期着地を左右する市場環境、業績の推移、増収減益の背景、そして修正後の通期予想を整理します。
1. 通期着地を左右する市場環境
当第3四半期累計期間のわが国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、物価の上昇に加え、米国の通商・関税政策の動向や中東情勢の不安定化など、先行きは依然として不透明な状況が続いています。
同社がサービスを提供するソフトウェア関連市場では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への取り組みに加え、生成AI等の新技術の実ビジネスへの実装が急激に進展しています。システム開発の現場では機能の複雑化や開発サイクルの高速化が進んでおり、重大なシステム障害を未然に防ぐための専門的な品質保証・テスト業務に対する社会的需要は、ますます高まりを見せていると考えられます。同社はこうした環境変化を追い風と捉え、「生成AIネイティブカンパニー」への進化を掲げ、AIテストエージェントの提供やAIによるシステム仕様可視化など、生成AI関連サービスを次々と創出しています。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社SHIFT 2026年8月期 第3四半期決算短信(PDF)
当第3四半期累計期間の売上高は1,158億48百万円(前年同期比+21.4%)となりました。株式会社ニッセイコムを連結の範囲に含めたことや、営業活動の強化が寄与し、堅調な増収を実現しています。
一方で損益面では、営業利益113億83百万円(同-4.3%)、経常利益73億12百万円(同-37.1%)、親会社株主に帰属する四半期純利益39億79百万円(同-36.6%)と、増収の一方で減益となりました。前連結会計年度に戦略的に抑制していた採用活動の正常化に伴う採用費の増加や、将来の大型案件獲得に営業リソースを戦略的に集中させたことによる稼働率の一時的な悪化が、営業利益の伸びを抑制した主な要因です。経常利益・純利益の落ち込みが営業利益より大きいのは、持分法による投資損失38億72百万円を新たに計上したことが影響しています。
通期の業績予想は、2025年10月14日公表の数値から修正され、売上高160,000百万円(前期比+23.2%)となりました。あわせて公表された調整後指標では、調整後営業利益20,000百万円、調整後経常利益16,000百万円、親会社株主に帰属する調整後四半期(当期)純利益9,000百万円を計画しており、第3四半期実績の進捗率は売上高72.4%、調整後営業利益65.8%、調整後経常利益56.8%、調整後純利益64.0%となっています。
3. 直近決算の重要ポイント
セグメント別に見ると、主力のソフトウェアテスト関連サービスは売上高74億5百万円(前年同期比20.5%増)※セグメント計上額74,534百万円、営業利益156億62百万円(同-3.1%)となりました。顧客目線での提案の徹底により売上高が上昇した一方、採用活動の正常化に伴う採用費の増加が利益を押し下げています。ソフトウェア開発関連サービスは売上高359億78百万円(同+20.7%)、営業利益17億61百万円(同-19.4%)で、採用費の先行投資が利益を圧迫しました。その他近接サービスは売上高98億92百万円(同+29.4%)、営業利益7億86百万円(同+94.7%)と大きく伸長しています。
特別損益では、減損損失5億1百万円、投資有価証券評価損3億2百万円を計上した一方、投資有価証券売却益2億80百万円を計上しました。また、2026年1月14日の取締役会決議に基づき自己株式7,900,000株(6,341百万円)を取得しており、株主還元の姿勢も示しています。
顧客単価・顧客数・プロジェクト単価・プロジェクト数はいずれも上昇トレンドを継続しており、AI関連売上は当第3四半期累計期間で114億14百万円に達しました。M&Aによりのれんが114億30百万円増加し19,296百万円となるなど、事業拡大に向けた投資も積極的に進めています。
4. Q3時点の事業進捗
同社は売上高3,000億円企業に向けた成長戦略「SHIFT3000」を掲げ、営業力・サービス・人事/採用力・M&A/PMI力を掛け合わせた事業拡大を進めています。今期は株式会社ニッセイコムの連結子会社化により、ソフトウェア開発関連サービスの資産が297億68百万円増加するなど、M&Aを通じた事業領域の拡大が続いています。
収益構造の面では、主力のソフトウェアテスト関連サービスが売上高の過半を占めつつ、営業利益の大半を稼ぐ収益源であることに変わりはありません。一方で、その他近接サービスの営業利益が前年同期比94.7%増と急伸しており、Windows11搭載PCへの入れ替え需要などを取り込んだ一部グループ会社の好調が寄与しています。事業ポートフォリオの多角化が、テスト事業単独への依存度を徐々に下げつつある状況がうかがえます。
財務面では、資産合計が前期末比282億78百万円増の1,052億79百万円となった一方、短期借入金が187億円増加するなど、M&A資金を借入で賄う動きも見られます。自己資本比率は36.1%に低下しており、積極投資と財務健全性のバランスが今後の課題になると考えられます。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:採用費増加と稼働率低下という成長投資の副作用
前期に抑制していた採用活動を正常化したことによる採用費増加、大型案件獲得に向けた営業リソースの戦略的集中による稼働率の一時的悪化が、今期の増収減益の主因です。これらは成長投資としての性格が強く、今後の売上拡大にどう結びつくかが焦点となります。
ポイント2:持分法投資損失が経常利益・純利益を大きく押し下げ
営業利益の減益幅(-4.3%)に対し、経常利益(-37.1%)・純利益(-36.6%)の落ち込みがより大きいのは、持分法による投資損失38億72百万円の計上が主因です。関連会社の業績動向が同社の連結損益に与える影響は、今後も注視すべきポイントといえます。
ポイント3:AI関連サービスの立ち上がりと非連続成長への移行
AIテストエージェントなど生成AI関連サービスが次々と創出され、AI関連売上は114億14百万円に達しました。顧客単価・顧客数・プロジェクト単価・プロジェクト数がいずれも上昇トレンドにあることは、同社が主張する「非連続な成長軌道」への移行を裏付ける材料と見られます。
6. ITトレンド編集部の考察
2026年8月期第3四半期累計を一言で表すと「増収は堅調に続くものの、採用費増加・稼働率低下・持分法投資損失という複数の要因が重なり、増益基調が一時的に途切れた四半期」です。売上高+21.4%という高い伸びは、M&Aによる連結範囲拡大と営業活動の強化が着実に効果を発揮していることを示しています。
一方で、営業利益の減益幅(-4.3%)に比べ経常利益・純利益の落ち込みが大きい点は、本業以外の要因(持分法投資損失など)が今期の収益性を押し下げたことを意味しており、本業の実力を評価する上では営業利益ベースの動向がより重要と考えられます。採用費増加や稼働率の一時的悪化は、将来の大型案件獲得に向けた戦略的な投資という側面もあり、これが売上・利益にどう還元されるかが今後の焦点です。
通期予想が修正され、調整後指標での開示に切り替わったことも踏まえると、会社側はM&Aによる非連続成長と、それに伴う一時的な収益性の変動を織り込んだ経営を進めていると見られます。第4四半期にかけて、採用費の一巡や稼働率の回復が利益率改善にどうつながるか、注目が必要です。
7. まとめ
株式会社SHIFTを一言で表すと、「M&Aと営業強化で増収を続けながら、採用費増加・持分法投資損失という一時要因で減益となった成長投資フェーズの企業」です。
2026年8月期第3四半期累計期間(2025年9月〜2026年5月)の業績は以下のとおりでした。
- 売上高 1,158億48百万円(前年同期比+21.4%)
- 営業利益 113億83百万円(同-4.3%)
- 経常利益 73億12百万円(同-37.1%)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益 39億79百万円(同-36.6%)
セグメント別ではソフトウェアテスト関連サービスが売上高+20.5%・営業利益-3.1%、ソフトウェア開発関連サービスが売上高+20.7%・営業利益-19.4%、その他近接サービスが売上高+29.4%・営業利益+94.7%でした。株式会社ニッセイコムの連結子会社化によりのれんが114億30百万円増加しています。
通期の業績予想は売上高160,000百万円(前期比+23.2%)に修正され、調整後営業利益20,000百万円・調整後経常利益16,000百万円・調整後純利益9,000百万円を計画しています。採用費や稼働率の影響が一巡し、第4四半期にかけて利益率が改善するかが注目されます。

