DWH(データウェアハウス)とは?
DWH(Data Warehouse)とは、企業内に分散しているデータを一元的に集約・整理し、分析しやすい形で蓄積するデータベースです。主にデータ分析を目的として活用されます。
- ■統合管理
- 基幹システムや営業支援ツールなど複数のシステムからデータを集め、フォーマットや表記を統一して保存します。
- ■時系列で保存
- データの変化を追えるように、履歴を残しながら時系列で保存。過去から現在までの動向を把握できます。
- ■サブジェクト指向
- 目的や主題(例:顧客・商品・売上)ごとにデータを分類。特定のテーマに沿って分析がしやすくなります。
このようにDWHは、複数システムのデータを統合し、分析に特化した構造をもつのが特徴です。さらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
OLAP(オーラップ)とは?
OLAP(Online Analytical Processing)とは、DWHに蓄積されたデータを多角的に分析するための仕組みです。分析の軸を自由に切り替えながら、視覚的にデータを把握できる点が特徴です。
OLAP分析の基本
OLAPは、売上や顧客行動などの大量データを「時間・地域・商品カテゴリ」などの複数軸から集計・可視化する多次元分析手法です。特別なプログラミング知識がなくても、ビジネス担当者が直感的に操作できるツールが増えています。
OLAP分析の種類と特徴
OLAPには以下の3タイプがあります。
これらを使うことで、ドリルダウン(詳細化)やスライス(条件絞り)といった操作により、リアルタイムなビジネス分析が可能になります。
BIシステムにおけるOLAPの役割
BI(Business Intelligence)システムは、企業の意思決定を支援するためのデータ活用基盤です。OLAPはその中核機能として、DWHに蓄積されたデータを「キューブ」形式で分析する役割を担います。多次元分析によって、売上の傾向や異常値の発見が容易になります。
OLTP(オンライントランザクション処理)とは?
OLTP(Online Transaction Processing)とは、業務システム上での取引処理をリアルタイムで行う仕組みです。注文や決済など、日々の業務を即時かつ正確に処理するために使用されます。
リアルタイム処理を行う仕組み
例えば、ECサイトでの「決済」と「在庫引き当て」は同時に処理されなければなりません。こうした複数処理をひとまとめに実行し、途中で失敗した場合はすべてを取り消す「トランザクション制御」がOLTPの特徴です。
バッチ処理との違い
OLTPはリアルタイム性が求められる業務に使われるのに対し、バッチ処理は「夜間にまとめてデータを処理する」といった定期的な処理方式です。OLTPでは、最新データを即座に反映し、ユーザーの操作にリアルタイムで対応することが重要視されます。
OLAPとOLTPの違いって?
どちらもリアルタイムでデータ処理を行う技術ですが、OLAPは「分析」向き、OLTPは「業務処理」向きという明確な違いがあります。それぞれの特徴や使われ方を理解することで、目的に応じたシステム設計やツール選定が可能になります。
使用するデータベース
OLAPとOLTPでは、扱うデータ量や処理内容が異なるため、使用するデータベースにも違いがあります。
OLAPではDWH(データウェアハウス)が使われます。DWHは、大量の履歴データを蓄積・統合して分析に活用できるため、OLAPとの相性が非常によいのが特徴です。
一方、OLTPではDWHではない軽量なトランザクション向けデータベースが使われます。こちらは最新データを即座に処理・反映することに長けており、日々の業務をリアルタイムで処理するのに適しています。
データの処理目的
OLAPとOLTPは、どちらもリアルタイム性を重視しますが、その目的は大きく異なります。
OLAPの目的は「データの分析」です。社内のビジネス担当者や経営層が、過去の実績データをもとに傾向を把握し、意思決定に役立てるために活用されます。
一方、OLTPの目的は「日常業務の処理」です。ECサイトでの注文処理や銀行の入出金管理など、ユーザーの操作に即座に反応しなければならない業務に使われます。
DWHの活用例
DWHは、さまざまな業種や業務でデータ分析を効率化するために活用されています。ここでは、代表的な活用事例として、ECサイトとPOSシステムのケースを紹介。さらに近年注目されるDWHのリアルタイム化についても解説します。
ECサイトでのOLAP分析事例
大手ECサイトでは、月間数千万単位の訪問者データを活用するため、ペタバイト級のDWHに情報を集約しています。OLAPツールを使って購買傾向の分析や不正取引の検出、さらにはマーケティング施策の最適化などを行っています。
ダッシュボードはリアルタイムで更新され、経営や現場の意思決定を迅速にサポートします。
POSシステムでの多次元分析
POSシステムとは、レジと連携して販売情報を自動的に記録するシステムです。日々蓄積される膨大な販売データを保存・分析するには、DWHの活用が欠かせません。
POSデータをDWHに格納し、OLAPツールで「日付」「商品カテゴリ」「店舗」などの多角的な視点から分析することで、売れ筋商品の傾向や地域別の販売特性を把握できます。これにより、仕入れや販促の意思決定がより戦略的になります。
DWHのリアルタイム化
従来、DWHでは日次や週次のバッチ処理が主流でしたが、現在ではリアルタイムDWHやストリーミング処理の導入が進んでいます。例えば、Kafkaのようなストリーミング基盤と連携することで、DWHに対してリアルタイムでデータを取り込むことが可能になります。
このような仕組みにより、DWHに蓄積された最新データをOLAPツールで即座に分析し、リアルタイムでの意思決定や業務改善が実現されています。
DWH・OLAP・OLTPを正しく理解して活用しよう
DWH・OLAP・OLTPの違いは以下のとおりです。
- ■DWH
- 大量データを時系列・統一フォーマットで保存し、分析に活用できるよう整備されたデータベース。
- ■OLAP
- DWHと連携してリアルタイムに多角的分析を行う。BIツールの中核として活躍。
- ■OLTP
- 業務処理をリアルタイムで安全に実行。基幹業務システムに欠かせない仕組み。
以上を踏まえ、データを有効活用しましょう。