RPAの導入で自動化できる経理業務とは
RPAは、人の判断を必要としないルーティンワークの実施に適しています。経理業務はルールに従って行う定型業務が多いことから、RPAと相性がいいといわれています。例に挙げられるのは、請求書・納品書の作成やメールの送受信、銀行データの入金消込作業などです。また、伝票をAI-OCRで取り込み仕訳を自動化する記帳業務は効率化だけでなく、ヒューマンエラーも防げるでしょう。そのほか、売上データのエクセルファイルを会計ソフトへ転記するなど、複数のアプリケーションを横断するのも得意な業務です。

RPAの得意な業務
一般的に、RPAは次の業務に対して適性をもちます。
- ●手順が決まっている単純な定型業務
- ●複数のアプリケーションを横断する業務
- ●大量のデータ処理
- ●データ収集
- ●デジタルデータを扱う業務
RPAの苦手な業務
反対に、以下の作業はRPAの代行が難しいとされています。
- ●イレギュラーが多く、人間の判断が必要な作業
- ●ルールや仕様変更が頻発する業務
なお、エクセルのマクロでも一部の業務は自動化できますが、データの処理量・速度、できる業務の範囲に大きな差があります。

経理業務にRPAを導入するメリット
RPA導入により、経理業務にどのようなメリットがあるのか解説します。
従業員がコア業務に専念できる
例えば月次決算の遅延など、日々のルーティンワークに追われて重要な業務が滞ってしまうことはありませんか。また人材不足により、日々の作業で手一杯という企業もあるでしょう。激化する現代の競争社会では、迅速な経営判断が欠かせません。RPA導入により非定型業務を自動化すれば、より付加価値の高い業務に専念できます。
処理速度の向上やミスの削減が期待できる
従業員による作業は、集中力によって作業速度に差が出るほか、適宜休憩が必要です。対して、RPAであれば処理速度は一定です。特に業務の処理速度は、量が多いほどRPAのほうが優位といえるでしょう。
また、RPAは設定に間違いがなければ計算ミスを起こすことはありません。ヒューマンエラーをなくすより、簡単にミスを軽減できます。
コストの削減
RPAは人と異なり、24時間365日稼働可能です。対応できる作業量が増えるため、高いパフォーマンスが期待できます。結果的に人件費の削減にもつながるでしょう。
また、RPAの導入で従業員がコア業務に注力できるようになると、収益の増加も期待できます。RPAの導入・運用には費用がかかるものの、効果の高い業務を自動化できればコストは回収できるでしょう。
人手不足の解消
少子高齢化による労働人口の減少により、人手不足が深刻化しています。企業によっては、募集をかけても思うように人材が集まらないこともあるでしょう。しかしRPAを導入し、社内に存在する単純作業をロボットにまかせることで、人手不足を補う一つの手段としても活用できるのです。
そのほか、正確性とスピードを重視し、かつ単調な作業を苦手とする従業員も多くいます。こうした業務の自動化で従業員の満足度が高まると、離職率の減少につながるかもしれません。
専門知識不要で活用できる
市場で人気があるRPAツールには、特別な専門知識がなくても、簡単に活用できるものが多くあります。作業内容をロボットに記憶させる「シナリオ」作成の手順も、ベンダーで代行してくれたり、作業中のPC画面を録画するだけで簡単に利用開始できたりと、手軽に運用できるというメリットがあります。
RPAの普及により経理の仕事はなくなるのか
単純作業を効率化するRPAですが、経理の仕事すべてに取って代わり、経理の仕事に将来性がなくなるというわけではありません。
ロボットは、与えられたシナリオ以外のことには対応できません。想定外のことが起きた場合の修正や対応は、人間の判断が必要とされます。コア業務や非定型作業に注力し、RPAを人間の補助的な役割としてうまく活用すればよいでしょう。
経理業務を効率化するRPAの事例
経理業務をRPAによって自動化するとどのような効果があるのでしょうか。ツール活用の事例と効果を解説します。
入金の消込作業を自動化
日々の入金消込は、経理業務のなかでも特に工数がかかる作業です。目視で口座データと請求情報を照合し、手作業で会計システムに登録するのが一般的で、ミスのリスクも高くなります。特に処理件数が多い企業では、作業者の負担が蓄積し、業務効率の低下を招きがちです。
こうした作業には、RPAの活用が有効です。例えばネットバンキングの明細をCSVで取得し、消込に必要な情報を自動で加工する設定を組むことで、人手による確認を削減できます。会計システムへの登録も連携させれば、消込から記帳まで一連の処理を自動化可能です。
交通費精算やシステム入力の業務を自動化
交通費精算では、申請されたルートや金額が正しいかを確認する作業に多くの時間を要します。通常は経理担当者が交通費サイトを開き、ルートや料金を手作業で確認しますが、申請件数が増えると対応が追いつかなくなることもあります。
RPAを使えば、申請内容に応じた交通費をネット上で検索・取得し、金額の妥当性をチェックするフローを構築可能です。また、会計システムへの手入力も、テンプレート化したデータを自動で転記する設定により代替できます。結果として、確認作業と入力業務をあわせて大幅に軽減します。
帳票の出力・編集を自動化
月末や決算期など、帳票の出力や編集業務が集中する時期には、経理部門への負荷が急増します。報告資料や集計表の作成をExcelやPDFで対応している企業では、コピー&ペーストやデータ加工といった反復作業が多く、精神的な疲労も生じがちです。
そこで、帳票出力フローにRPAを導入することで、元データの取り込みから定型フォーマットへの整形、ファイル保存やメール送信までを一貫して自動処理できます。手作業を排除することでミスも減り、繁忙期でも従業員が安心して業務に取り組める体制が整います。
仕訳作業の自動化
経理業務のなかでも、請求書や領収書をもとにした仕訳入力は特に時間と集中力を要する作業です。仕訳ルールを確認しながら、勘定科目・金額・摘要を一つひとつ会計ソフトへ入力するのは負担が大きく、ミスが起きやすいポイントでもあります。
この作業にRPAを活用すれば、例えばPDFやExcelで受領した請求データを読み取り、あらかじめ設定されたルールに従って会計システムへ自動で仕訳登録が可能です。RPAによりルールベースで処理を行うため、記帳の一貫性が保たれ、人為的なミスも大幅に削減されます。
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経理業務でRPAを活用するポイント
経理業務にRPAを導入する際に意識しておきたいポイントを紹介します。
業務を洗い出し、自動化する業務を明確化する
まず、どの業務を自動化するのか明らかにしましょう。漠然と「消込業務」のように決めず、業務の作業フローを分析する必要があります。なぜならRPA導入時には、細かい作業手順をすべてロボットに記憶させ、シナリオ作成を行わなければならないためです。業務フローの分析・改善を事前に行っておけば、導入後の業務効率アップや生産性向上にもつながります。
また、RPAは「サーバ型」「デスクトップ型」「クラウド型」の3種類に大別されます。デジタルレイバーと呼ばれるロボットが稼働する「場」によって区別されており、特徴は以下のとおりです。
- ■サーバ型
- デジタルレイバーはサーバ内で働くため、大量のデータを管理するなど業務を横断的に自動化できる。
- ■デスクトップ型
- PC1台に対してデジタルレイバー1台が導入され、デジタルレイバーは特定のPC内で働く。
- ■クラウド型
- インターネットを経由し、クラウドサーバ上での作業のみを自動化する。
自動化させたい業務にあわせて適切なRPAを選ぶようにしましょう。
空いた時間で何をするのか決めておく
RPAで業務が自動化されれば、従業員の手が空きます。これまで定型作業に時間を費やしていたせいで疎かになっていた業務は何か、事前に洗い出しておきましょう。
例えば、予算や利益計画の策定、管理会計制度の設計などがあげられます。企業競争力向上のためにも、戦略的コア業務へ人材リソースを割くことが重要です。
まずはスモールスタート
RPAを導入してもうまく活用できなかったり、予想もしなかった問題が発生したりする可能性もあります。導入の際は、まず部門を限定するなど、できるだけ小規模からスタートさせましょう。
実験的にスタートすることで、自社での導入効果が可視化できるほか、現在の作業フローにおける課題や導入範囲の見直しが可能です。無料トライアルやデモを活用するのもよいでしょう。
経理業務へRPAを導入し、仕事の負担を軽減させよう
RPAは経理業務のような定型作業を得意とするため、高い導入効果が期待できます。どのような業務を自動化したいのかよく吟味し、スムーズなRPA導入を目指しましょう。
