予算管理とは？
予算管理とは作成した予算を適切に利用することで、四半期単位で管理するのが一般的です。ヒト・モノ・カネの予算をどのように管理するかによって、経営は大きく変化します。
予算管理の基本的な手順として、まず予算編成を計画し、実行とフィードバックを繰り返してPDCAサイクルを回します。特に、予算差異分析の実施が重要です。差異分析とは、予算段階で計画していた数値と実際の数値を比較し、差額を分析し課題や改善策を見つける手法です。
売上・原価・経費・利益の４つから構成される予算の概念も理解しつつ、管理会計における重要項目として予算管理に取り組む必要があります。
ノウハウが不十分な企業でも、無料のアプリやエクセル、予算管理に特化したシステムを利用することで、質の高い予算管理を実行しやすくなっています。
予算管理業務の効率化に興味がある方は、以下の記事も一読ください。おすすめの予算管理システムや予実管理ツールを紹介しています。エクセル感覚で利用できる製品や経営管理をサポートする製品、業績管理・分析機能に優れた製品など多岐にわたるので、ぜひ参考にしてください。
予算管理システムとは？
予算管理システムとは、予算計画と実績の比較、予算目標に向けた活動の進捗管理などを効率よく行うためのシステムです。
企業は継続的に利益を出すことを前提に、売上・原価・経費などの予算を策定する必要があります。さらに、予算と実績を定期的に比較・分析して管理しなければなりません。予算管理は事業成長していくうえで、重要なものといえるでしょう。
従来は、多くの企業がエクセルで予算管理を行っていました。しかし、昨今の主流はエクセルの操作感をそのままに、機能を向上させたシステムです。もちろんクラウドシステムもあり、中小企業でも安心して導入できます。
予算管理システムの８つの導入メリット
予算管理システムの導入により、以下８つの効果が期待できるでしょう。
１．予算編成にかかる業務削減・時間短縮
予算編成の過程においては、部署別予算の情報が上がってくるのが遅い、手入力によるミスが発生するなどの課題があります。そのため、予算の編成に数か月を費やす企業も少なくありません。
予算管理システムは会計ソフトや原価計算ソフトとの連携によって、予算編成に必要な数値を集約したデータベースとして構築されます。つまりデータの一元管理が可能です。
科目ごとの各種数値をアップすることで、総合予算への影響が即座にわかり、予算編成作業の効率は格段にアップするでしょう。
２．編成過程の可視化とモチベーションアップ
予算管理の役割は、現場の動機づけの側面もあります。各部門の日常業務において何を重視して業務を進めるべきかが共有されることにより、実効性が担保されます。しかし、部門別の予算を上げたものの、現場の業務に活かされていないケースがあるのも事実です。
予算管理システムの利用により、統一されたデータベースで予算管理のプロセスを可視化できます。各部門の管理職社員が予算編成に関する情報にアクセスすることで、経営戦略と部門ごとの課題の関係が明確になり、全社的な動機づけにつながります。
３．適切なKPIの設定・モニタリング
予算管理で重要なことは、計画どおりに事業が進展しているかのチェックを不断に行うことです。必要に応じて目標に合わせた業務改善や修正を実行し、素早く予算を組み直せる体制を築き上げ、PDCAサイクルを回し続けることが成功のカギといえます。
ここで重要な概念がKPI（業績評価指標）です。予算管理システムは、売上や利益など財務諸表に表れる数字だけではなく、経営の際に重視すべき詳細なKPIを予算策定時に設定できます。固定比率や自己資本比率などの財務指標、顧客数や客単価、従業員一人あたりの顧客数などがKPIに該当するでしょう。
期中において、予算と実績のかい離をいち早く発見し、対応策を打つことにつながります。
４．四半期・月次予算への対応
予算管理システムのメリットである迅速性により、予算編成を期中に複数回実施可能です。これにより、多くの大企業で実施されている四半期予算・月次予算を、企業規模の小さい企業でも策定できる体制が整います。
また、業種の季節性・原材料費の変動・景況など、短期スパンの変化を加味した数値目標もタイムリーに立てられるでしょう。
５．運用の継続による精度向上
予算管理システムには、導入から年を追うごとに高まっていくという性格があります。日常的に予実管理を行うことでPDCAサイクルが回り、予算編成の精度が次第に上がっていくためです。
６．分析・評価体制の整備
予算管理で重要なのは、適切に評価し、フィードバックできる体制作りです。予算管理時は経営戦略を策定して施策に適用するため、施策の効果を適切に分析し、改善できる体制を整える必要があります。
予算管理システムを導入すれば予算編成後の施策の進捗を確認でき、より正確な評価ができるでしょう。
７．セキュリティの強化
予算管理システムの提供形態として、クラウド型システムが増えてきています。提供会社のクラウドサーバを介してシステムを運用するため、アップデートにより常に最新の状態を維持できます。
セキュリティにリソースを割けない企業の場合、安全性の向上にもつながるでしょう。
８．部門ごとの責任が明確になる
予算管理システムを導入すると設定した予算に対しての進捗状況が明確化します。つまり、部門ごとの責任が明確になることと同義です。
部門ごとの責任が明確になれば、部門に所属する一人ひとりのモチベーションが向上し、生産性が上がるといったメリットにつながります。
以下のページでは、ITトレンドユーザーから問い合わせが多い予算管理システムを紹介しています。人気の傾向も掴めるので、ぜひお役立てください。
予算管理システムの導入デメリット
基本的には、予算管理システムを活用するデメリットはありません。しかし、企業規模や状況によっては、いくつかの注意が必要です。予算管理システム導入のデメリットについて解説します。
コストがかかる
中小企業の多くは、無料で利用できるエクセルを活用して予算管理を実施しているでしょう。対して予算管理システムは、導入・運用コストがかかります。
しかし、クラウド型のシステムを導入すれば初期投資を抑えることは十分可能です。コストを最小限に抑えたい方は、クラウド型システムの導入を検討するのもよいでしょう。
システムの選択肢が制限される可能性
予算管理システムは、会計ソフトや原価管理システムとの連携が不可欠です。ただし、システムと連携した際の使いやすさは、システム同士の互換性が大きく影響します。
自社のシステムとの互換性を考慮しないといけないため、選択できるシステムの数が制限される可能性もあるでしょう。
予算管理システム５つの機能
ここでは、予算管理システムの代表的な５つの機能を紹介します。まとめると以下のとおりです。
- １．予算計画機能
- ２．データの集約・予算編成機能
- ３．モニタリング・予算再編成機能
- ４．評価・フィードバック機能
- ５．来期予算計画の提案機能
１．予算計画機能
予算は、最終的には全社の損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書の形で策定されます（総合予算）。しかし、そのプロセスにおいては、企業全体の業績だけではなく、部門別の詳細な情報が必要です。
予算管理システムでは、最終的な数字の根拠となる各部門の多岐にわたるデータを収集し、予実管理表の作成や予算プランニングをサポートします。
具体的には、部門またはプロジェクトごとに、販売高・利益・原価・販管費・投資・資金など、財務会計の勘定科目とは異なる、細分化あるいは集約化された入力項目を設定・カスタマイズできます。
実効性のある予算編成につながる基盤を作ることで、部門担当者に経営計画にもとづくKPI（重要業績評価指標）の周知も可能です。
２．データの集約・予算編成機能
予算管理システムは、資金予算・収益予算等の編成プロセスを効率化します。
特に高い業務削減効果につながるのが、過去の業績と予算案を予算担当部署に上げる業務、編成担当者が承認・調整する業務です。
部門担当者は、あらかじめカスタマイズされたフォーマットに則り情報を上げるため、予算担当部署で編成作業に乗せるためにデータを転記・調整する必要がなくなります。承認過程も透明化されるでしょう。
また予算編成時は、想定される数値の変化により総合予算にどのような影響が出るか、簡単にシミュレーションできます。
エクセルなどの表計算ソフトによる編成作業と比較すると、編成作業の効率が向上し、実現可能な目標が織り込まれた予算編成のために大きく寄与するでしょう。
３．モニタリング・予算再編成機能
企業は、予算を編成したのちに実際の企業活動を行います。予算管理システムは業績をタイムリーに把握できるため、目標数値の達成を妨げるマイナス要因について迅速に分析可能です。また、期間中に想定外の変化が生じた場合に、新たな予算を策定する機能もあります。
予実管理表が作成され、予算と実績を「予算実績差異分析」により比較し、必要に応じて予算を組み直すことも容易です。実績が予算と乖離することで、予算が参照価値のない「絵に描いた餅」になる事態を防げます。
４．評価・フィードバック機能
年度など、予算を設定した期間が終了すると、目標達成度を評価します。予算管理システムには、各種の分析ツールとレポーティング機能が搭載され、最終的な実績と予算の差異を図表・グラフなどの形式で表示・出力できます。
予算が未達の場合も自動で原因を分析してくれるので、ノウハウの蓄積を補助できるでしょう。
５．来期予算計画の提案機能
未達成項目と経営への影響を分析し、改善のヒントを明確にすることで、今後のプランニングにスムーズにつなげられます。PDCAサイクルが機能し、毎回の予算や中長期的な見通しの精度がさらにアップするでしょう。
予算管理システムの選定ポイント
予算管理システムに興味をもったとしても、実際に製品を検討してみるとどのシステムが自社にあっているのかわからない方も多いでしょう。ここでは、予算管理システムの選定ポイントについて解説します。
１．エクセル運用からシステム移行がスムーズにできるか
エクセルでのデータ管理など、予算管理における業務効率化に課題を抱えている場合、スムーズにシステムを移行できることが重要です。
エクセルファイルのデータを直接インポートできる機能が重要視されるでしょう。
２．周辺システムとの連携性はよいか
予算管理・策定は、購買データや会計データなどを組みあわせて行われます。
そのため、会計システムや原価計算システム、また販売管理システム、給与計算システムなど、予算策定上重要である業務システムとの連携が必要です。
３．自社の導入目的に合った機能があるか
予算管理システムは機能が多岐に渡るため、自社の導入目的にあった機能を備えたシステムを選ぶことが重要です。導入検討する際は、どのような機能が備わっているのかといった観点での把握は不可欠といえます。
４．複数のケースでのシミュレーションができるか
予算策定を行う際には、複数のパターンをシミュレーションするのが一般的です。予算編成業務では、各部門から集まった予算計画をもとに予算財務諸表を作ります。
このときに、目標予算と比較し、差分がある場合は対応策を講じる必要があります。対応策を講じるうえで、複数パターンの予算シミュレーションを実施・比較・検討することが重要です。
エクセルでは不十分！予算管理システム導入を検討しよう
効果的な経営戦略を決め、計画を確実に実行することが、今まで以上に求められています。同時に、予算管理の重要性も益々高まっています。もし、まだエクセルで予実管理表を作成しているのであれば、予算管理システムの資料請求をして、導入を検討してみるのがよいでしょう。
