顧客ニーズをAIでどう分析する?~定量データから潜在ニーズ・消費者インサイトの仮説を組み立てる方法~
アンケートで顧客ニーズを把握できても、「なぜそのニーズが生まれているのか」までは見えにくいことがあります。それは、購入理由や不満や要望などから「何を求めているか」は確認できても、同じ回答の背景にある実際の状況や価値観は、人によって異なるためです。
消費者インサイトにつながる仮説を組み立てるには、一つの回答だけを見るのではなく、属性差や関連する悩み、対処行動、改善ニーズなど、複数のデータをあわせて見ることが重要です。
本記事では、実際の生活者アンケートデータを例に、定量データをどのように重ねて見ると、潜在ニーズや消費者インサイトにつながる仮説を組み立てられるのかを解説します。その整理にAIをどのように活用できるのかも紹介します。
顧客ニーズ・潜在ニーズ・消費者インサイトの違い
顧客ニーズは、生活者や顧客が抱える困りごとや、商品・サービスに求めていることを指します。その中でも「潜在ニーズ」は、本人が明確には認識・言語化していない欲求を指します。
一方、消費者インサイトは、ニーズや行動・選択が生まれる背景にある心理や価値観、生活上の文脈を読み解いた洞察です。定量データだけからインサイトを確定できるわけではないため、本記事では「消費者インサイトにつながる仮説」として整理します。
たとえば「疲れを改善したい」という回答があっても、その背景は同じとは限りません。忙しくて十分に休めない人もいれば、睡眠をとっても疲れがとれない人、肩こりなど複数の不調を抱えている人もいます。そのため、インサイトを考えるときは、「何を求めているか」だけでなく、「誰が」「どのような状況で」「どのように対処しているか」まで見ることがポイントです。
定量データから消費者インサイトの仮説をどう組み立てる?
ここからは、実際のアンケートデータを使って見ていきます。
今回は、マイボイスコムのアンケートデータベース「MyEL」で実施した「健康の悩み・ニーズに関する調査」を例に、全体傾向、属性差、関連する悩みや行動をあわせて見ながら、消費者インサイトにつながる仮説を組み立てる流れを整理します。
まず全体傾向を見ると、心身の不調を「時々」以上感じている人は約7割(73.6%)でした。健康上の悩みでは、「疲れやすい・疲れがとれにくい」が4割超(42.9%)、「睡眠に関すること」が3割台半ば(35.9%)と高くなっています。この結果から、まず「疲れ」や「睡眠」が多くの人に共通する健康上の悩みとして表れていることが分かります。
ただし、全体傾向だけでは、どの層でこうした悩みが多いのかまでは分かりません。
次に、どの層にその傾向が強いのかを見ます。性年代別に見ると、「疲れやすい・疲れがとれにくい」は女性30代で54.0%、40代で58.3%、50代で50.6%と、女性30~50代ではいずれも5割を超えています。さらに、この層では肩・首・背中のこりや、目に関する悩みも比較的多くみられます。
つまり、「疲れやすい」という回答だけを見るのではなく、どの層に多いのか、ほかにどのような悩みとあわせて現れているのかを見ることで、その背景を考えるための手掛かりが具体的になってきます。
次に、現在の対処行動と改善ニーズを確認します。健康上の悩みへの対処としては、睡眠や休養、運動、食生活の改善、ストレッチ、サプリメントの利用、医療機関の受診などがあります。若年層では睡眠や休養が中心となる一方、40代以上では医療機関への受診が増えるなど、対処方法にも違いがみられます。
ここで重要なのは、悩みがあることと、現在の対処で十分に解決できていることは別だという点です。何らかの対処をしていても悩みが残っているのであれば、現在の方法では十分に満たされていないニーズがある可能性があります。
さらに、「疲れやすい」と回答した人の改善ニーズを見ると、「疲労回復しやすくなる・疲れがたまりにくくなる」が61.7%と最も高く、「睡眠の質の維持・向上」が40.5%、「だるさ・倦怠感の軽減」が35.8%と続きます。つまり、「疲れを何とかしたい」というニーズの中にも、疲労そのものの回復、睡眠の質の改善、だるさ・倦怠感の軽減など、複数の改善したいポイントがあることが分かります。
さらに、属性差(性年代)、関連する悩み、対処行動、改善ニーズまであわせて見ることで、同じ「疲れやすい」という悩みでも、背景要因の異なる複数のタイプが存在するのではないか、という仮説を立てることができます。(図1③)仮説としては、仕事や生活上の負担が重なっている層、睡眠や休養をとっても十分に回復できていない層、複数の不調が重なっている層などが考えられます。
これらはデータから直接確認された分類ではなく、複数の定量データをもとに整理した仮説です。AIは、その整理や比較の補助に活用できます。

AIで情報を整理し、インサイト仮説の切り口を広げる
複数の設問や属性を行き来しながらの分析は、AIを使って情報を整理することで、次に確認する切り口を広げることができます。
重要なのは、AIに「インサイトを出して」と任せることではありません。
たとえば、
「性年代で違いはあるか」
「悩みの深刻度と対処行動にギャップはないか」
「どのような改善ニーズがあるか」
といった分析視点を人が持ち、AIで素早く整理・比較していくことで、仮説を広げやすくなります。
今回の健康データの整理では、AI分析ツールCotoELの「生活者意識行動分析」を使い、もととなるMyELのアンケートデータを、性年代、悩みの深刻度、対処行動、改善ニーズなど、複数の切り口で整理しました。
AIが示した分類や解釈はそのまま結論とせず、元のデータと照らし合わせながら仮説として扱うことが重要です。
マーケティングで消費者インサイトの仮説をどう活かすか
分析を通じて消費者インサイトの仮説が見えてきたら、次はそれを商品やサービス、コミュニケーションにどう活かすかを考えます。今回の例でも、同じ「疲れやすい」という悩みがあっても、改善したいポイントは、疲労回復、睡眠の質の向上、だるさ・倦怠感の軽減など複数あります。さらに、その背景によって求める商品やサービス、効果的な訴求が異なる可能性があります。
こうした改善ニーズや背景の違いを捉えることは、「誰に、どのような価値を、どう伝えるか」を考える材料となり、商品企画やサービス改善、コミュニケーション設計にも活かせます。
CotoELでは、マイボイスコムが蓄積してきたMyELの生活者アンケートデータを使った今回のような分析に加えて、そこから見えてきた仮説を、生活者データをもとに生成したAIペルソナとの対話を通じて、さらに深掘りすることもできます。潜在ニーズや消費者インサイトにつながる仮説を、より深く検討したい場合の選択肢の一つとして活用できます。
まとめ
消費者インサイトにつながる仮説を組み立てるには、回答割合が高い項目だけを見るのではなく、属性差、関連する悩み、対処行動、改善ニーズなど、複数のデータをあわせて見ることが重要です。
全体傾向を見る → どの層で悩みが多いかを見る → 関連する悩みや行動を見る → 背景仮説を立てる
この流れの中でAIを活用することで、確認すべき観点を整理しながら、表面的な顧客ニーズの把握にとどまらず、その背景にある潜在ニーズや消費者インサイトにつながる仮説を整理しやすくなります。こうして得られた仮説は、商品企画やコミュニケーションを考える際の手がかりになります。
■CotoEL詳細はこちら⇒https://cotoel.myvoice.jp/info

